第37話「巨大究極体チンロンモン」
脚本:吉村元希 演出:梅澤敦稔 作監:八島善孝
最後のホーリーストーンの前で、パタモンとアンキロモンはジョグレス進化し、パイルドラモン・シルフィ―モンと三体がブラックウォーグレイモンの前に揃った。
タイトルコールはチンロンモン。威厳と風格のある声。
中華スープの泉の竹林で、ジョグレス進化を果たした完全体・シャッコウモン。ブラックウォーグレイモンがガイアフォースを放つが、吸い込んでしまう。究極体の必殺技を無効化する何たる防御力!見た目からすると機動力には欠けそうだが。アラミタマ・ニギミタマを放ち、パイルドラモンとシルフィ―モンの攻撃も加わり、ついにブラックウォーグレイモンは盾を失い激しく傷つき液体が噴き出る(痛々しい)。ブラックウォーグレイモン「なぜだ、なぜそんな生き方ができるのだ・・俺に教えろ。俺はなぜ生まれてきたのだ!俺はなぜお前たちとこんなに違うのだ!それを知ることができないというのなら・・・この世界を終わらせてもかまわない!教えろー!」。ヒカリはその悲しみを感じるが、ブラックウォーグレイモンはホーリーストーンの攻撃をやめようとしない。答えが欲しいから。
このままでは、デジタルワールドも現実世界もおかしくなってしまう。大輔は、ホーリーストーンを移動させようと発案する。そこにアルケニモンとマミーモンが現われ子供たちを狙うが、聖なる泉を汚させまいとデジタマモンとバクモンが彼らを阻む。ナイスファイト!
いったいどうすれば・・大輔のアイデア(あきらめない底力の発露の一つだろう)で子供たちがD-3を掲げると、不思議なことが起こった。全てのホーリーストーンの跡地からの光がD-3に集まり、D-3がホーリ-ストーンへ光を送り、虹色の光が大空へ飛んでいく。そして湧いた雲の中から光が差し込み、鎖をまとう巨大な青い龍のデジモンが現われる。で、でかい・・。ブラックウォーグレイモンはチンロンモン(小杉十郎太さん)に戦いを挑む。「我が名はチンロンモン。我はこの世界の東方を守護し、光と希望の珠を持つ者。お前がホーリーストーンを破壊したために今この世界は調和が乱れている。お前は自分のしたことがわかっているのか」。ブラックウォーグレイモンが戦いを挑むが、軽くいなされる。「お前と言う暗黒の存在そのものが我が力を封じ、この世界の調和を乱すというのに」。ブラックウォーグレイモン「存在そのものが?」。チンロンモン「まさしく暗黒の存在」ダークタワーをたくさん建ててこの世界のバランスを崩しめちゃくちゃにするのがアルケニモンたちの目的だとわかる。そのために賢は利用され、ブラックウォーグレイモンが作られた。
「ダークタワーデジモンに意思とか魂とかいらないのさ」と言うアルケニモンに、ブラックウォーグレイモンは掴みかかる。「しょうがないじゃないか、これはあんたの持って生まれたさだめなんだから」アルケニモンに食い下がるブラックウォーグレイモンへ、チンロンモンは生きる目的は、自分で探せと語る。「そこへ至るまでの過程がいかなるものであったとしても、その存在にはかならず意味があるのだ」。他者に答えを求めてきたブラックウォーグレイモンにとって、目の覚める指摘だっただろう。
ブラックウォーグレイモン「俺はあんたに会えてよかった・・あんたはこの俺の存在にも、かならず意味があると言ってくれた。・・たとえそれが、忌み嫌われるものだとしてもだ」調和を乱すものとして生み出された者に、生きる意味は、居場所はどこにあるのか・・・かわいそうとしか言えない;;チンロンモンに、ブラックウォーグレイモンは礼を言い、孤独な果て無き旅「どこでもないどこかへ」向かう。この重い話の直後の、それを追うマミーモンと大輔の言い合いは、子どもっぽくてほっと笑える。ホーリーストーンは守られ、デジモンたちは幼年期①に退化した。ツブモンカワイイv
チンロンモンは、世界の安定のために東のエリアを守護していると言い、京が京都の四聖獣の事を思い出す。チンロンモンと他の3体は、ダークマスターズの4人に一人ずつ封印され、スパイラルマウンテンが作られた。ダークマスターズが倒されても封印は解けなかった。デジタルワールドを元の世界に戻すために力が使われたからだ。封印を解くために紋章の力が必要で、その力を使ったためデジモンたちは完全体になりにくくなってしまった(第27話)。ダークタワーが建った時、「この世界の調和を望む意思」が、失われた古代の進化の力を使うことにした、それがアーマー進化だ。古代の力を宿すデジモンを何体か眠らせ、新しいデジヴァイスは新たなる選ばれし子供たちに贈られた。闇に呑み込まれた者を元に戻すために、優しさの紋章を一時的に黄金のデジメンタルにすることが必要だった。
ブラックウォーグレイモンは、悲しい叫びをあげ空を割いて別の世界へ飛び立っていく。ヒカリはその悲しみを感じる。自分が存在だけでこの世界を害すると知って、居る事は出来なかったのだろう。勝手に生み出された宿命を持ちながら、意志を持った者として、自分で行った決断だ。チンロンモン「不幸なさだめを背負って生まれし者よ、長い年月がかかろうといつか自らへの問いを解く日が来ることを私は祈ろう」。私も祈ります。(不幸なさだめ、暗黒の存在、・・人間に例えていえば不義の子という立場とか?;;それはきつい。)
チンロンモンは、力の回復に少し時間がかかる。壊されたホーリーストーンの場所に光の種を蒔くと言う。その種が育てば、ホーリーストーンの代わりとなる、それまで頑張ろう。賢は自分を悔い暗黒の存在の残滓を恐れるが、タケルは「僕は違うと思う。確かに、暗黒というのは恐ろしいものだけど・・・できれば、全てなくしたほうが安心できるかもしれないけど・・・きっと、それは不可能なんだ。光があるところには、必ず闇が存在するんだ。だからどんなに暗い闇の中でも、自分の中に光を見失わないことが大切なんだと思う」と言う。闇に負けないこと。それが希望、チンロンモンはタケルとヒカリによって封印を解かれたのだ。タケルとヒカリのデジヴァイスが古代の力が使えるように変化したのも、チンロンモンのおかげだった。
光とはこの世界に命を与えるもの、希望とは闇に覆われても輝きを失わぬもの。チンロンモンを封印しようとした、強大な憎しみに満ちた邪悪な意思(アルケニモンやデジモンカイザーの黒幕)はまだ存在する。子供たちは自分たちの役目を再確認し、チンロンモンは姿を消す。ようやく、ダークタワーの真の目的も黒幕の存在もわかった。誰が、何のために。本当の戦いはこれからだ。
デジタマモンが、営業再開のお礼にと中華まんを振舞ってくれる。タケルは賢に「おいしいよ、一緒に食べよう」と勧める、おそらくタケルから賢への仲間としての好意的なアプローチはこれが初めてではないか(ただ、カイザーを許したかどうかは別問題なんだろう。私ならなんだか気を許せない・・でもワームモンが「いっしょだとおいしい」と仲介してるから問題ないのか)。伊織が礼儀正しくではなくはふはふがっついて食べているのがかわいい(猫舌?)。中身の色からして肉まんだろうけど、形が全部同じだからあんまんはないのかな。
夕暮れの帰り道、大輔は街にダークタワーを見た気がする。気のせい?・・・大輔だけに見えたというのが象徴的だ。