デジモンテイマーズ第25話「デジタルワールド突入!さらば僕たちの街」感想
脚本:まさきひろ 演出:貝澤幸男 作画監督:直井正博 美術:渡辺佳人 (2001/9/23 放映)
前話の最後が「デジモンテイマーズのテーマ」と共に流れ、<ゲート>を通過すると。暗くて記号や数字(1と0)が飛び交うRWとDWの中間的な場所を歩いていく。デジモンが先に、そしてタカト・ジェン・ルキがOPと同じ構図で続く。ゴーグルとサングラスのないジュリ、ヒロカズ、ケンタはまぶしがる。ジュリにルキが手を差し伸べる。ルキ「ちゃん」と呼んでいるがルキはそれを許している。ここを経過して、実存からデータへと変換されるのだろう。
途中で重力が無くなり、皆ふわふわ浮いてしまう(7話の<ゾーン>と同じ現象)。どちらへ行ったらよいのか。こっちかなと言ったジュリ、それにつられて皆もそちらへ引っ張られ落ちていく…。
皆声を上げて落ちていく。ギルモンだけが危機感なく笑っている。テリアモンもモーマンタイと。荷物のパンは離散してしまう。あららもったいない。
やっと底に着く、土にまみれて。衝撃はなかったが、落ちて削れた穴は割と大きい。女子組を、レナモンとレオモンは穴から引き出す、紳士的。
ジェン、想像していたのと違うと。「もっとデジタルな、ヴァーチャル・リアリティぽいっていうか…。」そこは、ところどころに岩山のある見渡す限りの乾いた荒野。タンブルウィード(転がる干し草。転がる内に種子を蒔くという生態のロシアアザミ等)のように転がってくるダスト・パケット。データの残りかすで害はないという。
ルキが双眼鏡(太一の単眼鏡を思い出す)でのぞくと、遥か上に日本列島の裏返しが見える。それはリアルワールド球。DWから見たRWだとレナモン。小中氏のブログによると「渡辺佳人さんによる手描きのニュアンスのある反転地球と、荒牧さんがデザインしたデジタルな帯の組み合わせは、想像していたよりも凄かったのだが、想像以上に手間も掛かったのだろうなぁ……。しかし今見ても、テレビアニメでのデジタルな表現としては、フル3Dよりもずっとアニメのキャラクターと馴染む表現だと思う。」なるほどそうですね。球体がいい!となったのは、地球空洞説が構造的に判り易いと感じたからだという。
荒野に失望などせずヤッホーと叫ぶタカト、どこかレジャー気分。似てないと不満を言っていたくせにテイマーズの旗を立てるヒロカズ、ケンタも記念撮影しよう、と同様の気分。楽しそうに撮影していたが(しかしBGMはあくまで不穏)、デジカメがどうもちゃんと動作しない。タカトが山木から受け取ったPDAも動作せず残念。帰れるのかな、僕たち…とパペットに言わせるジュリ、ちょこっとホームシック?
ブルーな気分の中、タカトはハッパをかける。レナモン、レオモンというRWに行った前例があるのだし大丈夫。クルモンを探そうと。ルキは不言実行、岩山に登り遥か先に何かを発見。それはアンテナのよう。もしや人がいる?行ってみよう。レオモンがジュリを軽々と前腕に乗せているのがカッコイイ。
クルモンを連れ、慌てているマクラモン。板(レイヤー)に激突してしまい、檻籠が引っ掛かり、更にマクラモンの手を放そうという力が働く。手が離れ、籠を抜け出せたクルモン、不思議な白い存在のおかげ。
小5生の感覚で「新宿から池袋」ぐらい歩いて、やっとたどり着いたのはアンテナの形をした岩たち。落胆し疲労も限界、ジュリがお昼にしようと。パンは失ったが、わずかなお菓子ならある。
一同ホッとしたのも束の間、多数のピンクの丸いものが迫ってくる。逃げ出そうとするヒロカズとケンタを制止するレナモン。それは無害なダスト・パケット。「来るのはこの後」と脅しておいて(?)来たのは突然の暗闇、夜だった。小中氏のブログより「テイマーズのデジタル・ワールドをどう描こう、とブレイン・ストーミングしている時に、タンブルウィードや昼夜の区分というのが決まったのだけれど、誰の案だったかは覚えていない。貝澤さんか、荒牧さんか。」
上空から指す光の柱、それはRW球からのデータの流れで、巻き込まれたらどこに飛ばされるかわからないという厄介なもの。
それを目で追っているとルキが岩山の上にデジモンを発見。DWに来て初めて遭遇したのはメラモン(小嶋一成さん)、火炎型の成熟期。さっそく「マグマボム」で攻撃され、ギルモンでは歯が立たずレオモンが獣王拳で見事に倒す。
メラモンは存命、なぜか江戸っ子口調で「ロードするなり何なり」と潔い。タカトが尋ねるも、デーヴァもクルモンもマクラモンも知らないという。タカトの人相書きが上手くてかわいい。そう、タカトの描いた一枚の絵が全ての冒険の始まり。後ろではヒロカズとケンタがメラモンを値踏みしている。メラモンは、RWへ行った者を羨ましがる。それだけ、一般のデジモンにはハードルが高いのだろう。
DWへ落ちてゆくインプモン…。その姿は、流れ星としてタカトに視認される。要は眠れないタカト。なぜデジモンはRWへ行きたがるのか。進化してロードしてその先は。ジェンも起きていて、それ以外の生き方を知らないのだと言う。達観。でもタカトは言う、そんなの辛い、と。思わずギルモンに触れる。
そこでデジモン皆が異変を察知。岩山に素早く登り凝視するレナモン、その視界にはジャガモン(小栗雄介さん)が、植物型の完全体、群れを成す習性。逃げなきゃ。レオモンが女子二人を軽々と腕に乗せているのがいい。レナモンは爆睡中のヒロカズとケンタを引っ張る。事後への伏線か。DWでの経験のないギルモンは果たして戦闘モードに入ってしまい、タカトが連れ戻す。すごい勢いのジャガモンの群れ。ようやく逃げ延びて。
それに挑んだメラモンは勢いに押されあっという間に呑み込まれてしまい没。悲しむ子どもたち、けれど、仕方ない、弱肉強食がDWの掟と言われて。
クルモンを取り囲む白い生き物(デジノーム)。出られて喜ぶクルモン。そこは夜が明けていく空間。
こちらも夜が明けて。騒動の間一度も目覚めなかったヒロカズとケンタもようやく起きる。他の子たちは、メラモンの死を悼んで似顔絵で飾った墓を作っていた。デジタマで簡単には再生しないテイマーズのデジモンの死は大きいテーマ。
ヒロカズとケンタの周りには動く芽が出ている。引っ張るとそれは弱弱しいジャガモンだった。群れがいつの間に地中へ埋まったのか。襲撃同然の群れの移動に、ルキは抗議する。が、レナモンが諭す。先に手を出したのはメラモンだから、怖がられて攻撃されてもやむなし。
ジェンに促され、タカトは人相書きを見せると、ジャガモン複数がマクラモンに反応。なぜかクルモンは知らないと。嘘を付けるほどの知恵はない。いつどこで見たかは不明だが方角は判明する。ジャガモンは、荒野のバッファローの群れを表現すべくまさき氏が描いたという。ジャガモンが差した方角には…。
確かにマクラモンが居た。辰のデーヴァ・マジラモンに乗って檻籠の方へ突き進む。しかしクルモンは不在、憤慨するマクラモン。
てくてく歩きながら、DWのジャガモンは完全体のままで、なぜギルモンたちは退化するのか疑問なタカト。ジェンの意見は、完全体を維持するのが大変ならより安定した姿を選ぶのではと。タカトは、進化して大きくなって強くなるより、ギルモンがそのままでいてほしいと願う。一時進化への興味が湧いていたのも、ここが彼の落ち着きどころなのか。ギルモンはギルモンだよと、ギルモンは言うけれど。
突如、例の光の柱が一行の背後から近づいてくる。逃げ遅れそうなヒロカズとケンタをフォローすべく向かったルキと素早さで勝るレナモンだが、時すでに遅し…。
追記、2021年5月21日時点ののまさき氏のツイート:お疲れさまです。テイマーズでのデジタルワールド初出回なので責任の重大さにとても緊張しました。もっとも、コンセプトが明確だったので、前作との区別化は苦になりませんでした。むしろ、まだ誰も観たことのない世界を創造することが、とても愉しかったです。
次回予告:一緒に飛ばされて、不本意なルキとこんなの呼ばわりされて憤慨するヒロカズとケンタ。パートナー探しが目的の二人にジジモン、ババモンの世界はどう映る。キター浦沢節!笑いポイントてんこ盛り。ファイナルコールはルキ、ヒロカズ、ケンタ。
(2021/11/16 記)