デジモンテイマーズ第26話感想

デジモンテイマーズ第26話「小世界!風の強い谷のジジモン・ババモン」感想

脚本:浦沢義雄 演出:川田武範 作画監督:伊藤智子 美術:徳重賢 (2001/9/30 放映)

タイトルは「風の谷のナウシカ」のパロディだろう。サブタイトルコールはルキが担当。タカトとギルモンが全く出ない異色の回。
小中氏のブログより「デジタル・ワールド編では(中略)連続性が強かった第一部から少し換気性を入れたい、という意向もあった。つまりヴァラエティ性の導入であり、浦沢さんに本領を発揮して戴く機会ともなった。(中略)ケンタとヒロカズがこういうキャラクターに育ったのも、キャンプ旅行の回があったからで、浦沢さんに育てられたと言える。また大分性格的に柔らかくなっていた留姫に、再び活き活きと毒のある台詞を言わせてくれたのも良かった」。
光の柱に呑み込まれたルキ・レナモンとヒロカズ、ケンタ。偶然にしてはあまりに相性の悪い顔合わせなのがまず笑える。突如、深いところへ落ちてゆく、レナモンの何とか助けようとする動きも虚しく。荒れた岩場に落ちてしまった4人だが、デジタルなせいかダメージはない。最初に起きたレナモンがルキを起こす。見えたのは遥か高みにあるRW球、それだけ深くに落ちてしまったのだ。
辺りの岩には傷が無数にある、後でわかることだが、風で物が飛ばされてぶち当たった傷だ。木は一方向になびき、家と思われるものには窓がない。ルキ、嫌な予感。
ところが前回と同じく爆睡中の二人。ルキはヒロカズの尻に蹴りを入れる!その勢いでチュウしそうになる二人、アホらしくも笑える、何すんだようと声を合わせて抗議する。「帰れ!新宿へ」シンプルにして強力なルキの憤り。
そこへいまいちビシッとしない二人の反論模様。ルキはヒロカズ的に美人の範疇と判明。ここでそれを表明するのが何とも。ケンタ、新宿一コレステロールが高いという弱みをヒロカズに握られているのもアホらしい。ちなみに現実には、小中高と学校で行う健診にコレステロール値を含む血液検査は現実には通常含まれていないので、全くのギャグ。
ルキの率直な感想「テイマーの私がこんなのと…」おっしゃる通り。こんなのとは何だと反論するも、冷静なレナモンにまでこんなの呼ばわりされて取り付く島もない。
そうこうするうち、風が強くなってくる。タイヤ、家具、鍋、家電、果てはグランドピアノまで吹き飛んでくる。岩の傷も、家に窓がないのも、この強すぎる風のせいだった。それを冷静に分析するレナモン、それどころじゃとヒロカズが叫ぶのも無理はない。しまいには体ごと吹き飛ばされる4人。飛ばされた拍子に一軒の家の入口に入り込んでしまう。
家主は、究極体・ジジモン(木村雅史さん)と同じく究極体・ババモン(尾小平(おこひら)志津香さん)。おまけに二体は夫婦だという。デジモンに性別がないのが公式見解だが、そこはご愛敬。堂々と夫婦を謳うのは珍しく、この回のゲストデジモンがなぜそうなったのか小中氏は記憶がなく、おそらくは浦沢氏のチョイスではとのこと。
4人にかんぬきをかけさせたらさあ安心とばかり、突然の侵入者を差し置いていきなり夫婦喧嘩の始まり。箒と熊手?でのやりあいは結構ハードボイルド。止めようにも危なくて。そのうち息が切れる、とレナモンは冷静。地下への階段を降り切ってさすがに息の切れた二体に、なぜ戦うのかとルキが問う。答えは意外にも、ただの退屈しのぎだと。風が強いとすることが他にないのだという。
さて、招かれざる客に戦いを仕掛けてくると思いきや、歓迎の宴を開くという。ごちそうと聞いてすっかり怯えから解放されるヒロカズとケンタ。いざ身構えていたレナモンも、本気で手の込んだ料理作りをする二体に、悪い奴ではなさそうと判断。デジタルワールドでは、デジモンは食べる行為をしない。だからジジモンとババモンの料理は人間界のそれをまねたものらしい。
料理が出来て、改めてご挨拶、ようこそと。4人も礼儀正しくお辞儀する。何ともほほえましい。歓迎を物語る目を見張るような豪華なメニューは、究極体なればこそ?挨拶もそこそこにかぶりつくヒロカズとケンタ。ジジモンババモンはワインのようなもので祝杯を挙げる。二体にとってほんとに特別な夜なんだな。子どもたちの美味そうに食べる事ったら!
吹きすさぶ風の中、なぜか演歌のイントロが流れ出す。ジジモンが、ダストパケットを燃やして風呂を沸かしてくれている。お風呂を頂いているヒロカズとケンタが歌う、「男飛沫」(作詞:山田ひろし 作・編曲:太田美知彦)が渋すぎて可笑しい。ルキはというとソーサー付きのちゃんとしたカップでお茶をごちそうになっている。みんなリラックス~。2人はさらに盛り上がり歌いつくす。タオルをマイクに見立てているところからして、親と一緒にカラオケに行っているのだろう。ジジモン、拍手。
夜は更けて、ベッド付きの部屋をあてがわれたルキとレナモン。おもむろにレナモンは、風が止んだらクルモンを探しに行こうと提案、旅の目的の再確認。
当のクルモンはと言えば、マクラモンから解放されたはいいが行くあてもなく、光の柱に飛ばされてしまう。さあ何処へ?
和室をあてがわれたヒロカズとケンタ。ジジモン、ババモンはパートナーにどうかと思いつつも、睡魔に襲われて。自分的には眼鏡を外したケンタ萌え。いつの間にか見た、ジジモンとババモンの夢は不吉で、同時に思わず起きるヒロカズとケンタ。この二人のシンクロぶりにはいつも笑わされる。大きな物音に、ジジモンババモンが悪いデジモンで襲われるんじゃと怯える。居間の様子を伺う二人が下はパンツ一丁なのが危機感なくお間抜けで可笑しい。
大きな音は、ジジモンがダストパケットを暖炉にくべる音だった。そして二体の会話は旅の客を喜ぶものだった。ケンカせずに済んで、と客人に感謝の祈りを捧げる。予想外の展開に、後悔する二人。ジジモンババモンは俺たちより人を信じる純粋な心を持っている…。感謝すべきは俺たちなのに、と思わず拝む二人。大丈夫、それは二人の心がきれいな証拠だから。BGMと共に、なんかほのぼのvそして一夜は明ける。
お礼のあいさつをして、立ち去ろうとするルキ。しかし、ヒロカズとケンタはジジババに話があるから後から追うと言う。レナモンは心配するが、ルキの気持ちはしょうもない二人よりもうクルモンにある。
二人はというと、パートナーになってくれとジジババに土下座中。絶対に立派なテイマーになりますとダメ押し。何だかわからぬが面白そうと感じたジジババ、二人と一緒に謎の盛り上がり「デジモンていま~ず~イェイ」。混乱はここに始まる。
岩の上でクルモンを呼ぶルキとレナモン。返事はない。高い崖の上に見えるRW球。どうやってあそこまで、と案じた時に、屋根の布地が高く舞い上がる。布と風を利用すれば果たして。
ジジババにカードスラッシュを教えるヒロカズとケンタ。興味津々の二体に、テイマーにしてともう一押し。ジジモンがいきなりかかる「SLASH!!」に乗ってカードスラッシュ!ここがボタンの掛け違い、俺がデジモンだったら「ブラックウォーヒロカズモン」とノリで応えるヒロカズ。ババモンもスラッシュ、ケンタが応えて「メガロケンタモン」。いずれのデジモンも、小中氏が検索してDigimon Wikiで見つけたが(BlackWarKazumon、MegaMightyKentamon)、誰がデザインしたのかは不明という。また、英語版での26話のサブタイトルは「Kazu and Kenta's Excellent Adventure」で、これは「Bill and Ted's Excellent Advennture」のもじりという。
二人がデジモンに扮したところで、ジジババが戦いを命じる。最初は軽いノリだったがすぐに熱中、ジジババも愉快がる。ふと、テイマーのはずが何で二人でデジモンになって戦っているのかと素に戻るが、興に乗ったジジババに武器?を渡され、二体が喜んでるから「まあ、いいか」とユニゾン。バトルはさらに白熱化、ホントにアホ、可笑しいことにおひねりまで飛ぶジジババの歓待ぶり。
布はジジババの家のを拝借するルキとレナモン、ところが家の中から二人の大声がする。
ケンタ、土ぼこりを上げる作戦。ジジババも悪ノリして奇妙な技を出す、「ババモンのミルク!」「ジジモンの臭い息!」(これ、微妙に女性・高齢者差別になってませんかね;いやいや笑いは毒と紙一重だからして、判断難しい。)テイマーだかデジモンだか、もう何が何やら。
不審に思って入ってきたルキとレナモン、現場はカオス。そこでジジモンがテイマー宣言、ヒロカズとケンタがパートナーデジモンという珍妙極まる事態。二人は一応説明するも、「帰れ新宿へ!」とルキの冷たいひと言。
タカトたちの所へ帰ろうとして、ジジババが楽しみを奪わせまいと攻撃してくる。受け止めたレナモン、ジジババをかわして階下へと転落させる。
岩の上から布で作った凧でいざ出発するところ、ジジババが未練がましく追ってくる。凧は落ちかけてジジババがすがり寄るも上昇に成功。さすがにジジババも振り切られてさらばじゃとあきらめがついた様子。落ちた勢いで家に戻る。
いつテイマーになれるのかとこちらも未練はあり、ジジババいいデジモンだったと皆でうなずく。勢いよく飛んでいく凧。さあ合流するぞ!
さて家に戻った二体、することは何かと言えば「男飛沫」の復唱。年寄りでも、究極体ゆえ記憶力は良いのだろう、一夜聴いただけでそらんじている。熱唱するも鐘は一つしかならず、「へたくそ」「音痴」とまた夫婦喧嘩の始まり。非日常はほんのひと時。BGMは男飛沫。
外は強い風が吹き、クルモンが吹き飛ばされている。ここにいたのね。
小中氏のブログより木村雅史さんについて。「22、23話でヴィカラーラモンを演じられた方。台詞はなく唸りだけで、しかも加工(低音化)されていたが、メガログラウモンとの戦いなど、効果音では得られない演技をして戴いていた。今話ではババモンとイーヴンなメイン・フィーチュア。小浜匠氏のキャスティングの妙に、勝手ながら安堵した」。
次回予告:アイマコを失い、強くなれず進化もできないインプモンが頼ったのは哀しくもデーヴァ。その進化はタカトたちとの敵対を意味した。ファイナルコールはタカト。

(2021/12/8 記)

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