デジモンテイマーズ第21話感想

デジモンテイマーズ第21話「樹莉のパートナー!?私のレオモン様」感想

脚本:浦沢義雄 演出:角銅博之 作画監督:信実節子 美術:徳重賢 (2001/8/26 放映)

けやき橋商店街を歩くジュリの後姿は、OPのタカトたちと敢えて似せている(ジュリもテイマーだという意味で)。向かったのはまつだベーカリー、常連客のよう。対応したタカトの父に、大人への遠慮かファーストネームでなく苗字でタカトを呼んでいる。これには裏話が。シナリオではジュリは「松田君」だったのが、14話で貝澤氏が「タカト君」と呼ばせたため、以降多少の混乱が起きたという。前から気にはなっていた、タカトが一貫して「加藤さん」呼びなのに、ジュリは親密な「タカト君」呼びなのはなぜだろうと。私がジュリタカと感じる一因。
店を出ると、ジュリはヒロカズに声をかけられる。ここにいたのは、一足先にタカトの不在を告げられたのか。戦いに同席したよしみなのか?はたまたジュリをテイマー候補(仲間)と見込んだのか?それにしてはやや強引にジュリをタカトのいる場所へ連れていく。遠景には都庁が。
そこでは山木がワイルド・バンチに、SHIBUMIの研究していた必要なデータを提出するよう急かしている。子どもたちが危険だし、インダラモン以上に強いデジモンの出現があったらと、危機感を募らせているのだ。言うこと言って去っていく俺様野郎、山木。
ジュリは新宿中央公園まで無理やり連れてこられる。茂みの中に隠れて、ヒロカズはギルモンホームを偵察。
マジ顔のルキ、ジェンリャ、戸惑い顔のタカト。ジェンリャの趙先生の話が発端のよう。デジモンの神がいる、とはジェンリャの考え。よくわからないタカトにジェンリャが強く言ってしまうと、ギルモンがタカトをかばいたて、テリアモンがジェンリャをかばうのがいじらしい。突破口がなく考え込んでしまう3人。
それを観察するヒロカズとケンタ、デジモンの事で真剣に悩むテイマーがうらやましい。そこには、話に入っていけずに隠れているしかない、テイマーか否かの厳然とした壁があるのだ。もしテイマーになれるなら、ヒロカズはオメガモン、ケンタはインペリアルドラモンと。とにかく強くてカッコいいヒーローデジモンを挙げるのは、小5男児としては自然。
で、話を振られたジュリ、以前はタロットカードなんかなら興味あると言っていたが。カードを集めたこともないと目をそらすものの、秘かに持っていたデジモンカードがポケット?からばらばらと落ちてくる。見えただけでも18枚、本気モードでなければ持たない数だ。あらら…。思わず会話が止まるヒロカズとケンタ。
だがそんなこんなしてる間にタカトたちは消えてしまう。またバトルかと、追いかけるヒロカズとケンタ。ジュリを巻き込んでおいて置いてきぼりはヒドイ;テイマー志願がばれてしまったジュリ、一人ギルモンホームを後にする。隠しておきたかったのは、今まで男子のデジモンだのカードだのを子供っぽいと笑ってきたからだろうか。それにしてもここまでテイマー志願の気持ちが強いことを、視聴者は後で思い知らされることとなる…
すると、クルモンに出会う。パンの匂いを嗅ぎつけ、ジュリはパンをあげる。木陰に謎の少年、おそらくはクルモンが観察対象だろう。一緒に食べるジュリ、和やかなひと時。もう一つあげて、大丈夫なの?家から頼まれたお使いで買ったパンではないのかと心配になってしまう。それとも初めから自分の小遣いで食べるつもりだったなら、パンの量もお値段も結構するが。
ジュリ、ふと思う、いや確信、気が合うクルモンがパートナーではと。思い込みの激しい性格というキャラ設定追加!「クルモン、私のパートナーかもしれない!」パートナーの意味がわからないクルモンを尻目に宣言、「私がクルモンのテイマーって事!」。それを聞いてクルモン、余程ショックだったのか卒倒する;当然ジュリはいい気がせず、「不愉快~」と責める。慌てて起きたクルモンだが、私がテイマーじゃいやなの?と聞かれても困ってしまう。パンをあげた恩を持ちだし、お説教じゃないとジュリは言うが、もろにお説教。案外小憎らしくしつこい面を持っているこれもジュリなんだ、ほう。
そこへマンホールの蓋を外して突然現れたねずみ型のデジモン、「クンビラモン」(宮田幸季(こうき)さん、無印でピコデビモンを演じた)と自称する。もしかしてあなたが私のパートナー?とジュリ、勘違いも甚だしい。しかも不気味呼ばわり、毒舌ぶりがすごい。思い込みはそれにとどまらず、優秀なテイマーである私を襲いに来たのかとのたまう。威嚇するクンビラモン、小物だがクルモンもジュリも対抗する気などなく、互いを盾にした挙句逃げ出す。テイマーどころではない。謎の少年は一通り見ていた。デーヴァの監視役なのか。
逃げるジュリとクルモン、「ナイアガラの滝」まで走ってへばってしまう。すると滝からクンビラモンが現われ、ジュリはあられもない悲鳴を上げる。襲われそうになった時、クンビラモンは噴水の水圧に押し上げられてしまう。噴水に美しい虹がかかり、堂々たる音楽とともに虹からリアライズしたのは、レオモンだった!シャッガイホールからリアライズしたのかは不明。あの方こそ私のパートナーと思い込み、頬を赤らめ目をキラキラさせ惚れ込んでしまうジュリ。
自分より強い者のデータをロードし強くなると言うかっこいいレオモン。ジュリは一方的にあの方こそパートナーと惚れ惚れ、クンビラモンは気に食わねえと宝杵(パオツウ)を突き出し襲ってくる。がレオモンは剣で応戦、すっ飛ばしてしまう。ここで最初の「レオモン様v」。例えばアイドルなんかに対しても、こんな思い込み一目惚れ体質を発動するのか、今回たまたまテイマー熱が高じていたが故かは知りたいところ。
「あなたは私のパートナー、私はあなたのテイマー」と一方的に盛り上がるジュリ、訳が分からず「この子、大丈夫か?」とクルモンにたずねるレオモン。ちょっと変かもと正直に答えるクルモンをジュリは制し、レオモンを熱く見つめる。キラッキラの背景。そういう目で私を見るなというレオモンに、こういう目で?とこれは間違いなく、子どもでなくオンナの視線vvムーディーな背景;さすが、大人の扱いに慣れている小料理屋の娘。耐え切れず逃げ出すレオモン、追いかけるジュリ。この攻防は延々と続くことになる。
レオモンがギルモンホームに隠れたことで、やって来たタカトとギルモンも巻き込まれることに。レオモンがクルモンをいじめていると勘違いしたタカトは、ギルモンに応戦を命じる。気が緩んでいたギルモン、突然の指示に抱いていたクルモンを放り投げる。ややこしくなってきた。そこへなぜか戻ってきたジュリはレオモン様がパートナーと紹介する「私もデジモンテイマーになれたらしいの」。何を根拠にこの確信ぶり。
タカト「本当ですか、レオモン様」レオモン「ちょっと待て」タカト「待ちます」ここだけでなくこうしたやりとりの一つ一つがいちいち笑える浦沢節。レオモンにとっては身に覚えのない振ってわいた災難、様付けで呼ぶのはよせというのが精一杯だ。やっとまともに話せる相手が出来て釈明しようとするも、「私が教えてあげるv」とジュリの強烈オンナ目線ビーム!レオモン「勝手にしろ!」ジュリ「勝手にさせていただきまーす!」もはや誰にも止めるすべがない。どうする?とよりにもよってギルモンにたずねるアホなタカト、それに反して「ジェンに相談する」とギルモンはまともなお答え、ここも可笑しい。
浦沢脚本イコールギャグ回という先入観を持っていた私だが、小中氏はブログでこう指摘する「浦沢脚本の魅力の一つが、人間と非人間キャラクターが全く分け隔てなく描かれるところで、無印からデジモンアニメに参加されていたのは、実は意外ではなく、むしろギャグアニメよりも浦沢さんの特色が出し易いフォーマットだったのかもしれない」。
さっそく公園内の公衆電話でジェンリャに電話するタカト。その後ろには逃げ続けるレオモンと追いかけるジュリの珍レース。ジェンリャの助言がもとでいちいち大声で加藤さんを呼び止めるタカトと、レースを続けそれどころでないのに脈絡のない問いにわざわざ答えるジュリという珍妙なシーン。タカトがルキにも相談したもので、この展開がもう一度起こるのだからもう…(笑
ここで、すっ飛ばされていたクンビラモンのレオモンへの反撃。完全体との表示、合流したジェンリャの言う通りデーヴァだ。ひとまず両者の出方を見る。そこにまた謎の少年、観察対象はクンビラモンでもあるが、クルモンのこと。進化への影響を見て危ぶんだのであろうか。
クンビラモン、六分身の技を使う(本来の設定は別の必殺技だが、アニメに馴染まないためこの技としたよう)。6体に囲まれ、さすがのレオモンも苦戦模様。テイマーの自覚から、デジヴァイスを貸してというジュリ。その真剣さにタカトは貸したものの、大マジのスラッシュ(ちゃんとバンクあり、劇伴もあり途中で失速という演出、カード名のコールは無し)に二度失敗するジュリ、「レオモン様のテイマーじゃなかった」と失意のどん底。一方的な想いとはいえ、これはさすがに可哀想。
ジェンリャの「超進化プラグインS」とクルモンの光にてガルゴモンに進化、目の当たりにした少年は「ラ」と発声しあざけるように笑って去る。そちらは、到着したレナモンが追う。倒れかけたレオモン、失意のジュリを見てそこは漢、「加藤さん、あの子の為にも…あいつを倒す!」と気合入る。獣王拳とガトリングアームの応戦にて反撃、本体をレオモンの剣(獅子王丸)で倒す。「戦いは終わった。加藤さんの涙が乾かぬうちに、私は去る」最後までカッコマン(死語)でした。
タカトは慰めようとするが、「一人に、してくれない」とジュリ。慰めが効かぬ傷であることを察してジェンリャが去り、ギルモンもホームへ。仕方なく続くタカト。ギャグで終わらせないところには感嘆、そうきたか。独りジュリの涙の夕暮れ、でもそれがあったからこそ…
東京の夜景、夜もやむなくセンターに詰めているジャンユーたち。アークのデータを見つけ懐かしんでいると激しい揺れが…今度は何が。
アークについて追記。「アークとは子どもとネットワークのインターフェイスとして提案されていたデヴァイスだった」という。あの絵には元ネタがあった。「アラン・ケイが提唱していた、「ダイナブック」という子供の教育用デヴァイス」。今や子供への教育ツールとしてコンピュータは改めて必要性が高まっている。さらにその後も開発を重ねられ今に至るという。

角銅さんも小中さんも浦沢脚本を絶賛というオマケつき。

次回予告:地震の原因は、ただ事でない大きさのデーヴァの出現!街を守らねば…。今回「町」でなく「街」としたのは、被害の範囲を考えての事と思うことにしている。

(2021/9/20 記)

 

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