デジモンアドベンチャー第1話


第1話「漂流?冒険の島!」

脚本:西園悟 演出:角銅博之 作画監督:八島善孝

世界中で異常気象が起きていたその夏。サマーキャンプに参加していた7人(後に8人)の子どもたちの、長く短い冒険の始まり。デジモンの良心・平田広明さんの淡々としたナレーションと、前説で流れる「アバン」は幼い日の甘く切ないひと夏の象徴。超絶に沁みるなあ。この物語を後のタケルが著作にまとめたという設定がすでに垣間見える。好評につき02放映が決まり、その設定が02に持ち越されたと聞いた。選ばれし子どもたちによる世界人類救済譚だとはまだ誰も知らない。

タイトルコールは太一。設定ではキャンプ場は東京都青梅市の御岳(みたけ)渓谷だという。雪とオーロラ、見慣れぬ機械が子どもたちの手元に。そしてすごい勢いでどこかに呑み込まれてしまう。光子郎がポケベルでも携帯でもないと言っているが、ポケベルねえ、まだそういう時代だった。ちなみに光子郎(天神有海・てんじんうみさん、引退宣言こそしていないが大きな活動はしていない、2020年4月現在)、パソヲタではあるががっつりインドア派でないのはパソコンをリュックで背負ってのキャンプ参加やサッカー部所属という紹介からもわかる。

八神太一(藤田淑子さん)。角銅さんが姓名診断ソフトで「八神」と命名したそうだが、まさに8人のリーダーである太い一本の柱。偶然でなく実に運命的!双眼鏡でなく単眼鏡なのは、シンプルで身軽な彼らしい。高い木の上で昼寝、リーダーの風格とおおらかさが見える。空は少女漫画家の小田空さん、太刀川ミミは同じく少女漫画家の太刀掛秀子さんから命名したという。私世代直球の「りぼん」ファンには懐かしいお名前。城戸丈は土壇場で変更になるなど、苦難をしょい込んだ名前になったというのも丈のキャラからして興味深い。空は落ち着いていて、光子郎は好奇心旺盛でやや他人行儀、ヤマトは大人びた低音、ミミは無邪気で頼りなく、タケルは人懐こい最年少、丈は慎重で生真面目で小心者なのがわかるが、私はこの時点ではまだ丈は単なるギャグキャラかなあと感じていた。

太一が丈(菊池正美さん)を呼び捨て、小説でもヤマト(風間勇刀・かざまゆうとさん)が丈を呼び捨てにしたのは同級生と思ったからと書かれている。しかし、あの規模の小学校で同学年の顔を知らないなんてあるんだろうか?光子郎が同じ4年生のミミの不在に気付く場面もあるし。むしろ中学での先輩後輩関係が持ち込まれる前の段階なので自然に呼び捨てと私は考えるのだが。ちなみに、お台場小・中学校(作中では「御台場小学校」との記載)は現在、港区立お台場学園という公立の小中一貫校となっている。

目を覚ますと、不思議な生き物が子どもたちの名を呼び、君を待っていたと言う。あとここが「ファイル島」だと。太一は早速単眼鏡で確認、さすがリーダー。プカモン(竹内順子さん)は、残念ながら小説では「生臭い」と書かれているが、「潮の香り」とかにしてほしかったな・・・。ピョコモン(重松花鳥・しげまつあとりさん)登場の時流れた曲は楽し気な「僕たち、デジモン!!」。場面場面の曲が良い。そして彼らは言う、「僕たち、デジタルモンスター!」おきゃんなプカモン、舌足らずのトコモン(松本美和さん)、独特の嗄れ声のトゲモン(溝脇しほみ・後に山田きのこさんに改名)の声が特にかわいいvガブモンのオーディションは応募者が男性ばかりだったのに通ったのは山口眞弓さん。どこまでもヤマト命のガブモン、それでホント良かったと思う。テイマーズの李君に化けたし。個人的にはギャラクシーエンジェルの豪快な姉御・フォルテさんもハマり役。

ヤマトが苗字の違うタケル(小西寛子さん、仕事上のトラブルで声優を辞めてしまわれ残念)の世話を焼き、タケルもヤマトを頼りにしているのがわかる。タケルが河田小学校なのは、フジテレビがお台場に移る前は新宿区河田町(かわだちょう)に存在していたからと思われる。実は私、河田町某所に勤めていたことがあり、フジテレビには愛着がある。

一度は戦意を露わにする太一だが、空とヤマトに止められる。太一とヤマトの反発の第1号がここに。クワガーモンに襲われる子供たちは、断崖絶壁に追い込まれる。「君を守るんだ」という幼年期のデジモンたち。その献身に、「私は息子をこんな風に守ってやれているのだろうか」と、当時育児に悩んでいた私は非常に胸を打たれた。謎だらけながら子どもたちとパートナーデジモンの運命の出会い、深い絆。一発目でインパクトがある敵デジモンとして、当初カブテリモンが選ばれたという。後に確かにカブテリモンは敵キャラと見紛う怖さだというのはファンの間でも定説。

まだ戦うという幼年期デジモンたち、子どもたちの危機意識に応えるように機械が発動し、天からの虹色の光でデジモンは成長期に「進化」する。そして、クワガーモンは炎とともに消えた。しかし、復活したクワガーモンが現れ、子供たちは崖ごと落ちてしまう・・・。進化バンクは、予算が無く何とそもそもは角銅氏の手作りだというからすごい。以降、デジモンと言えば進化バンクと挿入歌、という流れができた。私はゲーム関係は全く疎いのだが、ゲーム商品としての「進化」・デジヴァイスが、ストーリーに無理なく絡んで、商品として手に入れプレイしたくなる魅力が描かれているように思う。

第1話として、二転三転する急展開で思わず新しい冒険の旅の世界へ引き込まれてしまう回だった。

無印で声優デビューした方も多いが、櫻井孝弘さんはデビューは他作でデジモンは最初のレギュラー出演だと聞いた。その後イケメン主人公ばかりやっているから、関西弁のこんな役は珍しい。ちなみに関西でなく愛知県出身。他のシリーズも含め、藤田淑子さんのような大御所の起用と新人の大胆な起用でバランスを取り、アフレコ現場をまとめたのではないかと思う。また、デジモンシリーズから、たくさんの新人声優さんが巣立っていったことを、ファンとして誇りに思う。

中鶴勝祥さんのキャラデザは、頭と手足の先が大きいレトロなAライン、腕や足の細さをカバーするための手袋やリストバンドだという。そのバリュエーションがすごい。スニーカーの底の模様までデザインされており、非常に細やかなおしゃれな感じがする。また各キャラの性格をよく表しているように思う。鳥山明さん(私はこの人のネーミングセンスが苦手なのだが、絵がすごく上手いのはご承知の通り)のもとで働いたベテランさん。個人的に、中鶴さんでなかったらこんなにデジモンを好きにはならなかった。ポケモンのキャラデザもあれだけ長く続いてよくできていると思うが、私はキャラデザは断然デジモン派。

<スタッフ>企画:藤山太一郎(フジテレビ)、川上大輔(フジテレビ)木村京太郎(読売広告社)、関弘美
原案:本郷あきよし シリーズ構成:西園悟 シリーズディレクター:角銅博之
キャラクターデザイン:中鶴勝祥 総作画監督:宮原直樹 音楽:有澤孝紀

         戻る