デジモンアドベンチャー第21話感想

デジモンアドベンチャー第21話「コロモン東京大激突!」感想

脚本:吉田玲子 演出:細田守 作画監督:信実節子 美術:清水哲弘

暗黒と一体化した強化版エテモンと戦う決意をした太一。勇気をもってグレイモンはメタルグレイモンに超進化するが、そのインパクトに伴い次元の亀裂が生じて、彼らは飲み込まれてしまった。気がつくと、太一とコロモンが居たのは…。DWが何たるかがわかったうえでのこの唐突な単独での帰還が、ドラマでないはずがない!太一が平穏な日常の誘惑を振り切ったのは、RWにも押し寄せている危機と、アグモンたちとの絆。

タイトルコールはコロモンでなく太一、カラフルなお台場風景を背景に、モノクロのシルエットはコロモン。

最初の劇場版と「ぼくらのウォーゲーム!」の監督で異彩を放った細田氏が演出の、異色だらけの唯一の回。本当に魅惑的な才能の創り手による今回。細田氏は「太一という夫とヒカリという本妻とコロモンという愛人の色っぽい物語」と語っている。ヒカリがオムライスもスイカも食べないのは、「これやるから返しなさい」とのメッセージだという。創り手が意図してやっている以上、当然ながら確かに兄妹の近親相関的な情感が描かれ極めて艶っぽい。同人誌でもヒカ太、太ヒカは結構あるし、腐もイケる自分は好物。だが、兄妹のそこがエロくて嫌っていうデジファンもいるから創るとは難しいものだ。

美術について一言だけ言うと、太一のマンションのリビングからは角度的に観覧車は見えないはず。あと蛇足だがウォーゲームでは玄関の外に観覧車が見えており、これも事実と異なる。お台場感を出す意図でそう描いているのだろう。ちなみに、パレットタウンの大観覧車は、1999年に開業し23年を経て定期借地権の契約終了とコロナで経営悪化の背景もあったらしく、2022年8月31日をもって営業終了し、解体の憂き目にあった。デジファンならずとも、惜しむ声は巷に多かったのはせめてもの救い。

作画についてもほんの一言。ボリュームヘアの太一がベッドで寝転んでいる時の髪型の描き方がしなやかな質感ですごくよかった。

●風景:自分、地図ヲタで、聖地でもあるので詳しく書く。描かれる順に。流れるボレロがザ・デジモンミュージックで象徴的。夏空に飛行機雲(つまりはDWでなく飛行機の存在する現実世界)が見えるから広い屋外。、夏服の人混み、テレコムセンタービル、遠景にそれがある緑に囲まれたこの広場はどこだろうか?、フジテレビ社屋(2024年時点で悲しいかなフジテレビは例の件で評判がた落ちです。デジファンとして手放しで応援はできなくなったのが悲しい)、大観覧車、お台場海浜公園駅前というバス停(都営バスが2路線、港区のコミュニティバスが2路線)、右が通行止め・左が辰巳のT字路の標識(347とあるが、現実には江東区辰巳を国道357号が走っている)、ゆりかもめの駅と高層ビル、台場児童館(港区立で、ゆりかもめのお台場海浜公園駅前が最寄り駅)、太一のマンション(自宅は1306号となっている、標識はYAGAMI)、自宅のベランダから見える海浜公園とレインボーブリッジ、ファミリーマート風コンビニ。調べてもわからなかったのは、オーガモンが立っていた九つの放映画面の正式名称。ご存知の方、掲示板に書き込んで教えてください。

●太一:思わぬ帰還に最初は戸惑った末に喜ぶ。ここは日本で東京でお台場で自宅で。戦う旅からの脱出はそりゃあうれしくて。   「一か月?一年?それとも」だいぶ時間が経っているはず。ただいまと言いかけてご免下さいと言い直すところがいい。玄関には成人の男女の履物と、少女用のサンダルという事実に即した描写。冷蔵庫の中の描写も細かくてリアル。粉チーズ、アップルジュース、マーマレード、卵、スイカ、ペットボトルの飲料等々。それで飲むコーラの美味しさ、DWでミミが飲みたがっていた小学生のベストアイテム、帰還した実感が染み渡る。   実感したことで振り返る余裕が出てくる、果たして今はいつなのか。タイムリーにも冷蔵庫の扉に日めくりカレンダーが、まだキャンプ当日であることを知らせる。大きな壁かけカレンダーも、8月のページで1日に「キャンプ」と記入されている。掛け時計は12時26分「あの日のお昼過ぎのままなんだ」これが夢なのか、それとも辛い旅が夢なのか、混乱する太一。帰還の実感を強めたのは、風邪でキャンプを欠席したヒカリが療養中という事実。  コロモンに驚かないヒカリに、思わず油断してか「向こうの世界」と口にする太一。キャンプからの帰還はヒカリの風邪を心配して、と苦しい嘘をつく。手のひらで検温する、兄妹のスキンシップは萌、ヒカ太の見どころの一つか。   子供三人前なのに卵を8個も使って作ったオムライス、ボリューミー。ヒカリに味をほめられて、ヤマトに教わったと言うが、もともと劇場版で幼いのに既にオムライスを作れていたのだから、「前からこれぐらいはできた」が前提、料理は得意なはず。ポテサラらしきおかずもあるのがご愛敬。  満腹でリビングのソファーに寝転び、久々に操るリモコンでエアコンとテレビを付ける太一。目は半開きでリラックス、揺れる髪、鳴る風鈴、持てあます時間。ところが昼のニュースが報じる異常気象に映るメラモン・シードラモン・ユキダルモン、何とデジモンが関わっているのを目の当たりにすることに。そして突然の停電、パソコン画面からの太一宛ての光子郎の通信。通信は幸い双方向。帰還を告げる太一、しかし戻って来るなと光子郎…。思い知らされる、夢じゃない、自分の帰還も、DWでの仲間の残留も。「俺だけここでこうしてていいのかな」とコロモンに尋ねる。だが戻り方がわからないのは厳然たる事実。困惑した雰囲気に、ヒカリがスイカを勧める。   ストーリーに直接関係ないのだが、二段ベッドの下の段は年少のヒカリではなく太一のものであることは意外。二人のランドセルも描かれている。ところで、マンションのこの間取りだと02で中2の太一と小5のヒカリが同室と言うのはあるまいに、どうしたのだろうか。子供部屋と夫婦の寝室を男女別に変更するしかないように思うが如何に。   切られたスイカに手を付けず、「心配したってしょうがないじゃん」完全に手詰まりな太一、そのうち寝てしまう。静寂を破ったのは母からヒカリへの電話。母の声を聞いてホームシックにとらわれたか、平和な日常に戻って夏休みを楽しみたいと。「こいつのせいで俺は向こうに行ったんだ。何が聖なるデバイスだよ。こんなもん!」と投げ捨てかけると、無慈悲にも振動が現実世界で暴れるデジモンの存在を告げた。海浜公園にティラノモン・消えたと思ったら観覧車方面にドリモゲモン・ニュースでお台場の地震速報(13時10分ころ)、世界だけでなく地元にも。太一が玄関を出る時靴ひもを結んだり(背中を描いてるだけにもかかわらず)、追いかけてきたヒカリがカーディガンを羽織っているなど細やかな描写。   極めつけは、信号待ちに紛れたオーガモン。   オーガモン戦に進化で対向し勝利したアグモンは次元の亀裂へと上がっていく。DWも現実の世界も危機で、仲間も危機にある。太一は葛藤を超え、すがるヒカリを置いて、DWに戻る決心をする。今度は自身の意志で、アグモンと仲間を想い世界を想い。兄らしく妹の病状を案じながら。万感の想いが詰まった手が離れる瞬間、バリバリ太ヒカですvDWに戻った最後にも「俺たちがやるべきことをやったらな」と使命感を口にしています。

●コロモン:RWでは居てはいけない異形の存在であることを、見知らぬ幼女に突き付けられてショック。マンションの巨大な全容を先に見せられたから、玄関から入って、中は狭いと言い太一に怒られてしまう笑。いや四人家族でこのマンションの広さに住めるのは中流以上の家庭だというのをお忘れなく。   混乱する太一に、ヒカリの存在を知らせる。コロモンにはヒカリの記憶はない。劇場版のコロモンとは別個体なのだろうか、それともあのコロモンがはじまりの街で再生した個体なのか。つながっていることをファンとしては望む。   ウ○コ垂れという下ネタで落とす、細田氏の得意技。ピンクの薔薇と効果音、笑。そもそも中鶴さんの師匠である鳥山明氏がアラレちゃんの作中で出したのが元祖では、やはりピンクですな。    オムライスもスイカも爆食、本妻の手のひらで転がされ。でもお台場でのデジモン出現に決意、デジモンはこの世界に居ちゃいけない、戻ると告白。迷う間もなく子どもたちを襲うオーガモンに泡で応戦するコロモン。「独りで戦うな、いつも一緒にやってきたじゃないか」会話の隙を突かれピンチのコロモンに、デジヴァイスは反応しアグモンに進化!と同時に次元の亀裂が表出!

●電話:太一は皆の自宅へ電話をかけまくり、帰還していないか確かめる。光子郎、空、ヤマトの順にということは親しい順にということだろうか。丈とミミへの電話は省略されている。一つ気になったのは、石田家は父子家庭で父親が仕事で極めて多忙なのでお昼に自宅の固定電話に出るのは不自然と思う。夜勤明けとか言うならそれはそれでリアルだから、そういうことにしとこうか笑。若いファンに伝えるにこの時代はまだ携帯電話は普及していない。

●ヒカリ:コロモンを見て驚かないばかりか、コロモンの名もしゃべるのもウ○コ垂れもご存知。怖がりもせずなじんで手遊びに興じるのが、泣き出した当初の幼女と対照的。ずっと以前からデジモンという存在全般が見えていたというからそれこそ驚き、第六感を持つ不思議キャラ発動。頼りなげな姿勢と少し首元の開いたパジャマ姿が何ともセクシー。劇場版にあったホイッスルも印象的。病弱さがその神秘性に加担している。だから02ではやたら「もう元気になった子」と吹聴してるけど、か弱くも底力のある病弱キャラ好きだな私は。   「ほんとはどこ行ってたの」「へ?」「向こうってコロモンのいた世界?」ハイお見通し。「あ…」「やっぱりみんなとキャンプ行ってたんじゃないのね」。   おねしょを太一がかばってくれたエピソードは、太一の自己犠牲をいとわぬ愛情が感じられる。5才以上でもおねしょするのは夜尿症という病気と診断される。医学的に原因は排尿機能の未発達で、親の育児や子供の性格のせいではない。だがおねしょが治らないと子どもの自尊心が傷つくという問題があり、治療が必要である。ヒカリの場合、年齢的なもので特に敏感な性格のせいというわけではないと言えよう。「結構やさしいんだよね」いやそれ以上のただならぬ愛情なり執着を感じます。コロモンも「うん」と同意。本妻と愛人、モテ男太一、笑。   「二人ともずっとここにいて」と願うヒカリ、でもコロモンは困惑。   葛藤を超え次元の亀裂へ身を投じる決意をした太一に、すがるしかできないヒカリ切ない別れ。亀裂は閉じ、一人残されたヒカリ。けれど、八神家にはもう一つのデジヴァイスが存在することが示されて、新たな冒険の予感

●光子郎:ノイジーな画面からうつろな目つきで「戻ってこない…(で)下さい」と。第24話の、知りたがる心をなくした状態での通信と思われる。電話以上に、他の皆がまだDWに留まっていることの重要な証左。

●太一の母:声は水谷優子さんなので、「八神裕子(ゆうこ)」という名を設定されていることが後に明らかに。「おじいちゃんもおばあちゃんも‘お元気’」「心配してらしたわ」と敬語で他人行儀に言っているから、実母でなく姑のお見舞いということだろう。病気の娘を置いてお見舞いとはヒカリがかわいそうな気もする。大雑把な性格なのか、姑に風邪をうつさないだけの配慮があっての判断なのか、どうだろう。

●太一の父:タバコと灰皿がリビングにあるので、喫煙者で、しかも家族への受動喫煙を問題視していない、この時代ならまだまだ普通の父なのだろう。あと、リビングにデスクトップパソコンを置いている。仕事用なのだろうが、家族も使うのかもしれない。

●オーガモン:叫び声があるもクレジットはなし。効果音?平田さん??アグモンに負けるのはRWで実力を発揮しきれないからか?

<ヒカリ:荒木香恵(現、香衣)さん>人見知りの克服が一つの理由で演劇を志し上京、賢プロダクション、アーツビジョン、81プロデュースを経て現在フリー。セーラームーンの三石琴乃の入院中の代役を務め、続編でちびうさを演じる。近年は新人声優の講師が仕事の中心というから少し残念。音域はメゾソプラノ、何にも代えがたい可憐な声質。趣味は神社仏閣巡りというから、プライベートもそっち系なのかとあらぬ想像をしてしまう。

次回予告:DWに戻った太一。だが太一不在となった一行は、どこにもいなかった。遭遇できたタケルは、闇のデジモンによりトコモンと仲たがいしていた。不在の間に一行に何があったのか。

2025.2.20 記

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