デジモンテイマーズ第38話「動き出した真の敵!四聖獣の戦い」感想
脚本:まさきひろ 演出:吉沢孝男 演出助手:地岡公俊 作画監督:山室直儀 美術:徳重賢 (2001/12/23 放映)
デジモンで言う四聖獣とは。東西南北を守護する超究極体デジモンの総称。デーヴァと呼ばれる完全体デジモンたちを部下にしている。四体に共通している特徴は、DWで起きている出来事を全て見通せるとされる四つの目と、身体の周りに12個のデジコアを表出させている。四聖獣の頂点に立つのが「大地を司る」ファンロンモン。元ネタは中国神話の四神。
今話は四聖獣・水野・ロップモンによる設定の説明に割いた回で、その理解に力を費やし、感想があまり思い浮かばない。書くとすれば、タカトが業を煮やしてデュークモンへ進化した事くらい。
小中氏のブログより「前半は、スーツェーモンの逆襲がアクション満載で描かれ、神の怒りとその力を見せつける。しかし後半からは、これまで仄めかされてきた点と点を繋いで、状況が開示される。/SHIBUMIが32話以来に登場。四聖獣という言葉をテイマーズで最初に発したのがSHIBUMIであった。/まさきさんがここで子ども達とパートナーを一挙に集め、設定を視聴者にも判って貰える様な脚本を担当。(後略)」
退けたかに見えたスーツェーモンが復活、「神の裁き」を展開。地面ごと子どもたちが吹き飛ばされる。サブタイトルコールはとても力がこもっており「真の」が裏返っている。
都庁舎、ワイルドバンチが子どもたちを救うため作業をしている。デイジーが提示した設計プラン、小中氏「これはグラニから逆算して中鶴さんがデザインされたのかな?」。ヒュプノスの施設を使っても処理は遅く、世界中の仲間に声をかけ協力してもらっている。タオ「この「箱舟」で助けてやる、だからそれまで頑張ってくれ!」と。
ルキのスラッシュ、タオモン進化。散らばった子どもたちを結界へと保護する。しかしスーツェーモンの攻撃をかわすので精一杯。たまらずギルモンとテリアモンが結界を飛び出し反撃するがかすりもせず、下の海へ落されてしまう。タカトはスーツェーモンに問う、どうして戦わなきゃいけないの?しかし聞く耳持たず、罪を思い知れ、と攻撃が下る。ピンチのギルモンとテリアモン、炎を止めたのは青い稲妻だった。
四聖獣とデーヴァについて小中氏「当初の設定では、最終敵に四聖獣というプランだった。だが私はデジモン対デジモンの戦いをエスカレーションさせるのは気が進まなかった。「設定」次第で如何様にも強化出来る存在とヒーローが、パワーのインフレーションを進めていけば、デジモン・ファンが知っている四聖獣をも矮小化させる懸念もあった。/デーヴァが三体ずつ四聖獣に仕えているという設定も、中ボスを多く出すとストーリーの消化すら困難になる。だからテイマーズでは全てがスーツェーモンによって生み出された精鋭という改変をした。ゲーム用の設定というものは、必ずしも映像物語の作劇には不向きな場合があるのだ、という事に、2000年の私は確信的に考えていた。その私の改編案を受け容れてくれた諸関係者には、今さらながらも感謝している。/「神」という存在を、14話から繰り返してきたのは、今話の様なデジモンの神威を演出する為であったが、最初から「スーツェーモン」といった固有名詞を出したくなかったというのもある」。それでこうした四聖獣とデーヴァとなったのか。
青い雲とともに現れたのは、スーツェーモンの巨体以上に大きな四聖獣、チンロンモン(小杉十郎太さん)だった。その姿は南大門にいるヒロカズたちにも見えて。チンロンモン、聖獣型デジモン、究極体。スーツェーモンの支援に来たのではなかった。にらみ合う二体、チンロンモンの現れた目的とは。炎と雷が飛び交い、二体が戦っている。
無益な殺生は控えよというチンロンモン、先にけしかけたのはデーヴァの方、なぜそうまでして強さを求めるか。スーツェーモンは、進化して真の敵と戦うためという。ロップモンは、真の敵とはデジモンでも人間でもデジノームでもない未知の存在と。チンロンモンは言う、真の敵を鎮めたいなら進化せぬ事だと。デジエンテレケイアをデジモンの姿に変え隠したのもチンロンモンの仕業だった。デジモンは争い進化する、人間の手を借りずにとスーツェーモン、デジモンが人間と共に進化できることもあるとなぜ考えぬとチンロンモン。それは邪道な進化とスーツェーモン、話は平行線。
スーツェーモンは、もしその進化が正しいのなら我を倒してみよ、と。どうしてわかってくれないんだ!と絶叫するタカト、思わず結界の外のギルモンへ向かう。それで導き出された究極進化、デュークモン!
小中氏のブログより「クルモンが、進化の輝きそのものがデジモン化した存在で、元々は無機的なるエネルギー体デジ・エンテレケイアであった。(中略)この用語を持ち出したのが、WIZだったのか私なのか、今はもう覚えていない。恐らくはゲーテの「ファウスト」でホムンクルスを造り出す工程、フラスコの中で純粋生成された生命体であり、あらゆる経験をする前段階で、人生に足を踏み入れる段階─という意味合いでの命名だったと現時点では考える。/フラスコの中で実際に生命が産み出せるやもしれない、と本気で信じられていた時代のロマンと、畏れ。そうした危い存在なのだと、言いたかったのかもしれない。/どうあれ、何故かデジ・エンテレケイアはクルモンというデジモンになって、デジタル・ワールドの表層を彷徨う内に、リアル・ワールドへと飛び出してしまった。そしてそれ以降、デジタル・ワールドのデジモンたちは幾ら敵をロードしても、進化が出来なくなってしまった。/しかし、リアル・ワールドでデジモンに親和性を抱く人間の子どもとパートナーになると、進化が出来る、という伝説が広まっていく、。テイマーズはその時点から物語は始まっていた。/さて、今話のタカトはシリーズでも一、二を争うヒーロー・ムーヴをして虚空に飛び出した」。「タカトがD-Arkから進化する初めての場面。デュークモン進化バンクの冒頭部初披露」。
思わぬ強さにうろたえるスーツェーモン、「デジモンと人間が進化して一体何が悪い!」と迫るデュークモン。吐かれた火炎をシールドで防ぐ、わかってくれないというのなら、倒すだけ!そこへ仲裁に入ったのはまたもチンロンモン。戦うなら、真の敵に向かえと。
別の領域にて、白い城があり、リョウはバイフ―モンの世界ではと。しかし現れたのは背に森を背負った亀デジモン、シェンウ―モン(八奈見乗児さん、85歳から病気療養で休業、2021年12月、90歳で逝去。無印で老ゲンナイを演じている)、聖獣型デジモン、究極体、四聖獣。バイフ―モンの留守でその領域を預かっているという。間近で人間を見られたことを喜び笑う。やはりこのお声は声優界の宝です。
戦意むき出しのサイバードラモン、しかしその感じた気配は、谷底で戦っているバイフ―モンと対する「何か」のものだった。「バイフ―モンに任せておけ。お前に適う相手ではない」とシェンウ―モンに諭されるが。それが「真の敵」?
南大門から朱雀門へ、ガードロモンに連れられ合流するヒロカズたち。ジュリは依然抑うつ状態、「私たち、運命に逆らっているのかも」。何をしたところでレオモンは戻らないし、先が見えない。
ジェンが問う、真の敵とは。チンロンモンは何者か知らぬ、コンタクトしたこともないと。スーツェーモンは、その目的は我らデジモンの抹殺だという、穏やかでない。
チンロンモンによると、DWの創成期からいたらしく、いつの間にかいなくなり、深いところへ潜ったと。チンロンモンが視覚的に見せる、RWから6つのレイヤーを挟んで、DWの物理層に子どもたちが最初に着いたと。つまりは子どもらの動向を把握している。DWが生まれた時はこれだけの世界だった。そこにデジモンの祖先やデジノーム、そして真の敵が住んでいた。しかしいつからか真の敵はいなくなり、DWの外へ自分たちの世界を作ったと。真の敵の脅威がなくなり、デジモンたちは平和となり、進化が進み、DWが拡張して、風の強い谷や歯車の世界など様々な小世界が作られた。ここのBGMは「冒険者たちの戦い」の「代わりなんていない」。そして、デジモンとDWの安定と秩序を司る存在として、最も進化した四聖獣の神の領域が生まれた。しかし、こうした進化は誰かが計画したものでもなく、眠っていた真の敵を目覚めさせてしまった。
谷底の戦いは激化、更に地面が崩れ去る。しかし、リョウたちはいったい何が起きているのかまでは上からでは見えない。
デジモンに進化をもたらすもの、それがデジ・エンテレケイア。スーツェーモンが羽ばたきで岩をどけ、かつてのデジ・エンテレケイアの入れ物を露出させた。真の敵を鎮めるために隠していたという。スーツェーモンは憤る、デジ・エンテレケイアをデジモンに変えるとは戯言も過ぎる!しかしチンロンモンは我にあらず、と。では誰が?!
と、向こうからデジノームに連れられやって来たのは水野悟郎。神の領域で何が起きているのか見たいと思ったら連れてきてくれたと。相変わらず呑気な雰囲気。デジモンたちの敵について問うと。
RWの山あいの病院、そこに水野の実体は居た、バイタル記録装置と脳波計をつけられて横たわっていた。意識はなく、わずかに声が出る、「デ・リーパ―」。
水野によると、デ・リーパ―とはネットワークが生まれた頃に作られた、不良人工知性駆除プログラム。四聖獣が恐れていた真の敵とは、それだった。どこにあっても、ただ一つだけの存在。原始的な知性も感情も持たないプログラム…だったはずと。うつむく水野。
無音で初めて描写される、デ・リーパ―の客観描写。赤い不定形なブロブが集散を繰り返す。ブロブとは、英語における擬態語の一種。あえて訳すなら「ぶよぶよ」「プルプル」「ねばねば」など。
はずというのは。デ・リーパ―に、四聖獣が恐れるだけの何かが起こったのだと。ルキ「何かって…進化?」。
意識が覚醒する水野、「何が起こったんだ!」とともにDWの水野は姿を消してしまう。デジノームも行ってしまう。
谷底はいつしか静まり返る。それを上空から認めたリョウ。
奥底から出ようと必死のクルモン。すると下の方から、赤い物がいくつも上がってくる。クルモンは、それに触れると自分が消える事をまだ知らない。
神たちの正義と悪、敵味方の設定とは。小中氏「大雑把にではあるが、デジタル・ワールドの成り立ちと歴史、構造までが明かされた。それほど子どもでも難しい話ではないのだが、前作までのデジタル・ワールドとは違うので、同じデジモンが出ているから戸惑う視聴者もいたのかもしれない。(中略)スーツェーモンは言わばデジモン原理主義の過激派。一度火がつくと(最初からついているが)その怒りが収まらないが、その行動原理はデジモンという自分たちが護っている仲間の進化と繁栄だ。更に、自分達が一度人間(ワイルド・バンチ)に棄てられたという歴史を知っており、それ故に人間には反感を抱いていた。デジ・エンテレケイアがリアル・ワールドに出奔した事を知るや、自らが再構築したデーヴァを繰り出したのも、彼なりの義があっての行動だった。/チンロンモンは、デジモンアドベンチャーでも登場して子ども達を助けた存在。なのでテイマーズでもそれを踏襲した。/1年のシリーズではあっても、四聖獣という存在の強力さを描くのは難しい。アドベンチャーでは、ダーク・マスターズに封印されているという設定で、チンロンモンのみが登場していた。(だからヒロカズは知っている)/テイマーズで4クール目をそれに割り当てたら、毎週が天変地異を描く様なものだ。バイフ―モンは今話は姿を見せず、スーツェーモンとチンロンモンの睨み合いを軽く描くのが精一杯であった(それでも今話の前半の様な大事になる)。/デ・リーパ―は完全に3DCG。(中略)1970年には最初のコンピュータ・ウイルス《ワーム》が仕込まれ、リーパー(死神)プログラムによって駆除される。/デ・リーパ―そのものは1980年代に生まれたと想定していた。/つまり、このデジタル・ワールドとデジモンたちは、たった20年程の間に急激な進化と発展を遂げていたのだ。ジャンユーらが戸惑うのも当然なのだ。SHIBUMIはそれを期待していたが、しかしその発展に伴って、好まざるものまで進化いたのだという事に気付き始めている。/にしても見応えのある濃い回であった……。」。そういう事で、スーツェーモンとチンロンモンにスポットが当たったのですね。reapは刈り取るの意。「刈り取る者」すなわち「リーパー」とは死神。忌むべきものですね。設定はなるほどわかりました。
次回予告:クルモンを救いたい!タカト、ジェンに続いてのルキたちの究極進化回。ファイナルコールはルキとレナモン。
(2022/2/11 記)