デジモンテイマーズ第29話感想

デジモンテイマーズ第29話「ここは幽霊の城!迷えるクルモン大脱出」感想

脚本:吉村元希 演出:角銅博之 作画監督:出口としお 美術:渡辺佳人 (2001/10/21 放映)

サブタイトルは一行だが、二つの事象が並行して描かれた内容となっている。大脱出かどうかは別として;
リョウとサイバードラモンがトリックスター的に振舞っている。集団の外から来て、秩序を破り物語を展開してはまた外へと去っていく。また小中氏のブログにはこうある「デジタル・ワールドなのに、他のデジモンがあまり多くは登場していない、という事を気にしたのか、今はもう覚えていないのだが、今話のゲスト登場デジモンは大盤振る舞いと言える」。
モノトーンの歪んだ建物の小世界へ着いたタカトたち。そこへ「男飛沫」を歌いながらやってきたのがヒロカズたち。「奇遇じゃん」とおいおい軽いノリ、互いのパーティーを探し求めていたにも関わらず。あとに続いたリョウをヒロカズが「伝説のテイマー」と紹介。大げさな、と謙遜するリョウ。有名人を前にしたからってタカト、呼び捨ては失礼だぞ。物珍しさにタカトはサイバードラモンに近づくも、唸られて腰が引ける。そこはリョウ、サイバードラモンに膝をつかせ忠誠さを見せつける。ジェンも、リョウの事は伝え聞いていた。
ルキが不在の理由を説明するケンタ。ルキはプライド高いからと納得するタカト。いくら強いとはいえ、心配は心配。
そのルキは、まだ歯車の小世界にいた。危険を覚悟で、ムカついてリョウとは一緒に居られないルキ、レナモンは少々理解に苦しむ。ルキは実はリョウを異性として意識してしまうよう。
リョウにDWへ来た理由を尋ねられたタカト、クルモンの絵を見せて説明する。リョウはDWが長いが、クルモンもデーヴァも新宿の被害も知らなかった。デーヴァはまだDWでは知られていない存在という事になる。リョウの出身地が福岡と判明。
ノヘモンが現われ警戒するが、リョウは大丈夫だという。何でもよく知ってるな。
マクラモンがマジラモンに乗ってクルモンを探索している。チャツラモンも動いているので、マクラモンは焦っている。
哀れ、テイマーズの旗は短い竿だけになっている。クルモンがマントを作るのに布を使ったからだ。そんなことで一行を見付けられるとは思えないのだが、いじらしい工夫。そこへやってきたのはドッグモン(デジモンドット絵の入賞作のファンアートから生まれた、声は世田壱恵さん)、クルモンに意地悪し逃げると追いかけてくる。それを高い岩から見ているオタマモンとゲコモン。登場する必要性はないから、サービスショット。
歪んで見える城のような建物、そこの中はベッドが完備され誰もおらず、宿泊に便利だとリョウ。さすがにここも以前訪れたことがあるらしい。一瞬にして夜が訪れ、柔らかいベッドを喜ぶ一同。食事は、DWでは何をどれだけ食べねばというルールはないというリョウ。食料を探し回っていた無印とは大きな違い。
一同が床に就いて、はて廊下で変な音がする。ナイトモンが歩き回っていた音だった。ケンタは幽霊だと怖がるが、リョウは気にも留めず寝入ってしまう。細かいことを気にしていたら神経がもたないという事、リョウの図太さに皆驚く。寝付けないタカト、ジュリもだ。リュックの底に忍ばせたお守りと母の手紙に、涙するタカト。子どもが冒険に目を輝かせても、心配なのが親心。新宿で母は気をもんでいる、そしてそれを見やる父もまた心中いかに。泣いてなんかないとジュリをごまかすが、眠れないのは一緒。タカトは正直に、ジュリが同行してくれたうれしさを伝える。ほのかな慕情。
小中氏のブログより「この歪な町並み、歪な城については、どうも私が「これ、ドイツ表現主義派映画にしてください」と角銅さんにお願いしたらしい。要望がそこかよ、と自分に呆れる。(中略)「カリガリ博士」(1920)は、その異様な美術セットとメイクアップで、完全なる人工美を貫いた映画。私は若い頃に見て随分とその影響を受けた」。ドイツ表現主義とは、ドイツにおいて第一次世界大戦前に始まり1920年代に最盛となった芸術運動で、客観的表現を排して内面の主観的な表現に主眼を置くことを特徴とした。これには、抽象表現主義などが含まれるという。
朝、いまだ一人歩くクルモン。疲れて倒れ込むと、何とベヒーモスが停車。ベルゼブモンはクルモンに気付いているはずだが、立場の異なる今、なぜか言葉もなく危害も加えず走り去っていく、時は今ではないとでも思ったか、一安心。クルモンは、かつてのインプモンだと気付くはずもなく。
リョウが、下り階段を降りるという。RW球は上にあるのだが、この程度の不条理にリョウは慣れてしまっているよう。下っていく一行。この階段の構造は、「メトロポリス」(1926)的かもしれないと小中氏。「メトロポリス」は、1926年制作のモノクロサイレント映画。制作時から100年後のディストピア未来都市を描いたこの映画は、以降多数のSF作品に多大な影響を与えたという。
クルモン、ダストパケットが珍しく、転げてついていく。挿入歌「くるっっくるクルモン」。テイマーズのアイドルらしい歌、確かしゃべる人形も発売されていたと思う。小中氏「全く異例の事に、ただのBGMではなくミュージカルとして演出されている」。どこからともなくデジノームもついて来て賑やか。クルモンが通った跡は、眺めていたウッドモンたち(杉野博臣さんら)をジュレイモンへと進化させる。その輝きは不幸にもマクラモンの目に留まる。
この曲はキャラソンではなく番組開始時から放送された玩具のCMソングのロングヴァージョンだという。そして、夏映画の「トモダチの海」のカップリング曲としてリリースされたという。
階段を降り切って、なるほどあの荒野に着いた一行。急ぐマクラモンを目撃し、そちらへと向かう。小中氏「ここは痛恨のチェックミスだった。マジラモンに乗ったマクラモンを目撃するのは、タカトパーティーはこれが初めてなのだ」。
マクラモンが近づいて、だがクルモンは大地の裂け目に一人転落してしまう。サブタイと違う;
マクラモンを強い敵と認識したサイバードラモン、もう抑えが効かない。強い敵がいると、リョウの声も耳に入らないという。無謀に見えた挑戦、レオモン・進化したガルゴモンとグラウモン(DWで初スラッシュ)も加勢するが、結局はリョウのスラッシュした「キング・デヴァイス」で巨大化し、難なくマジラモンを倒してしまう。このいわゆるキラカードは、真に強いテイマーだけが使いこなせるという。まさに大活躍。興奮冷めやらぬサイバードラモン、次なる敵を求めて自分の本能が満足されるまで戦い続けるデジモンだ、とリョウ。一行に希望を託し別れを告げる。ルキへの一言も残して。
小中氏のブログより「この終わり方を見ると、リョウの登場はここまでで、2話のみのゲストとしても成立している。というか、後世当初はそういう意図だったかもしれない。しかし、これも後出し設定だったのだが、ウィズの北川原参からジャスティモンと言うキャラクターをどうしても出したいという要望があって、それはリョウとサイバードラモンの究極進化だった。(後略)」。まさか最後までメインを張るキャラになるなんて驚き。この話がなければゲストキャラで終わっていたという事。

次回予告:いよいよベルゼブモンが本格始動!期待vファイナルコールはタカト。

(2022/1/16 記)

 

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