デジモンテイマーズ第23話「デジモン総出撃!風に向かって進め」感想
脚本:小中千昭 演出:吉沢孝男 作画監督:浅沼昭弘 美術:須和田真 (2001/9/9 放映)
小中氏のブログによると、サブタイトルの由来は、前半が小中氏の好きな怪獣映画「怪獣総進撃」から引用。後半は、終幕に「The Biggest Dreamer」のカップリング曲「KAZE」(理由は不明だが和田光司さんのファーストアルバムではタイトルは「風」である)(和田さんが作詞、作曲は大久保薫氏、編曲は渡辺チェル氏)を使ってほしいという要請があったからだという。エピローグを削って音楽だけにしたいというのも演出の吉沢氏の申し出だという。申し出の理由は書かれていないので不明だが、単にCDを売るためとかだったら萎えるなあ。この歌自体はとてもいいのだが、挿入は正直唐突に感じる。ジェンリャとタカトが呼び捨て、タカトの雄叫び、レオモン再登場、ジュリにDアークも結構唐突感あるぞ。シャッガイの顛末、マクラモンへの変貌、クルモンを奪われるなど、この回はトピックが目白押し。
放映の2日後に9.11が起きたので、もし事後だったらシャッガイが破綻し都庁のビルが爆発するシーンは自粛の対象になったかもとのこと。
都庁にて、シャッガイは起動。デジタル生命体排除プログラムが、空にICEウォールを浮かび上がらせる。
進むのをやめないヴィカラーラモンを、自衛隊のヘリが追尾。完全体3体も対峙する。3人のテイマーは日清食品ビルの脇から出てくる。
上空にヘリの飛ぶけやき坂商店街では警察の誘導で避難の準備。電話でも連絡の取れない(タカト、ケータイ持ってたっけ?)タカトを、松田夫妻は探しにいこうと決めた。
先攻したラピッドモンに、ヴィカラーラモンは真っ黒い液体?を噴射する。図鑑にはこの黒の技の正体は載っていないが、当たると動けなくなるよう。タオモンの梵筆閃で解放されるが、タオモンは我々の力だけでは、と冷静なのだろうが早々に弱気発言。それでも行かせまいとメガログラウモンは黒をダブル・エッジで切り裂くことに成功。突撃するものの今度は赤い塊を吐かれ押し倒されてしまう。タカトが叱咤激励するも身動き取れず。ジェンリャやルキにもお構いなしに進むヴィカラーラモン。
ヴィカラーラモンの通った上空のデジタルワールド側には、多数のデジモンが出てくるのを待っているかのよう、わかる範囲でメタルシードラモン、シードラモン、ホエーモン、デビモン、スカルグレイモン、デスメラモン、マンモン、スナイモン。これらがリアライズでもしたら恐ろしいことに。「なんでこんなことになっちゃうんだ」と、ジェンリャの行き場のない嘆き。
シャッガイのプログラムは進行、「こんなことをしていいの?」とつぶやく麗華。が、山木に迷いはない。ワイルド・バンチが人口生命体を作ろうとしたその結果がこれだという認識。ジャンユーに人が命を作ろうなんておこがましいと思わなかったのかと皮肉を言う。
何もできないタカト。どのカードと迷うルキに、ジェンリャは信じるからこそのカードだと言う。気を取り直して二人スラッシュ「運命の煌き!!」、キター!ヒュプノスでも把握はしていて、山木は子どもの遊びは終わりとあざ笑うが。黒に捕らわれていた二体は脱出に成功!スラッシュの成果、そうこなくっちゃ。
そこでタオモンの技「ラジャス」、ブログによると「インド哲学用語としてはさまざまに解釈されるが、ここでは「風」の要素として用いたと思う」。これも黒を風の道を作って切り裂き、ラピッドモンとの連係プレーでラピッド・ファイアーを撃ち込む。口内で弾を受けその場に崩れるヴィカラーラモン、勝機ありと見たが、なぜか力が入らない。そう、シャッガイの影響。タオモンのあつらえた結界にてやり過ごす。何が始まってるんだと不安なジェンリャ。
山木は自信満々、「もうあんたらにできる事なんてないさ」とパワハラ発言、ジャンユーは制止する警備員(小栗雄介さん、小嶋一成さん)を止めて(あくまで暴力でなく護身術と思われる)その場を去る。向かうところは一つ。
無力感に呆然とするタカトを、ジェンリャが覚まそうとして初呼び捨て。キャーv「僕、わからないよ。何でデジモンは進化すると大きくなって、武器とか強くなって、どんどん友だちじゃなくなっちゃう、それが進化なの?」。ルキは断言する、どんなに変わっても友だちだと。ジェンリャも、大きく強くなるにはきっと理由がある、とフォローする。ここにも三者三様なテイマー像が表われている。踏ん張れ、ナイーブなタカト!強気なルキと理論派のジェンリャが、フォローv
空から光の柱が降りてくる。それにはあの巨体のヴィカラーラモンも吸い上げられようとする。なんて大きな力。メガログラウモンもタオモンの結界も同様、我々の存在そのものを消し去る力と危惧するタオモン。パートナーまで消されてしまう、どうして?といぶかるジェンリャに答えたのは謝罪の言葉と共に現れた父だった。
花園神社はおかしな空模様、ジュリに抱かれたクルモンがおびえだす。心配する声も耳に届かない。
目的達成が間近だった山木、しかし事態は一変。ネット深くから送り込まれる情報(忌まわしき昔の機械語)がモニターを埋め尽くす。解読に取り掛かる麗華。
その内容はその実、マクラモンによって明らかとなる。「デジモンとデジタルワールドを作った創造神は人間、だが進化したデジモンにとってもはや神ではない。だが人間はデジタルワールドへ干渉し脅かす。我らはより高みへ進化する権利がある。進化を阻むものは排除する」といった内容。全くもって人間を否定している。勿論ジュリたちには意味不明。まくらくんはあくまでおぞましく、お前だ!と指した目的はジュリではなくクルモンだった。
暗渠にいたインプモンは、正体不明の光に遭遇。強くなりたいかと誘われる(声は森山周一郎さん、2021年2月に肺炎により逝去。享年86。「紅の豚」で主役の他、声優草創期から洋画吹き替え等された大御所、元祖イケボ)。インプモンは神などとためらうが。
ここのシーンのイメージボード(デジタルワールドがリアルワールドに現われた時の見え方)は、荒牧伸志さんによるという。「デジタル・ワールドの元型的なイメエジ・ボード」を手掛け、更に究極進化時のデジモンとテイマーの融合のイメージ、「デ・リーパ―による地上侵攻がプラン変更を余儀なくされた時も、頼ったのも荒牧伸志さんだった」。予算上の問題は、関Pが処理してくれたという。そうして、素晴らしい映像が出来たわけだ。
空から降りてくるシャッガイの光の柱。それを浴びたまくらくんは、明らかにデジモンであるマクラモンへと変貌。白い玉(宝玉:パオユー)を持っている。申(さる)のデーヴァ。凄まじい声で空を見るマクラモン、そして飛び去る。
松田夫妻、新宿中央公園へ探しに来たが、見つけたのはギルモンホームのパンの袋。息子は一体何を。
結界も限界、引きずられるタオモンとラピッドモン。ジャンユーは謝罪するが子どもらにそれを受け止めている余裕はない。友だちが消される!
マクラモンが白い玉をシャッガイホールへ投げ込むと、シャッガイが乗っ取られ崩壊し始める。壊れるヒュプノス、逃げ出すスタッフたち。山木は職務放棄と批判するが、もう限界は明白。じっと見つめる麗華に、退避するよう告げる。微妙な大人の雰囲気~v目的達成間近から一転敗北へ、山木が立ち去り難いのはわかる。しかし、都庁舎の中層から爆発が…。
おかげで勢いが戻るヴィカラーラモン、タオモンたちも元に戻る。自衛隊ヘリが集中砲火、しかし効かず。明治通り沿いに退避するタカトたち(ここの歩道橋はのちに撤去されたという)、偶然ジュリたちと合流。
ブログには「≪大人の時間≫は終わりだ。ここからは子どもたちとデジモンの力を見せつける」とある。呆然自失だったタカト、決意して「ジェン」(初省略呼びv)「ジェンも言ったよね、どんなに進化したってデジモンは友だちでいるんだって」「友だちは友だちを助けるもの、だよね」。助け方がプリミティブ。他者に対する呼名でも叱咤激励でもなく、メガログラウモンと自身が一体化する如く、そのものになり切っての気合の雄叫び!これには驚き。思わずがんばれ!となる。背後には「デジモンテイマーズのテーマ」が。
原始的な助けがメガログラウモンに伝わって、赤いマグマ塊から脱却。なお叫ぶタカト、まるでダブル・エッジのように腕を曲げたり敵を押したりのなり切りっぷり。ジェンリャ、ルキも続く。そしてテイマーと心通じたメガログラウモンがついにヴィカラーラモンの巨体をひっくり返す。放たれたマグマ塊はラピッドモンがフォロー。続いてタオモンが梵字「きゃ」を書き、空の黒いものを消し去る。最後の雄叫び、メガログラウモンのアトミック・ブラスターでヴィカラーラモンを壊滅させる。やったー!これが本当のデジタルモンスター…。圧倒されるジャンユー。
肩で息をしていたタカトも、ジュリに声をかけられ笑顔。ヒーローに駆け寄るジュリ、ヒロカズ、ケンタだったが。
マクラモンがジュリからクルモンを奪い、収まるべきところへ戻すと言う。タカトは友だちを返せと掴みかかるが叶わず、マクラモン飛翔。
今までどこにいたのか、それを止めようとレオモン参上。しかしマクラモンにはたかれ、その背後にいるスーツェーモンであろう影から無数の針を放たれ、傷つくレオモン。駆け寄ろうとしたジュリの前に、黄色のDアークが出現!熱っぽい慕情から冷却期間を置いて、それでもなおテイマーになりたいジュリの想いが通じたのか。その出現を目撃し驚くジャンユー。ジュリはレオモンを癒すべく、アークをかざすと針は消え去った。デジヴァイスには治癒効果もあるのね。
嘲笑いつつクルモンを抱えて帰っていくマクラモン。そして空の亀裂は閉じてしまう。クルモン、進化に必要な重要な存在だから、消されはしないだろうが「収める」って監禁とかされちゃうのかな、心配。
勝ったとはいえ、街の風景は惨憺たるもの。タカトは決然として言う「行くんだ」「ぼくたちが助けに行くんだ!デジタル・ワールドへ」。ヤバい、表情かっこいい。吹く風と共に挿入歌。ジェンもルキも言葉はないが気持ちは同じだろう。
時は夕暮れ、平素を取り戻した空。パトカーの音?に完全体に進化したデジモンたちはおのおの身を隠す(メガログラウモン、そんな巨体で市街地に穴掘って大丈夫かなあ)。ヒュプノスは破損、可能性未知数の子どもたちとデジモンにお株を取られて、何を思う山木よ。胸にはヒュプノスのピンズが。
続けて、タカト・ジェン・ルキ、ジュリ・ヒロカズ・ケンタのスリーショット、ギルモン・テリアモン・レナモン・レオモンの4体…レオモンはパートナーデジモン確定なのね。そしてタカトの疾走で幕を閉じる。最後に暗転で野沢ナレ「テイマーズは冒険に旅立つ、デジタルワールドへ。」
次回予告:私含め大人たちは心配だけども、「今しかできない事」なんて、特に子供に言われてしまうと反論はしづらいなあ。テイマーそれぞれの別れが描かれるようで楽しみ。ファイナルコールはタカト、ジェン、ルキ。
(2021/11/3 記)