デジモンテイマーズ第19話感想

デジモンテイマーズ第19話「強くなりたい!這い上がれインプモン」感想

脚本:前川淳 演出:芝田浩樹 作画監督:伊藤智子 美術:渡辺佳人 (2001/8/12 放映)

レナモンをデーヴァの仲間にしようとしたヴァジラモンの目論見は、タオモン進化によって破られた。
企画当初、メイン・パートナー・デジモンだったという曰く付きのキャラ、インプモンの初フィーチャー回。小中氏ブログより「序盤はひたすらワルガキのトリックスターとして(中略)二人の姉弟喧嘩に挟まれ、いたたまれず、独りで生きる事を選択し、ひたすら自分の無力さを呪いながら、より強くなる事だけを望んでいた」。ああそうなんだよ、あの悪態の裏には悲しい過去が。
新宿中央公園のジャブジャブ池(今はないという)で無邪気に水遊びするギルモンとヒロカズ、ジュリ、ケンタ。うわ~夏休みの小学生の定番。水ってメガネっ子は微妙に不利なのよね。一方テイマーズはと言えば。ジェンリャはデーヴァが明確に自分らを狙っていることを案ずるが、道場があるからと(やはり習い事は武術系か)去っていく。悪いデジモンなんだから僕らが倒そうと主張するタカト。それテイマーのしなきゃいけないこと?とルキは別段使命感に駆られていないようで、これまた去っていく。またもテイマー魂が空回りするタカトだが、すぐ皆との遊びに夢中になる所はお子様。これらを高い木の上からインプモンは見ていた。つまりデーヴァの事もご存知なはず。
同じく公園で、クルモンがヤマンバ系ギャル(塩味薫さん。埴岡由紀子さん、村岡雪枝さん)に囲まれている。本拠地・渋谷から新宿へ遠征してきたのか。クルモンにはみな同じ格好に見える。それを見て人間に媚びるなと怒るインプモン。ギャルにウザいと言われ、ギャル語はわからずともウザいの意味は直感したインプモン、ギャルに火球で反撃、ギャルたち驚いて逃げていく。
ジェンリャは大江戸線(行き先表示が間違っている。内回り区間については2005年末までは「六本木・大門方面行」と呼称していたはず。ただ呼び名が随時変遷していたようで、一応調べたが確信はない。)で道場へ向かう。そこは中国風の立派な門構えの家。汗まみれで戦っても一発もヒットしないジェンリャ、額を指で一突きされただけでダウン。さすが中国武術の達人の趙(しょう)先生(北村弘一さん)、彼の心の乱れを指摘、相談にのると親身に言ってくれる。頭脳派のジェンリャが武術とは意外、父の影響だろう。大人の事情を言うと、セントガルゴモンに進化した時、ミサイル類とは別にアニメの動きとして体を張ったアクションをさせたいという背景があったという。
デーヴァとは何か。先生はデーヴァを知識として知っており、インドでは良き神だが他民族にとっては悪い神、「逆もまた真なり、つまり善と悪は絶対的なものではなく立場が変われば逆転するものだ」と言う。デーヴァが良き神??しかしながら一つの指針を得たジェンリャ。小中氏のブログより「私はデーヴァを、紋切り型の悪役にしたくないと思っていた。デーヴァにはデーヴァの信じる正義があり、それが人間と相容れない時に衝突が起こる。(中略)しかし枠は子ども番組。やはり正義、悪という色分けはしておかねば混乱する。」だから趙先生の弁は一つの伏線だったと。
なぜだかインプモンに付きまとうクルモン。他愛ないやりとりを嘲笑する者がいる、駐車場にデジタルフィールド。怒ったインプモンは乗り込んでいくと、巨大な馬(午)型デジモンがいた。
ヒュプノス、R&Dセンターにいる山木、リアライズと報告を受ける。シャッガイはお前らの通り道ではない事を知らせてやる、とセンター絡みで何か策があるのか。
午デジモンは言う、一度人間に飼い慣らされたデジモンは同じ匂いがすると。確かにインプモンにもアイとマコがいた(12話の回想)。思い出したくない過去。その結果沁みついた極めつけの痛みたるや。比喩なのに、思わず体臭を嗅いでしまうインプモン。さらに、飼われた奴がなぜ進化しないと問うてくるのが腹立たしい。
さてレナモンとルキが現われるが、データが大きいためなのか?例によってなかなかデータが出ない。逆にそれがデーヴァの予感。インダラモン、聖獣型の完全体。背負っているのは宝貝(パオペイ)。物質世界での進化はあってはならない、お前らの存在自体が許されない、と聞き捨てならんことを言い残しインダラモンは一旦消える。ここからも、デーヴァにはデーヴァの道があるのがわかる。
あんな野郎俺一人でと怒るインプモンだが、ルキは呆れ、レナモンは冷静にデーヴァはただのデジモンではないと告げる。認めるはずもないインプモン、進化なんかしなくても俺は強い、人間とつるんだりしない、と変にマジで言い放ち去っていく。過去のトラウマに触れてただじゃいられないのだろう。ルキはシカトを決め込み、レナモンは気になるようで一呼吸おいてからルキに続く。
シャッガイ・ホールから流れてきたパルスを表示させた山木、その内容に椅子を蹴り飛ばし激しく憤慨する。「我らは、デーヴァ…」挑戦状のつもりか!「老人どもが使っていた人工言語しか使えないまがい物の知性」と呼び、人間の進化を見せてやると意気込む。
水遊びの次はまたも定番の缶蹴り。ギルモンがオニ、皆離れていく。そこに見知らぬ少年が混じっている。無表情で何か変。近くでジュリ、続いてケンタがオニに捕まり、タカトとヒロカズのところへギルモンが来る。君誰だっけ?そいつは皆の目を引き付けて、「マ!」と大声を出し、皆が驚くのを大笑いして即立ち去ってしまう。皆は驚き唖然とする。ヒロカズなんか鼻たらしちゃって;それがデーヴァの猿(申)、マクラモン(堀川りょうさん)とはまだ誰もわからない。
恨みのうっぷんを人間全般で晴らそうと言うのか、インプモンは道路の車の天井を凹ませたり、幼女のおやつを奪ったり、その父親(小栗雄介さん)にナイト・オブ・ファイアを放ったりと好き放題。
中央公園、帰る時間。ジュリはタカトに何かあったのか尋ねる、ジュリタカ、女の勘!上目使いビーム!ごまかすタカトだが、デーヴァのことがやはり気になっているから。遊びはここまで、これからどんどん強い敵が、もう後戻りはできない。
ふといるクルモン、進化の時必ずいるよねと問うもそこに触れられたくないよう。進化に関係しているという自覚はあるが、自分が重要な責務を負っているらしいことが苦しいのか、タカトに背を向ける。
ついに警察沙汰になったインプモン、警官の拳銃に囲まれて、強さを誇示しようとナイト・オブ・ファイアを放つ。この時、バーコードはげの警官の髪が乱れるのだが、あの大御所芸人さんが元ネタ?が、インプモンは逮捕を待たず何者かに連れ去られる。
首都高4号線新宿ジャンクションの構造物の影に、レナモンに引っ掴まれたインプモンがいた。居たたまれず騒ぎを収めたのはレナモンだった。進化しないと強くなれない、進化のためにはパートナーが必要という大前提に抗うインプモン。レナモンに、「進化とはデジモンとパートナーの戦い方で決まるもの」と持論を展開されて、パートナーがいたことを見抜かれる。思わずレナモンを殴るインプモン、一発だけであとは地面を悔しさに任せ叩きまくる。本音を吐く、俺だって進化してーよ、強くなりてーんだよ!レナモンが向こうを見やるとデジタルフィールドが発生、インダラモン(堀内賢雄さん)だろう、次の舞台がもう準備されていた。
避難する人々、Dアークが赤く点滅するルキ、ジェンリャ、タカト。インダラモンのもとに先に着いたのはレナモンとインプモン、ルキ。ここからのインプモンとレナモンのやりとりは最高。進化できなくともと意気込むインプモンをレナモンが止めようとして、ナイト・オブ・ファイアが放たれるが単なる脅しなので当たりはしない。悪い事をしたとわかっている、でも真顔になってインプモンは乞う、これは俺の戦いだから手を出してくれるなと。インプモン漢前!
別に二人がかりでも構わんというインダラモンに、単独戦を宣言するインプモン。ナイト・オブ・ファイアの何倍もの威力であろう期待のサモン・ブレイブを放つが、インダラモンの胸のスカーフ?を焦がす事すらできず、これに驚いたインプモンはインダラモンに文字通り一蹴される。すぐに立ち上がり、デーヴァをゲス野郎呼ばわり、これにはまったく賛同です。これも一蹴される。
タカトとジェンリャも到着、進化しようとするがレナモンが制止する。これはインプモンの誇りを懸けた戦い、手出しは不可と。インダラモンの容赦ない攻撃にも耐えきるインプモン。これでいいのかと聞かれたレナモンは無言だが、おそらくインプモンの誇りと命を測り葛藤しているのだろう。
滅多打ちにされるインプモンに、ジェンリャは「デーヴァは悪い奴」と判断。タカトはインプモンを励ますが、インプモンの悪態はここまできても健在。おたんこなすなんて、なかなか言う人いないよね。
ついに体が明滅するインプモン、やべぇ…。とどめは刺させないとばかりに飛び出すギルモンとタカト、が素早くインプモンを回収できたのは俊敏なレナモンだった。しかし、代わりに立ち向かったレナモンもあえなくやられる。これはもう進化のタイミング、無意識にクルモンを見るタカト。その額は赤く輝いて。三人同時のスラッシュバンク!かっこいい!超進化プラグインS、グラウモン。ガルゴモン、キュウビモンへ進化。
しかし、鬼火玉、エキゾーストフレイム、ガトリングアームはインダラモンの宝貝に何と全て吸い込まれてしまう。我々は神に選ばれしデジモン、堕落したデジモンに倒されるはずもないというインダラモンに、皆唖然。ただ一人諦めきれぬインプモンが闘志を燃やす。インダラモンが宝貝を吹くと、吸い込まれていたパワーが噴出、三体はしたたか吹き飛ばされてしまう、大ピンチ!インプモン、おめえをロードして進化してやる、とここへきてもあくまで強気で独りインダラモンに向かっていく執念たるや…なぜそこまで強さを求めるか。強さこそが彼の望むアイデンティティ・存在理由なのか。
小中氏ブログより「高橋広樹さんは長身な方だが、インプモンを演じる時は意識してなのか無意識なのか、少し背中を丸めて、なるべく小さな身体から喋っている様に演技されていたのがとても印象に残っている。勿論、ベルゼブモンの時には胸を張った立ち姿だった。」貴重な裏話。役に入り込む声優さんてすごい。

次回予告:インダラモンに打つべき手はないのか。ヒロカズの推す手作りのブルーカード。テイマーズ、友だちの支援も得て。ファイナルコールはタカトとヒロカズ。

(2021/8/31 記)



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