デジモンテイマーズ第45話感想

デジモンテイマーズ第45話「デ・リーパ―に立ち向かえ ゾーン突入」感想

脚本:小中千昭 演出:吉沢孝男 演出助手:地岡公俊 作画監督:出口としお 美術:清水哲弘 (2002/2/17 放映)

デジタル・グライドによって、3テイマーはそれぞれの想いを胸に究極体へ進化する。エージェントと交戦するも、ゾーンは大きな変化はなし。しかもデュークモンがゾーンに捕まってしまう。その中で見たのは人間(とデジモン)は不要、消去と言い切る、ADR-01ジュリの姿だった。
今話の冒頭について小中氏のブログより「デジタル・ワールドから帰還してから暫くは、プライマリ・テイマーの三人とクルモン、インプモンに焦点を絞ってきた。短いターンではあるが、第三部も第一部同様に基本に一旦戻し、テイマーとデジモンの関係性を深める一方で、現実世界を脅かす状況の推移を見せていかねばならない。/究極体への進化はデュークモンは2回披露したが、セントガルゴモン、サクヤモンはまだそれぞれ一度しか見せられていない。/ドーベルモンが伝えに来た四聖獣の力。それは「デジタル・グライド」という、テイマー(一度デジタル・ワールドに来た経験のある)をリアル・ワールドで仮想的にデータ化/メタファライズするものだった。/今話は究極体進化バンクを三階建て(同じCMを二連続放送するという事がかつてのテレビではあって、それを「二階建て」と放送業界では呼んだ)で見せる必要があるのだが、テンションの高い進化バンクを直結させると、その映像の力も色褪せてしまう。緩急の波が必要と感じた。そこで、今話のAct.1は例外的な心象風景描写となった」。状況をいろいろと踏まえてこの構成になったんですね。glideとは「滑るように動く、滑走する」といった意味なので、デジタル・グライドを直訳すると私には意味がよくわからず。
小中氏「前話リプライズの後、さらに前話の終盤がそのままの編集で再現される。アフレコは新規。なのでラスト近くのタカトのテンションは全話より少し低い。何せ今話では導入部なのだから」。こういう裏話、さすがアフレコに随時参加されてるだけあり有用な情報です。
Dアークを掲げる3テイマー、暗転。小中氏「今話は、普通テイマーズでは用いないモノローグを、これでもかと書いた」。
ジェンの独白。兄妹が多かったから、かつては主張をするもっとわがままな子だった。拳法を習っていて、友だちにケガさせてしまったことから、我慢を強いるようになっていた。けど、ぼくとテリアモンができる事を今は─。セントガルゴモンへの進化バンク。
ルキは、男に生まれたかったなどと思った事はない。お父さんの事関係ないと思ってた。レナモンやタカトらと出会って、自分が変わるのが少し怖かった。勝ちにこだわっていたのにどんどん弱くなっちゃうみたいな。でも、私が負けたくなかったのは─。サクヤモンへの進化バンク。
タカトの独白。初めてギルモンと進化した時、何が起こってるのかわからなかった。でも、デュークモンが走る時自分も風を感じてうれしかった。大切な友だち、いつまでもずっと!デュークモンへの進化バンク。
パートナーデジモンや、友だちと出会って、自分は変わった。それが究極体進化につながっている。
小中氏「この導入のモノローグは、進化バンクを効果的に見せる為の措置として意図しており、三人が「証言」しているのは、それぞれの問題意識を言葉にしている。/ジェンはシリーズ初期の穏健な、戦いに消極的だった自分の分析。留姫は、自分の家庭環境がやはり彼女の性格形成の背景にあった事を示唆。シリーズでは触れる余地がなかったが、42話(まさき脚本)で少し父親については言及され、放送終了とほぼ同時に公開された映画「暴走デジモン特急」(まさき脚本/中村監督)は、シリーズと分岐したパラレルな最終話後日談であったが、留姫の父親に存在感が与えられ、留姫の父問題についての落とし所を提示していた(私は春映画=二本目の内容は全く知らなかった)。留姫の心情に限っては、正史だと感じている。/タカトには、背負うものがなかった。テイマーになるまでは。今は多くの修羅場を経験している。だが、タカトの心情を描くなら、デジモンと一体になれた事の嬉しさであり、そして冒険の代償となった仲間の喪失という思い体験であった。しかし、このリレーション・シップが長く続く事の願いについては──。/シナリオでは、暗い空間にスポットライトが当たって、一人一人がモノローグを述べるという、極めて簡素に演劇的な書き方をして吉沢さんの演出に委ねた。丁寧な手書きのグリッドのループが三人に重なっていて、デジタイズされているというニュアンスを非言語的に直感させる演出がされた。視聴者により一層、普段と違うナラティブ(語り口)だと感じさせる。/各進化バンクはフル。それぞれに「One Vision」の別ヴァージョンのイントロが作られたというのは幸甚だった。今話では特に効果的な使い方が出来た」。こうしたキャラの掘り下げはファンにとってお宝。更にルキの父に関する映画でのフォローはナイス。存在がデータ化したのが伝わりました。別ヴァージョンなんて、贅沢!
バトル・フィールドは、高層ビルに囲まれた新宿駅南側の線路群。セントガルゴモンの大きさが映える。揃った究極体3体、それを見上げるアリス。そこにはバブルスとADR-05クリ―プハンズが。
使命は果たされた。わずかに残った赤と青の光は、アリスに寄り添いドーベルモンの頭部を再構成してから消えていく。最後のスキンシップ、定められた哀しい別れ。そして当然バトルには加わらず淡々と戦場を一人去るアリス。
ここでアリスについて小中氏「旧サイトのキャラクター紹介で、アリス・マッコイはキースの子、つまりドルフィンの孫と書いていた。しかし2017年に見直したところ、これはやはり娘だろうと思わざるを得なかった。タオだってシウチョンという幼い娘がいるのだ。この写真のアリスは、新宿に現われたアリスより少し幼い。しかし成人しているキースを見ると、そう前ではあるまい。決定的な事は今も言えないが」。いや~小中さん以外の誰が決定的な事を言えるんでしょうか?前話の感想に孫って書いちゃったよ;しかも「デジモンアニメ―ションクロニクル」でも孫娘って書いてるし。
アリスについてさらに「アリス・マッコイがなぜ来たのか。ドーベルモンとは少し前に出会った、と言っていたが、そう前ではあるまい。ドーベルモンがADRと交戦しようとするのをアリスがやめさせたのは、四聖獣から重要な使命を帯びているからだった。/アリスがこの世には生きていないかもしれない─とResourcesで書いた為に、また英語版もあった為に、幽霊だという解釈が広まってしまったが、いわゆる幽霊だとは私は全く思っていない。しかしアリスが、普通に人間として日本に来ていたとは、やはり言えないだろう。/リョウとは違う形で、アリスはデジタル・ワールドとリアル・ワールドを行き来する、超然的な存在になっていたのではないか、と当時の私は想定していた」。ファンとしてはドーベルモンとアリスの出会いや使命を帯びるまでの顛末を知りたいのですが、「謎の少女」という落としどころしかなかったという事以上にないようです。確かに、生身の体でこのタイミングでパートナーデジモンを連れ来日、というのはイメージが浮かばない。
デュークモンが騎士の宣言、「二つの世界、それぞれに生きる者を無に消し去るデ・リーパ―、このデュークモンは絶対に許さない!」。決然たる高貴な声、素晴らしい演技。究極体三体による勝利なるか?!
ビル最上階の仮本部。デジモンが、エージェント・デ・リーパーと交戦中と、恵の報告に不安を募らせるジャンユー。子どもたちが戦っている証左。写真立てを見つめるドルフィン、写真にはやっとはっきりとアリスの姿が。ジャンユーは現場に向かおうとして、山木に止められる。子どもたちの戦いを信じ、我々のできる事をしようと説得、気を取り直すジャンユー。「あなたたちの作ったデジモンは子どもたちと共にそれに立ち向かっていた。人は、人が生み出した生命と共に、新しい危機にだって立ち向かっていける」何ですかこの二人の戦友っぷりというかラブラブっぷりは腐的に見逃せません!小中氏「山木はメガログラウモンらとタカトたちの戦いを目の当たりにしていた。そこに人間が介在出来る余地などないとも察していた。しかし、ここで彼は言葉通りの事を考えていた筈だ。山木は自分の出来る事を既に考え始めている」。そう、デイジーにアークの復活を持ちかける。
テレビの中のサクヤモン(歌が聞こえる)を見守る聖子とルミ子。ルミ子は思わず目を伏せる。
サクヤモンとデュークモンが、バブルスを倒していく。セントガルゴモンは拳法を駆使しクリ―プハンズを潰すが、ケーブルを伸ばしてきて身動き取れなくされてしまう。現われるペンデュラムフィート。そこで、サクヤモンの飯綱が退治するが、加えてサーチャーが無数に。
土岐アナ「あのデジモンたちは人類の味方なのでしょうか」。
千葉の祖父の家という設定の、海辺の民宿にいるケンタとマリンエンジェモン。土岐アナの実況で、タカトらの戦いを知る。
世田谷区松原4丁目、ヒロカズの母(中山りえ子さん)の実家という設定、ヒロカズもテレビを見ていたたまれない。俺だって、テイマー。
趙先生宅でテレビを見ているシウチョンとロップモン。そこにジェンがいるのはわかっている。ロップモンはシウチョンをテイマーと認めていて、参戦の意思を示し、アンティラモンへと進化して現場へ向かう。さすがに幼いテイマーを戦場には連れていかなかったが。姉の名は嘉玲(ジャアリン、吉倉まりさん)。小中氏の追記「まだシウチョンは超進化プラグインSカードを持っていないのだが、シウチョンのD-Arkには特別な配慮があった、という事にして欲しい。/それにしてもこのカットは見る度に心が躍る。私が子どもの頃、こうした夢想をずっとしていた。もし家の近所に怪獣が現れたら…、と」。その夢想が、こうして今、作品となって。
今だセントガルゴモンを緊縛するクリ―プハンズ、デュークモンとの共闘で勝利。
ルミ子が顔を上げる、他の保護者達も同じテレビを見つめて。テレビの前でケンタとヒロカズも決意する。テイマーだもの、そうこなくっちゃ!だが、ケンタは不在が描かれ、出動シーンはヒロカズたちとアンティラモンだけ。
いくらエージェントを倒しても、デ・リーパ―の母体に大きな変化はない。ゾーンへ向かっていく究極体三体。決着をつけてやると飛び込んだデュークモン、泡に掴まれゾーンに吸収されてしまう。泡に消去はされなかったので、DWのデ・リーパ―からRWへ移る時に変質したのか?タカトが目撃する、ゾーン内の惨状。デュークモンは、究極体の姿を保てないと言い出す。やむなく中央公園の緑地に降り、進化は解ける。究極体でそれじゃあ、どうすればゾーンを破壊できる?
木の間から現れるジュリ、いやADR-01Juri-Type1(中鶴さんがデザイン)。「有機生物の解析が出来ていなかったから」「ネットワークにデータとして入り込んだ異物、人間。その行動アルゴリズムは、デ・リーパ―と似ていた。加藤樹莉の思考ロジックはただ破滅的な方向に向かっていた。人間はそれを「悲しみ」と呼んでいる様だが。」「デ・リーパ―は、加藤樹莉をサンプリングして、ネットワーク世界と、デ・リーパ―を生み出した人間という自律行動体を解析し人間の言葉を得た」。これがデ・リーパ―がジュリを取り込んで得た考え。
初めはジュリだと信じていたタカトも、意味不明な言動とギルモンの言葉に、やっとジュリでないと認識を改める。小中氏にして今話最大の見せ場と言わしめた01は変身し背が伸び女性の体形になり背部に何かが生える。小中氏「決してグロテスクではなく異様さを感じさせる為に考え抜かれたデザインと演出」。「(前略)撮影(デジタル合成)担当の方が、コンテを見た時に「怪しいものを作らなきゃ」と思われたという。以降、この方のスタッフルームでは邪悪系オーラを「加藤さんオーラ」と呼ばれていたそうで、密かに嬉しかったり」。確かにこのジュリは怖く禍々しく、しかもある種美しい。
本物の加藤さんはどこだ、絶対に助ける、と詰め寄るタカト。「人間とデジモン、それぞれに告げよう。デ・リーパ―は、人間が存在するに足らないものだと、結論を得た。あまりにも弱く、あまりに不整合な存在だ、人間は」「意味を成さない。いずれ皆デ・リーパ―に消される」。深く傷ついたジュリをサンプルにしたせいもあってか、人間は居なくてよいものとの勝手な判断。
いつの間にか行動を共にしているクルモンとインプモン。クルモンはゾーンを指し、行きたいと。向かおうとするクルモンをインプモンが制止する。何があるかわからなくても、力が無くても、行きたいとクルモンは真剣。かつてのデジエンテレケイア・クルモンが魅かれる本質は?ジュリがいると実は感じているのか?何度聞いてもインプモンとのやりとりはホントかわいい。ちなみにアイキャッチ後編のクルモンがインプモンにコツンとされるシーンはここが元ネタ。
デュークモンを助けようにも手がないセントガルゴモン、サクヤモン。そこへヒロカズとガードロモンが応援に。歓迎するルキの笑顔、ヒロカズに笑顔なんて初めての対応。更にもう一体、衝撃のギターのイントロと共に正義のヒーローの証の赤いスカーフ、それは…?!インパクトある登場!

次回予告:サイバードラモンが満を持しての究極体・ジャスティモンとなって登場!けどなぜ究極体に進化できたのか…?ファイナルコールはリョウとルキ。

(2022/4/9 記)

 

 

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