デジモンアドベンチャー第3話「蒼き狼!ガルルモン」感想
脚本:吉田玲子 演出:川田武範 作画監督:出口としお 美術:飯島由樹子
ヤマトとタケルの関係、ヤマトのパートナーであるガブモンの進化を描いた回。タイトルコールはガブモン(もしくはガルルモン)。
モノクロモンの縄張り争いに巻き込まれそうになり、逃げる子どもたち。転んだタケルをヤマトは「大丈夫か」と気遣うが、正反対に太一は「平気だよな」と先を急ぐと、タケルはすぐ起き上がる。この短いやりとりに、タケルを擁護し保護者であることに自分の存在意義を見出そうとするヤマトと、幼いながらも一人前の男としてタケルを評価する太一との違いが明確に表れておりすごい。夕食でもタケルに魚の骨を心配するヤマトと「頭からガブッといけ」と言う太一、それに応じるタケル。太一になつくタケルが、ヤマトの心を揺さぶる。こうした心理描写やのちにも続く家庭の事情の描写が、この作品を単なるありふれたキッズアニメと一線を画している一因だ。
奇妙な色の夕焼け、森に立つ意味不明の道路標識、湖の電柱、線路なしでいきなりある路面電車、北極星も南十字星も見えない北半球でも南半球でもない夜空、引き続きシュールで無秩序な風景の中、初めての野宿をする子どもたちの不安やいかに。そして一難去って夜が明け、地べたで寝入ってしまう子どもたちのたくましさ。
ちなみに路面電車のデザインの元ネタは都電つまり都営荒川線(最近は誰の入れ知恵か「東京さくらトラム」などと改名しわかりづらくて困る)。このアイボリー地に緑のラインのスタンダードなデザインが私は一番好き。いろんなデザインバージョンがあるがあんまりメタリックとかバラ色だと、下町の荒川区に似合わないから私は嫌(荒川区民です)。そして、私は都営交通のマスコット、みんくる(みんなのくるま、という命名)が大好きで、グッズのコレクター。さてこの路面電車は、最終話にも出てくる思い出のアイテムとなる。
食料集めに釣り、たき火づくり、調理、食事シーンなどアウトドア感たっぷり。
どうやらある子どもがピンチになるとそのパートナーデジモンが進化する、進化した後なぜかまた元に戻ってしまうという法則のようなものがあると子どもたちは気付く。
●ヤマト:「魚は遠火で焼くもんだ」は言わずと知れたヤマトの名言。男親に付いていき、子どもながら日常的に調理をこなしていることが後にわかる。タケルを温めるため、ガブモンをそばに行かせる照れ屋で不器用なヤマトのやさしさは単なる自己満足ではない本物。親しいはずの太一にすら、親の離婚とタケルとの離別を打ち明けていなかったことがわかる。もやもやを晴らすために吹くブルースハープが闇に響き、ヤマトの孤独とやさしさを表している。タケルを助けたい一心で湖に飛び込み、身を挺しておとりとなりシードラモンに捕われてしまう。
●ガブモン:ヤマトの音色にやさしさを体感する。大事な毛皮が濡れてでもヤマトに付いていく。アグモンもタケルに頼まれたパタモンも進化しない中、「もうヤマトの吹くハーモニカが聴けないなんて、あのやさしい音色が聴けないなんて」とヤマトへの想いが募り、大きなオオカミ型のガルルモンに進化する。フォックスファイヤーの一撃でシードラモンを退治したが、ガブモンに戻ってしまう。山口眞弓さんは本作がデビュー作。オーディションでは応募者は男性声優が多かったと聞くが、山口さんを抜擢して正解!さらにテイマーズでもメインキャラになると誰が予想したか。
●太一:嫌がるガブモンの毛皮をはがそうとするデリカシーの無さという太一の短所もきちんと描かれている。ヤマトとケンカになるのも無理はない。石田家の事情を知ってからは、さすがにヤマトをそっと見守ることができた。
●タケル:女親に引き取られ、ヤマトと仲良しだったためか擁護されるのが当たり前だったタケルには、太一の男らしさが新鮮だったのではないか。非常に無邪気で素直、太一に傾倒する一方でヤマトやガブモンにきちんと謝礼をするし、仲の良さは変わりない。そりゃこんなにかわいいんだもの、守りたくもなるわな。
●空:太一に、タケルがなぜヤマとのことをお兄ちゃんと呼ぶのか尋ねられ、知らないと素っ気なく答える。複雑な事情を察知しての答えと思われ、太一の単純さと対比的な空の繊細さがわかる。
●丈:「よーし、今夜はあそこでキャンプだ」「さあみんな、路面電車の中で寝るんだ」、見張りの順番の決定など、この頃かな、丈先輩を好きになり始めたのは。上級生として皆をまとめようと一生懸命なのが健気で。前は「いわゆるギャグキャラね」と思ってた。どうやらそういう描き方でないところに、無印の良さを感じ始めていた。北極星・南十字星が無いとわかるのはまさか天体観測の趣味とかじゃなく受験勉強(理科)のおかげ?寝るとき眼鏡をはずす顔のアップシーンが、丈先輩ファンにとっては激レアサービスショットv
●光子郎:泳いで釣りのじゃまをするゴマモンに文句を言う。光子郎とゴマモンの絡みは後にも先にもここくらいかと思う、ゴマモンファンとしては珍しいショット。光子郎は、珍しく感情的な態度を見せた。暗くなる前に寝床を、とか寝る前に見張りを立てようと提案するのが参謀役・光子郎らしい。明日も皆と一日中一緒で疲れると胸中でぼやくところから、ネットを介さない対面での人付き合いは苦手とわかる。
●ミミ:疲れた、足が太くなる、野宿するの?と愚痴を言う。路面電車のクッションに大喜び。箱入り娘なのね。でも一夜にして、寝たければ寝ちゃうというたくましさを身につけた。
●シードラモン:凶暴ではあるがテントモンによると殺気を感じなければ襲ってこないという。飛び散ったたき火が原因で暴れまわる成熟期。湖だけど「シー」なのねとどうでもいいツッコミ。必殺技はアイスアロー、氷の技同士でガルルモンと実は相性は悪いのでは?声優さんの表記は無し、レギュラー男性の兼役と思われる。風間勇刀さん?シェルモンと同じく、そもそも悪意はなかったのに倒されてお気の毒。
●テントモン:嗅覚が発達しているのか、「真水の匂い」と湖を発見。つまりはここがファイル島ということまでは知っているが、幼年期で居た場所以外の島の情報には乏しい模様。ヤマトの事を呼び捨てなのが新鮮。光子郎と同じく、まだ子どもとの距離感が定まっていないためと思われる。モノクロモンやシードラモンの性質、ガルルモンの毛皮の強度に関してひと言、知識の紋章ぶりを発揮。ちなみにミスリルは、ミス(灰色の)リル(輝き)からなる、RPGなどで用いられる空想上の金属の名。
●パタモン:眠気を催し寝付いてしまう仕草がなんともかわいい。
<風間勇刀さん>アクセント所属。無印の石田ヤマト役がデビュー作、他にガジモン、櫻田、メタルシードラモン、アドコロのヴァロドゥルモンを演じた。ギター、ベースが得意で、(確かヤマトのキャラソンで)ベースも担当している。
<山口眞弓さん>アクセント所属。無印のガブモン役でデビュー、テイマーズのジェンリャを演じた。個人的にはどれみの長谷部たけし役、「ギャラクシーエンジェる~ん」のフォルテ姐さんが印象的。
次回予告:敵なるはメラモン。に向けて、ピヨモンが進化する。パートナーデジモンの3体目が成熟期に進化。この感じで、一話ずつ進化していくのだろうか。これも炎系に対して炎系なんですよね。何でかな。
(2023/11/21 記 11/26更新)