デジモンテイマーズ第31話感想

デジモンテイマーズ第31話「ガードロモンとの友情!僕も戦うテイマーヒロカズ」感想

脚本:浦沢義雄 演出:吉沢孝男 演出助手:地岡公俊 作画監督:浅沼昭弘 美術:須和田真 (2001/11/4 放映)

タイトルコールはもちろんヒロカズ。さて、ヒロカズの一人称は「僕」だっけ?
小中氏のブログより「浦沢さんという存在を意識してはいなくとも、「巨泉×前武ゲバゲバ90分」とか「カリキュラマシーン」などのナンセンス・ギャグは子どもの時分に親しみ、その構成に関わられていたのだと後になって知ってみると、私は自分の認識よりも随分「浦沢節」に親しみ、ギャグは苦手なれども後輩脚本家となったのだと思う。/今話は、タイトル通り、ヒロカズがガードロモンとパートナーになる話、というオーダーで、タカトとジェン、テリアモンがいない、という状況です、程度の縛りだったと思う。/21話「私のレオモン様」の後、樹莉の家庭が紹介され、小料理屋の娘というシチュエーションに、浦沢さんは何かインスピレーションを得たのかもしれない。大酒食らいという設定のオロチモンが敵役に選ばれる」。という事は、それ以外は浦沢氏によるアイデア、エピソード、浦沢節だという事。巨泉云々は、私も見ていたクチだ。
せっかく揃った一同がまた離散、たどり着いたエリアでゲコモンがオロチモンに支配されるいきさつ、アンドロモンの孤軍奮闘と退化・ヒロカズとの交流、さらわれたジュリが勝利にこぎつけるいきさつが描かれる。小中氏「いつもはサブタイトル・バックはキャラ表の絵をパースをつけて動かすだけなのだけれど、この歯を剝いたヒロカズの絵柄は描き下ろしな気がする。さらにエフェクトまでつけられた豪華版。当然コールもヒロカズ」。それは知りませんでした。豪華版v
捕えられたクルモンは、頑丈な檻の中、しょんぼり。その果てに見える光る構築物は、デーヴァの城なのか。小中氏「この「神の領域」は、違っていたら恐縮だけれど、貝澤さんと渡辺さんがヴィジュアル化されたものだと思う。私は抽象的な概念図を示しただけだった。/今話の須和田さんの美術は、テイマーズでは珍しく透明水彩を基調とした素朴なテイストに仕上げられている」。
タカトたちとはぐれた一行荒野を行く、BGMは「行き交う人々」。クルモンを案じるジュリ、クルモンが大事な存在ならおそらく大丈夫、とレオモン。
ジュリが「ルキちゃん」と呼ぶと、ちゃん付けは園児じゃないんだからと憮然としたルキ。ジュリが謝ると笑顔で「ジュリちゃん」と嫌み、膨れるジュリもまた笑顔に。男子も安堵、レナモンも珍しく笑顔。こんな小さなやりとりに女子特有の空気が感じられる。小中氏「我々は樹莉の「留姫ちゃん」呼びに慣れていたというか、麻痺していたのかもしれない。浦沢さんから逆に修正されたという」。以前の認識は「ルキはジュリにだけはちゃん呼びを許している、それだけ親近感がある」だったが、脚本によってそれが更新された。
心細いギルモン、ケンタがテイマーになってやろうかと提案するも、ギルモンのテイマーはタカト、と拒否。「遠慮する~」て、よく難しい表現使えたね。
いつもの荒野かと思ったら、地面が崩れ一同どこかへと落ちていく。一人スカートのジュリがスカートを押さえて落ちてゆくのがポイント。前話とはまた違う、森の水辺。ルキをレナモンがキャッチ、ジュリをレオモンが、そして直に落ちたヒロカズの上にさらにケンタとギルモンが落ちて、ご愁傷さま。見上げながらRW球に叫ぶギルモン「タカト―!」。小中氏「この野沢さんの叫びは本当に心がこもっていて、胸に響く」。
タカトたちはまだ光の柱の中。てっきりジェンとは別の柱のはずと思ったら一緒。モーマンタイ、ってどこが…;
ギルモンが水を飲もうと思ったら、向こうから大きな声がする「オロチモーン!」。走る一同、葦をかき分けたそこには「オロチモン、出て来い」と池に大きな石を投げ入れるデジモンがいた。足音に気付き振り向くデジモン、敵か味方か。ひとまず臨戦態勢に入るレナモンとレオモン、テイマーじゃないのにギルモンを推すケンタ。ギルモン、自分の意志で臨戦態勢に。
レオモンがオロチモンとは誰だと聞くと、この世界を支配する強きデジモンだという。そのデジモンは、「自分で言うのも恥ずかしいが、正義のアンドロモン!」(梁田清之さん、無印と同じでうれしい)と名乗る。効果音、シャキッ。ルキのDアークが表示、サイボーグ型完全体。
すると池の水が盛り上がり、オロチモン(小村哲生こむらてつおさん)が現われる。子どもたちは逃げ、三体は身構える。アンドロモンがガトリングミサイルを発射するも効果なく、オロチモンに投げ飛ばされ気絶。ジュリのDアーク、「オロチモン、完全体、必殺技はアメノムラクモ」。なぜだかジュリだけを見つめるオロチモン、他の子は引き下がり、レオモンが応戦体制、そこでなぜかオロチモンは哂って池へと沈んでいく。
アンドロモンのもとへ駆け付けるヒロカズ。手当てをしたいが一体どこで。そこでルキが森の向こうに煙を見つける、集落があるのだろう。
タカト、ジェン、テリアモンは光の柱から脱出を試みる。勢いつけて、柱の外へと。
煙を出していたのは酒蔵。連れてきたアンドロモンを横たえて、中を覗くと。そこではゲコモンたちがダストパケットで酒を造っていた。ジュリが酒と気付く。小料理屋の娘だからアルコールに敏感なんだそう。工場長のゲコモン(高戸靖広さん)が現われ、アンドロモンの手当てを打診すると、断られてしまう。その訳を「聞きたいかゲコ?」ギルモン「聞きたいゲコ」(かわいい笑。
平和だった頃、ゲコモンたちは歌を歌って過ごしていた。しかしオロチモンが空から降ってきて酒造りを強要した。無類の酒好きのオロチモンのせいで号泣の末平和のため仕方なく酒造りを始めた。定期的に池まで酒を運び、オロチモンに収めた。言いなりにならずに戦おうというアンドロモン(メカらしい効果音)、ゲコモンは賛同せず、独り戦うことに。しかし負け続け、被害の後始末をゲコモンがする羽目に。だからアンドロモンに関わりたくないと。これはごもっとも。
しかしヒロカズは食い下がる、手当てはよそでするから酒とダストパケットを少しだけ分けてくれと頼み込む。折れて了解する工場長。
ヒロカズが傷に酒をかけると、痛みにうめくアンドロモン。これが消毒となり、ダストパケットは化膿止めになるという。ジジモンは燃料に使っていたし、酒の材料にもなり、薬にもなるというダストパケット、データのクズとは言え便利。相手が強いと知ってて一人戦いを挑むなんてと、アンドロモンに思い入れるヒロカズ。さてアンドロモンは消耗の末退化しガードロモン・成熟期に。必殺技はディストラクション・グレネード。小中氏のブログより「何故か今話でこの技を披露しなかった。我々がヒロカズのパートナーをあれこれ考える中で、デジモン図鑑を見ている内に、ガードロモンのディストラクション・グレネードを撃っている渡辺けんじさんのイラストを見ていて(超絶に可愛い)、どうしてもこれをアニメに出したいと考えての選択だった。第三部では勿論この必殺技は披露される」。私はヒロカズのアームバンドの色から、似た色のガードロモンが選ばれたと思っていたが、こんな裏話があったとは。なべけんさんのイラ、確かに可愛いの多くて好き。傷も治ったようと、喜ぶルキ。
突如、オロチモンの尾っぽがジュリを捕まえる。追うレオモンと一同。しかしヒロカズは気がついたガードロモンの声を聞き立ち止まる。
ジュリを追って池に飛び込み泳ぐレオモンだが、火炎を吐かれて近づけず。「レオモン、私は大丈夫!小料理屋の娘だから!酔っぱらいの扱いには慣れてるから―!」レオモン「そういう問題ではないと思うんだが」。ウケる。浦沢節全開。小中氏「ストーリー・ラインは日本神話そのものなので、稲垣浩監督の「日本誕生」は先ず挙げられる。しかしドラマとして見ると、古典的な西部劇、或いは時代劇に原形があるのかもしれない」。「日本誕生」は、1959年公開の邦画、東宝映画千本目の記念作品で、主演は三船敏郎。「古事記」「日本書紀」に基づいた日本創世の物語の映像化作品。日本武尊を主人公とし、単なる神話の映像化ではなく、登場人物に現代的な喜怒哀楽を持たせた人間ドラマとして描いているという。
オロチモンの住処に連れ去られたジュリ。特別な理由があると思いきや、ただ酒を注げというだけ。小中氏のブログより「とは言うものの、この描写は現代では危ういかもしれない。児童労働だとか、そもそも誘拐だとか、だがそんな事をフィクションが気にしてはならないのだ。「シンデレラ」すらも禁書にするかの世情には深く憂慮を感じる」。ジュリが言われた通り酒を注ぐと、「嫌じゃないのか」とオロチモンが聞く。連れてきておいて、そんなこと気にするなんてなんか変。何を遠慮しているの。ジュリは、うちってそういうお店なのと答える。首が盃を奪い合うと、怖くないのか喧嘩はダメと叱りつけて、順番に注ぐ。なるほど、酒飲みの扱いに慣れているのは本当。全部の首を酔わせて弱くする作戦を思いつく余裕もある。そうとなれば進んで酒を注ぎ、機会を待つジュリ。
悔しがるレオモン、オロチモンはただの酔っぱらいではない、と。さすがにその通り。何とか助けたい。
一方ヒロカズは、大きな葉っぱでガードロモンを扇いでいる。ガードロモンが目を開き、俺のせいで捕まったと嘆き、起き上がろうとするがまだ無理。看病ついでに名乗るヒロカズ。するとガードロモンは、助ける方法があるという。ヒロカズは驚き、皆に知らせに行く。助ける方法に苦渋していた一同、それに飛びつく格好に。
酒造にて、蔵出しの合図の銅鑼を鳴らすゲコモン。皆で樽を二つ運んでいく。その先に立ちはだかるはガードロモン、一同を連れて。友だちがさらわれたので助ける協力をしてほしい、と真摯に頼む一同。戦いに協力はできない、とゲコモン。そこでガードロモンが問う、オロチモンのために酒を造る事が本当に平和を愛することなのかと、主張は変わらない。ゲコモンの平和とは、楽しそうに歌うことだと思っていたのにと厳しい。その言葉に、動揺したゲコモンたち。工場長は一転その動揺ぶりに動かされ、協力を約束。話はついた。ガードロモンは樽から酒を抜いてくれと。どんな作戦?
小中氏「拒否をしている相手に対して、同じ依頼をせねばならないとして、普通のライターなら段取りをそれらしく組むか、アクシデンタルな要因で承諾せざるを得ない設定にするところだが、「お願いします」と愚直に頭を下げる、この、日本人なら当たり前にする事を浦沢脚本はストレートに見せてくれる。真心を伝えるというコミュニケーションで、頭を下げるというのは日本人にはとても大事なものなのだ」。愛されてます、浦沢脚本!
ゲコモンの手で船で池を運ばれる大きな酒樽二つ。
オロチモンの首は酔いつぶれ寝入っている。ジュリ「二日酔いには大根おろしのジアスターゼが効くのよ」笑顔で小料理屋の豆知識を披露する余裕あり。しかし、黒い首だけがいくら飲ませても酔わない。後でわかる事だが、他の七つの首はダミーで再生可能という事。
酒樽が到着、樽の中にはデジモンと子どもたちが潜んでいた!
小中氏「何故最後を分けたかと言えば、単純にアクションが見事だからなのだ。スマートフォンでこのブログを見ている人には、どの画像も同じサイズに見えているだろうが、PCのブラウザでは「ここ」というカットは大きいサイズにしている。本エントリは大きい画像が立て続けに多くなっている」。
飛び出て攻撃するレオモンとレナモン、樽を壊して出てくるガードロモンとギルモン。助けに来ると思ってた、たくさんお酒飲ませておいたとジュリ。しかしゲコモンによると、オロチモンは飲むほどに強くなる、と。逆効果;残念だったなと笑うオロチモン。
完全体相手に、首を着実にやっつけていくレオモンたち、獅子王丸、レナモンのキック、ファイアーボール!しかし相手は尻尾で打撃を与えてくる。オロチモンはその首はダミーだと。首が再生、大ピンチ!身構えるおのおのの芝居がそのキャラらしい。
あたしのせいと自分を責めるジュリ、しかし心はテイマーのヒロカズが叱咤激励。ガードロモンの言う他の戦い方…それは果たして、ジュリのDWで初の本物のスラッシュ!「レディーデビモン」のカード。閃光が光る勇ましいスラッシュバンク。女子ならではの選択に、ヒロカズとケンタは唖然。レディーデビモンは、高貴なる女性型堕天使デジモン。カードの効果で、大きなパワーを得たレオモンが立ち上がり、赤い目となって猛然と攻撃「プワゾン!」。相手の持つパワーをダークエネルギーと相転移し、敵を内から滅殺する必殺技。断末魔を上げその黒い首もろとも爆発し量子崩壊。レオモンはロードせず。
ジュリに声をかけるレオモン、テイマーとして初勝利、勝ったと喜ぶジュリ、おめでとうとルキ。ケンタは早くテイマーになりたいと。ゲコモンたちが勝利に沸き歌いだす、ああ平和よ。
ガードロモンに微笑みかけるヒロカズ、すると何と光るDアークがヒロカズの手もとへ!友情の証、5番目のテイマーはヒロカズだった。ガードロモンに飛びついて(効果音v)喜ぶヒロカズ。驚くルキ、祝うジュリ。ひとりぼっちかよと嘆くケンタ。ご愁傷さま。ギルモンはタカトに思いを馳せる。
光の柱から飛び出した先は深い水。海?さあタカトとジェン、テリアモンどうなる?!
小中氏のブログより「ヒロカズがテイマーになる場面は、吉沢さんが本当に盛り上げて演出してくださった。判っていても、少し涙ぐんでしまう。/私が嬉しかったのは、浦沢さんが樹莉というキャラクターを気に入ってくれて、使い倒してくれた事だ。お荷物なテイマーとして冒険に加わったのではないと、この回でしっかり見せてくれたのだから。レオモンとの絆も、とても深めてくれている。/冒険に加わる賢者的なポジションで、レオモンはテイマーズでも本当に際立つキャラクターになってくれた。/だから、その二者に今後担わせる運命を想定する私からすると、心痛む回でもあったのだけれど。/打ち上げパーティーで、一言だけ浦沢さんに挨拶をした。一緒に仕事させて貰えて嬉しかったです、と。浦沢さんは穏やかに笑っていた」。テイマーズ最後の浦沢節、ありがとう。

次回予告:タカトたちが着いたのは、息ができる水の小世界。そこには訳アリの男が居た。ギルモン誕生の謎とは?ファイナルコールはタカトとジェン。

(2022/1/26 記)

 

          もどる