デジモンアドベンチャー第18話「妖精!ピッコロモン」感想
脚本:前川淳 演出:今村隆寛 作画監督:清山滋崇 美術:飯島由樹子
●クワガーモン:昆虫型の成熟期。ナレーションによるとファイル島の個体よりずっと強いと。それにしても水も草もないこんな砂漠の真っただ中でも生息できるとは。デジタルな存在だから?
●太一:一行の先頭を歩いている様子からはごく元気そうに見えたが、暗黒進化がトラウマで、クワガーモンに襲われてもアグモンに進化を伝えられない。ピンチにさらされたアグモンを身を挺してかばうも、クワガーモンにやられかけ更なるピンチ。そこを救ったのは、ピンク色の小さなデジモンのたった一撃だった。その一点からも、このデジモンが只者でないことがうかがえる。
太一とアグモンは、ピッコロモンに修行先と指定された洞窟の地面に沈んで、目覚めたら小舟の上だった。流れる曲はボレロ。ボレロ、良いな~。小舟は光の方へと流されて。小舟はタイムカプセルなのか。静かにゆっくりと流れるままに、ピッコロモンの防御で緊迫した一行とは対照的。橋の上で、幼い(小説によると7歳。声は藤田さんが当てておりさすがの演技。)太一が補助輪なしの自転車の練習をしている。何度も倒れ、泣きながら。「一度や二度の失敗で諦めちゃだめだ!弱気になっちゃだめなんだ。自分を信じるんだ。今度こそ大丈夫だって」「うん、わかった」。そして、乗れた!自転車に乗れた喜びと自信という、多くの少年少女に思い当たる体験を引用しているのは上手い。「忘れてたよアグモン、へこたれちゃだめだってこと。俺、またアグモンが変なデジモンに進化しちゃったらって弱気になってた」「ボクだって同じだよ(中略)もう一度進化できるような気がするよ」うなづき合う二人、大きく響くボレロ。幼い太一が登場した時、私は今の太一を励ますんじゃないかと思ったが、逆だった。幼い自分に言い聞かせて、太一は立ち直ったのだった。皆のピンチに、アグモンの瞳は輝いて、グレイモンに進化!アグモンが正しい進化をできた事実は、他の子とデジモンにも大きな影響を与えたであろう。
●ピッコロモン:妖精型の完全体。キャラ語尾は「ッピ」。一人称は、私の聞き違えでなければ意外にも「あたし」。小さく丸い体は目玉おやじを思わせ、絶妙のキャスティング。ファイル島には居なかったが言動から、ピヨモン・ガブモンにとっては既知、パルモンは知らないデジモンであった。選ばれし子供の存在、紋章とタグのことも知っていて、皆たるんでいる、努力だ、根性だと今日からの修行を申し渡す。特に太一とアグモンは重傷だ、スペシャルメニューで猛特訓と言われてしまう。雑巾がけに座禅、精神論も悪くはないですが、なかなかに厳しいお言葉と内容。
「ウホルパラホルパシリカッピ、トルカラトルカラシタカッピ」と呪文を唱え入ったピッコロモンの結界の中はジャングルで、家は長い長い階段の先、修行はもう始まっている。子どもたちゲンナリ。家に着くと、食事の前に長い廊下の雑巾がけを命じられる。モーニングコールはバケツを叩く音;修行厳しい~
太一「本当にありがとうございました」態度を改め別れの挨拶は敬語だよ!「人生全て修行ッピ」。ハイハイ、精神論。「この世界を救えるのは君たちしかいないッピ」期待を胸に見送るピッコロモン。その壮絶な最期を知っているだけに、見ていてじんとくる。
●ヤマト:タケルとトコモンは「競争だよ」と雑巾がけをはじめ、その無邪気さに思わずヤマトも微笑んでしまう。紋章が欲しい理由は、自分をもっと磨きたい、成長して今までと違う何かをつかみたいと答える。タケルの成長を見ては、自分の存在意義を確かめたいのだろう。なぜヤマトと光子郎だけが目を覚まし、タグが光ったのか。ピッコロモンの庇護と、紋章の導きと言えるのだろう。ヤマトと光子郎はカップリングとしてはイバラ道で、二人としてのエピソードもほぼこれ以外に無いので、個人的には腐な妄想の浮かびようがないと感じる。
●光子郎:紋章とタグの使い方はわからないが、残りの紋章が見つかってから考えようと提案。紋章が欲しい理由は、カブテリモンから何に進化をするのか見たいという知りたがりの心。人付き合いが上手とは言えないヤマトと、これだけ一緒に居ていろいろ話し行動を共にしたのは個人的には意外。友情の深まり、これも紋章の導きか。結界の外に光る井戸(砂漠なのに)を目にして、もう一直線なのは、好奇心の高ぶりだろう。彼にしては珍しく慎重さを欠いたこの行動が、皆を危険にさらすきっかけとなってしまうのだが。
●空:ピッコロモンの申し渡しにみな懐疑的だったが、正しい育て方がわからないのは事実だし「合宿すると思えば楽しいわよ」と皆をフォローしたり、雑巾がけの音頭を取ったり、お姉さん役。グレイモンに進化できて「太一!」「ああ」(笑顔)この短いひと言で通じ合う仲なのがすごくて素敵。
●ミミ:かわいい見た目からピッコロモンを抱っこしたものの、発言がまるでかわいくない、笑。自宅でも雑巾がけをしたことがない、と。とことんお嬢様育ちな模様。自室の掃除とか母親にお任せなのかな。
●丈:朝になり、太一とアグモンが戻らなかったうえにヤマトと光子郎も不在なので、空とミミに「ミステリー」「次は丈先輩の番だったりして」とからかわれてしまう。ゴマモンにもビビりだとからかわれ、笑。細かいことですが、メガネを上げ下げする芝居があって良し。
●ゴマモン:「どうせオイラ根性ないよ」これはまさしく本音。「飯もっと食わせて」と寝言を言っているから、ピッコロモンの用意した食事は質素だったのではないか。
●タケル:「重要な会議をしてるの」最年少なのにこの認識と語彙、さすが未来の小説家。
●ティラノモン:野生の美を備えた恐竜型の成熟期。好んでここに生息しているというより、エテモンの手下としてK1エリアを縄張りとして任されていたよう。しかし、知能が高いとは思えず、エテモンにケーブル経由でいいように利用されていたよう。このエリアにはあさがおが咲いており砂漠だけにシュール。
●エテモン:まだネットワークが回復せず地団駄踏む様子が可笑しい。紫色のギターがエキセントリック。ここぞのタイミングでラブ・セレナーデを発動しデジモンは戦闘不能に。完全体ピッコロモンにはさすがに効かぬようで、ピッコロモンが一人で一行を防御する羽目に。アグモンたちの到着を待って、こらえるピッコロモン。この献身ぶりといい、選ばれし子どもの使命を知っているといい、全く只者ではない。ゲンナイとも繋がっているのか? 「何てムカつくガキンチョたちなの!」と全身を震わせて怒るさまが可笑しい。ちなみにパグモンの声は少なくとも一体は菊池さんが当てている。
<ピッコロモン:田の中勇(いさむ)さん>青二プロの創立メンバーの一人という大御所。2010年1月13日、自宅で心筋梗塞で亡くなっているのをご家族に発見されたそう。享年79歳。特に持病はなかったそうで、独身で、突然のことだったよう。鬼太郎5期の目玉おやじなどが遺作。声種は軽妙でコミカルなテノール、特徴的な高い声。目玉おやじの後任のオーディションで適任が見つからず田の中さんが続投していたというから、故人の功績が伺える。
次回予告:光子郎のパソコンに届いた謎のSOSメール。本当なのか罠なのか。ともあれ向かったピラミッドには囚われのデジモンが…。そして、エテモンと遂に直接の対決が待っていた!
(2024/7/30 記)