デジモンテイマーズ第33話「テリアモンはどこ!小春デジタルワールドへ」感想
脚本:吉田玲子 演出:今沢哲男 作画監督:伊藤智子 美術:渡辺佳人 (2001/11/18 放映)
サブタイトルコールの背景に早くもシウチョンとアンティラモンの姿が。幼いシウチョンがテイマーになったいきさつの裏話を、やはり書かずにはおれまい。小中氏のブログより「テイマーズは、当初のテイマーとパートナーを三人に絞り、徐々にテイマーを増やしていくプランで作っていたが、ではどこまでテイマーが劇中で増えるのかについては、明確には決めていなかった。タカトが淡い憧憬を寄せている(恋愛などという段階には程遠い)樹莉(私の注釈:え~と私にはベタぼれとしか見えんのですが)、遊び友達のヒロカズとケンタ、くらいかなぁとは内心思っていた。リョウの話は早くから出ていたし。/前作の「デジモンアドベンチャー02」のラストで、未来の子どもたちは皆、それぞれにパートナー・デジモンがいる様な壮大なヴィジョンが提示され、感銘を受けた(テイマーズの企画立ち上げ時には知らなかった)。(中略)テイマーズは、携帯液晶ゲームから発生したデジモンという仮想の存在に、どこまで思い入れによる実在化を描けるか、に私はフォーカスした。だからパートナーとは乖離も起こるし、相克もある。シリーズ初期、タカト以外のテイマーはそれぞれな関わり方をデジモンとしていた。/デジモンが現実世界に現われるのは、本来起こってはならない事だった、というのがストーリーの後半では大きな意味を持つことになる。だから、テイマーはシリーズ中ではあまり多く出せないだろうと内心考えていた。/ところが放送が始まって、オープニングを見た私は喫驚した。非常に多くの子どもたちがテイマーになるかの様に描写されていたからだ。何より私が驚いたのが、小春までもがD-Arkを掲げていたことだ。オープニングは23話までとそれ以降で色々と細かく変わっているが、初期はこうだった。色が落とされてはいるが、樹莉、ヒロカズ、シウチョンまでは確認出来る。/私がこの事を貝澤さんに問うと、「いや、シリーズが終わった後の場面かもしれないし」という答えだった。しかし、私はそういうシリーズの「その後」は全く考えてはいなかったのだ(最終回がどうなるかは当然、漠然とした形ではあるが想定してあった)。/だが、私が企画時から協調していたことの一つに、デジモンテイマーは、なりたいと強く願った子供が慣れる、選ばれた子供なのではない、というコンセプトが、貝澤さんにこうしたイマジネーションを生んだ要因なのかもしれないと納得した。/ともあれ実際のストーリーの中で、シウチョンはテイマーになるまでを描く必要があるのだと、この時に決めた。/後半のオープニングではっきり色がついた。タカトの後方にいた少年はケンタに描き換えられている。/しかしシウチョンをどうやってテイマーにすればいいのか…。シウチョンはテリアモンが大好きなのに…。待てよ、テリアモンには双子の様なデジモンがいたではないか。テリアモンが生まれたのは02の映画「デジモンハリケーン」。/この脚本を書かれた吉田玲子さんは、無印ではローテーションに入られていた。その後、映画版の担当に移行してシリーズからは離れていた。テイマーズのデジタル・ワールドで、一本吉田さんに書いて貰いたい、とは関プロデューサーは早くから表明していた。と言うことで長い前書きになってしまったが、33話はこうして誕生した」。テイマーシウチョンは、
オープニングありきだったんですね。確かにあのOPは、02最終話「全ての人にパートナーデジモン」を思わせる人数です。
シウチョン願いかなってDWへ、アンティラモンとの出会いと絆、マクラモンとのバトル、人間の意思を汲み進むアークが描かれる。
アークはまだ水の宇宙を進んでいる。どうやら浮上しているらしい、四聖獣の領域か?
ジェンがテリアモンの耳をもてあそぶと、失敬と抗議するテリアモン。シウチョンは好きだが、愛玩されるのは苦手という事。テリアモン、シウチョンに思いを馳せる。
タワマンの大きな窓、秒針の音、ぼおっと窓を見やるシウチョン。テリアモン不在で虚しさと寂しさ。できる事と言えば、ぬいぐるみテリアモンの真似くらい。鳩時計が時間を告げる。リビングはあまりに広く、リー家が金持ちだとわかる。麻由美(安達まりさん)が注意しても聞かず。父のトイレ内での新聞読みを指摘、一本取られたジャンユー。シウチョンを連れて新宿中央公園へ。実は外出は山木の呼び出しがあってのこと。
BGMは「行き交う人々」。上空を飛行船が飛んでいる。私が子どもの時分は飛行船が広告としてよく飛んでいたものだが、20年後となるとまず見かけなくなった。放映は11月、枯葉が舞って。遊び盛りのシウチョンにはやはり遊び相手が必要なよう。遊具で遊ぶシウチョン、一方大人はシリアスな会話。自らを進化させる人工知能を創ろうとしていたワイルドバンチ。だが神の領域を侵そうとしたわけでは。しかしSHIBUMIの考えは異端だった。真の生命体と人工的な生命体のどこに違いがあるのかと。SHIBUMIが正しいのか、今となってはわからないとジャンユー。
飛行船を追って滑り台に昇るシウチョン、その上空に何と≪ゾーン≫が出現。慌てるジャンユー、いぶかしむシウチョン。上にはアークに乗ったテリアモンが確かに見えた。思わずテリアモンと叫ぶシウチョン。ここはRWとDWが重なっている。DWに行きたいと願うシウチョン、そしてDWに呼びたいと思う誰かがいる。ジャンユーが駆け上るが転倒、山木も巻き込んで。ダメダメ大人たち。そしてシウチョンは何なくDWへ召喚されてしまう。飛行船は去り、ゾーンも消えた。
自分を責めるジャンユー、しかし山木は何か行かねばならぬ理由があると。幼いからこそ余計に。
RW球が小さく見える荒野、地面にはデジ文字で「スーツェーモン」と書かれており、ここはいきなり神の領域。シウチョンが着地、綺麗な月のように見えるRW球。
バクモンも、デジノームも、キウイモンも、ダストパケットも、シウチョンの遊び相手はしてくれない、泣き出すシウチョン。テリアモンと兄の事を大声で呼ぶ。それはテリアモンの耳に届いた。間違いなくシウチョンが近くにいると、テリアモン。アークは、なぜかそこで方向転換する。もしやシウチョンの意思を汲んで?よく走るなあシウチョン、活発な子だね。
水の音がかすかにする。シウチョンが向かってみると、そこは水場とは言え断崖絶壁と滝だった。危うく転落するところだった。不思議な建物があり、橋のようなものもある。橋(橋ではなく浮いた石だった)のたもとへ行ってみると、大きなうさぎが門のところにいた。興味津々で近づくシウチョン、さて。
小中氏「ところでテイマーズでは、デジモン文字はあまり用いていない。テイマーズ設定のデジタル・ワールドはインターネットと同義なので、デーヴァがメッセージを送る際には機械語を用いた。/しかし進化バンクなどでは、携帯ゲーム以来にそのバックグラウンド設定のデジモン文字が装飾的に使われていた。シウチョンが落ちた場所のデジモン文字は多分、渡辺さんが設定されたのだと思う」。
ブログより「B-Part前半は、一人の幼女と一体のデジモンだけで展開されるという、テイマーズではかつて有り得ないシチュエーション。タカトらのインサートは少し入るが。/今話で描かれるシウチョンは理想化された子どもではなく、適度に我が儘だし適度に功利的。しかし根本は優しい子供なのだと誰しにも認識されるだろう。/そして、そうしたシウチョンが何故必要だったのか。何故デジノームはアンティラモンをデーヴァの座から降ろし、シウチョンのパートナーに選んだのか─」。
大きなうさぎにはしゃいで挨拶をするシウチョン。言葉はわかるようで、無言でうなずくうさぎ。シウチョン、目線がうさぎと同じもしくは下に見ている;硬い言葉で進めない、帰れと言ううさぎ。しかしシウチョンは帰り方もなぜここへ来たかもわからないと。困惑するうさぎ。ずっと上向くのが疲れるからと、シウチョンはうさぎをしゃがませることに成功。「ここは四聖獣の領域なり」。名を聞くと、アンティラモン(多田葵さん)と名乗る。シウチョン、モンがつくからテリアモンと同じ(デジモン)という認識。シウチョンも名乗り、またぬいぐるみテリアモンの真似。一緒にテリアモンを探してとお願いし、仕舞いには駄々をこねて言うことを聞かせる。アンティラモンは不幸にも人間の子どもの扱いには慣れず、根負けしてシウチョンに振り回されっぱなし。
アンティラモンの頭に乗せてもらい、ご機嫌なシウチョン。デジノームも喜ぶ。振り落とされて死んだフリと、芸が細かい。ケチ呼ばわりして再び乗せてもらい、テリアモンを探す。
アークにて、ジェンはアークが乗ってる人間の意思を汲むんじゃと推察。じゃあ願えばシウチョンのところへ行けるか?きっと泣きべそかいてると、テリアモンは案じる。
ところが当のシウチョンは楽しくてアンティラモンを歩かせ、走らせ、跳ばせ、好き放題。アンティラモンの身体能力の高さが見える。さすがに息を切らすアンティラモンを気遣い、腹ばいになって休憩を取る。この姿が何とも可笑しい。喉乾いたしお腹もすいて。シウチョンは食べ物を探しにいく、と一人走っていく。やさしいとこもあるのね。これは好機、アンティラモンはおもむろに立ち上がり、南の門へと戻り始める。
小中氏「デジタル・ワールドでは、その環境に慣れさえすれば食物は摂らなくても良い筈なのだが、アンティラモンが腹を鳴らせたのは、まだ環境に慣れていないシウチョンに共感したからだろう。/最後に登場するデーヴァ、アンティラモンはロップモンの進化先。02映画は基本的に呼称は幼生期(私の注釈:幼年期のこと?)のチョコモンで通され、暗黒進化したウェンディモンが大暴れした後にケルビモンへと進化の過程で登場したくらいだった。/ロップモンとテリアモンは二体合わせてロッテリアとのコラボで作られた、というネットの俗説は否定されている」。てっきり俗説を信じていました。
クルモン奪還に成功したもののデジノームによって逃がされるという不手際をしたマクラモンは、神の領域にて謹慎している。そこへやって来たのは無防備なシウチョン。神に献上するため捕らえようとするマクラモン。嫌がるシウチョンの大きな声が、アンティラモンとアークにも届いた。
急いでマクラモンのもとへ走るアンティラモン「その娘、放せ!」。すっかり情が移ってしまったよう。シウチョンは暴れ、噛みついて逃れる。まさにそこへアークが到着。着陸の機能はないようで、それきりアークは全部粉砕してしまう。小中氏「これ凄いな。手描きの2Dの船体が3Dフラクタルで壊れていくというトリッキーなデジタル合成」。シウチョンも呆然。
しつこいマクラモンに、アンティラモンが攻撃を開始、デーヴァなのに…。タカトたちは何とか無事、テリアモンがシウチョンを目撃。感激の再会をぶち壊すマクラモン、阻止を試みるアンティラモン。マクラモンの投げた宝玉をまともに受け倒れるアンティラモン、痛みを案じ泣き出すシウチョン。もはやマクラモンの敵となったアンティラモン、手加減はなし。腕を斧状に変形、硬化させる宝斧(パオフー)を発動し宝玉を叩き割る。裏切り者と報告すると捨て台詞を残してマクラモンは退散。
Dアークにアンティラモンのデータは表示されない、しかも残る干支はうさぎ、デーヴァに間違いない。隣にいるシウチョンに危険だと告げ走り寄るが、何と虚空から現れたのはシウチョンのピンク色のDアークだった!これが何なのかも知らない、まさかのシウチョンがテイマー、しかもデーヴァの!
すると、マクラモンの報告が通ったようで、アンティラモンは神の領域から来た赤い光に包まれ任を解かれ、ロップモンに退化する。誰より驚いたのはテリアモン。テリアモンの色違いでそっくりになったロップモン。互いに見比べる二体。流れるのはキャラソン「小春とテリアモンのおっかけっこデュエット」のインスト。ロップモンを無理やり抱きしめるシウチョン、引くテリアモン。シウチョンがバランスを崩して転ぶ、大泣きするシウチョンに笑う一同。ロップモンは汗。RW球は遥か遠くに。
小中氏「改めて見ると、吉田玲子さんは自分に何が期待されているかは重々承知のうえで、本作を受けられた。そして期待以上のシナリオを書かれたのだからプロとしてこれは凄い事だと思う。ワンポイント・リリーフの難しさは、私もよく知っている」。吉田さん、他のアニメも良くて、私も信頼しています。脚本が吉田さんだと見る気になります。
「テリアモンとロップモンは、前者は犬のテリア、後者はロップイヤーうさぎと実は別種。だが双子の様に似るという事もある─という解釈。02映画では、チョコモン時代を能登麻美子さんが演じたが、テイマーズでは多田葵さんがどちらも演じる─という事に誰も疑問を抱かなかった。アンティラモンは変えても─とも今は思うけれど、デジモン・アニメは進化前後でも同じ声優の方が演じるのが慣例なので、まあ有り得ない選択ではあった。だからデーヴァにしてはあまりに無警戒なアンティラモンも、シウチョンとの出会いは運命的だったのだと思える。/と言うか、テリアモン大好きなシウチョンが新たにテイマーとなるとして、他のデジモンで成立し得たかと思うと、もうこれ全部最初から決まっていたんじゃないかと、という気がしてくるのだが、私の記憶ではやはり、オープニングの絵柄で考えを変えたのだ。貝澤さんはもしかして知っていたのかもしれない。けど当時のことを聞いても、貝澤さんは結構忘れているという。/今話の事象自体は極めてロジカルで、前話で魔法の様な出来事─、D-Arkが出現したり、ブルーカードが出現するといった現象はデジノームの、非言語的なコミュニケーションだったと説明されている。前半、シウチョンの到着を喜ぶデジノームの場面が、ちょっと多すぎるのではと思わないでもないのだが、ロジカルな解釈をしながら見る視聴者は、リアルタイムではあまり多くなかったのだろう。今沢さんは表現が気に入られたのか、盛んにデジノームを登場させてくれた。/デジノームは≪神≫の敵なのか、と言われれば、そういうポジションではないと言うしかない」。
「※多田さんが二役で別にクレジットされている。野沢さん以外では初。バクモン、キウイモンのクレジットがない。塩味さんだと思うが…」。そう、端役でもできればクレジットが欲しいです、ファンとしては切実に。
次回予告:レオモンがベルゼブモンに殺される…大ショック!どっちも好きなのに。ファイナルコールはタカトとジュリ。
(2022/1/28 記)