デジモンテイマーズ第46話感想

デジモンテイマーズ第46話「爽やかな究極戦士 ジャスティモン見参!」感想

脚本:吉村元希 演出:今沢哲男 作画監督:清山滋崇 美術:徳重賢 (2002/2/24 放映)

ジャスティモンをはじめとして、いよいよ集結する各テイマーとデジモンたちはエキサイティング。一方クルモンは、ベルゼブモンの力を借りて囚われのジュリのもとへ。
リョウとジャスティモンについて小中氏のブログより「当初の構想だと、リョウの登場は28,29話限定のつもりだった記憶がある。しかし直ぐその後にジャスティモンの登場を提案というか指示を受けて、デジタル・ワールド編の終盤からリョウを再登場させ、一緒にリアル・ワールドへ帰る事になった。ワンダースワンのリョウからは浮きそうなのだが、ドラマとしてのリアリティを我々ライター間で得る為に、後付けであれこれとリョウの物語を想像し、どういう理由かは覚えていないが福岡の出身という事に。/登場させるからには、ジャスティモンがいなければ成立しない様な物語を、テイマーズ終盤で編まねばならない。どうやってリョウとサイバードラモンがリアル・ワールドで究極体進化したのかはもうネグレクトせざるを得なかった。デジタル・グライドが何らかの形で九州へ届いたとしか言えない」。ジャスティモン登場という大人の事情で、執筆陣は大変だったんですね。リョウの究極体進化はネグレクト、と認めていらっしゃるので了解、お疲れ様です。福岡、何だろう、角銅さんの出身地だけども。ゲームファンにとってのリョウと、テイマーズのリョウは整合性が取れているのか、ゲームをしない私にはわかりません。ただ、登場を指示されるほどの人気キャラという事なんだろう。
小中氏「今話で最終話への道筋がつく。そこまでの舞台設定、状況設定をクリアしなければならない中で、脚本家がどう物語を語るか─」。
デ・リーパ―の泡に捕らわれたデュークモン。ジュリそっくりのエージェントと出会い困惑するタカト。その時、南新宿の上空に現われた正義のヒーローの証たる赤いマフラーのデジモンとは。前話の最後で流れたのと同じ、リョウとサイバードラモンのデュエット・キャラソン、「Fragile Heart」のインスト版が流れて。ナレはなく、リョウが自分で言う「ジャスティモン、サイバードラモンの究極体、必殺技はジャスティス・キークッ!やあ!」つまりは爽やか戦士リョウその人。ちょいムカつくルキ、手放しで喜ぶヒロカズ。東京の惨事を知り駆け付けたという。
降下してくるADR-06Horn Striker(中鶴さんがデザイン)、格闘戦に特化した中型のエージェント。セントガルゴモンを一撃で転倒させる。ジャスティモンがキックを放ち、引き付ける間にデュークモンを助けに行けと。奮起したサクヤモンとセントガルゴモンはゾーンへ向かい、残ったヒロカズとガードロモンはリョウを追う。ここのガードロモンの「飛んでった方が早くないか?」のセリフは小中氏によると「多分梁田さんのアドリブだと思う。もの凄いクリティカル・ポイントな尺に収まっている」。声優さんて、すごい。
生き物のようでいて、無機的な動きをするデ・リーパ―・ゾーン。なぜか都庁の最上部は囲まれていない。それを双眼鏡で眺める恵。アークが送ってきた、DWでデ・リ―パーがRW球を侵食する映像。ジャンユーはSHIBUMIに問う、デ・リーパ―の意思、つまり人工知能の核・カーネルはRWへ来ているのかと。デ・リーパ―の最先端を分析してみると、温度の低い部分がある。そこはまさに、タカトとギルモンがいる木々の場所だった。
そこにはジュリの不穏な笑い声が響いて。ソックパペットが現われて言う「デ・リーパ―は松田啓人のデータを個体・加藤樹莉からすでに得ている」。偽物とわかっていても、ジュリとの事実である思い出を引き合いに出されて、頭がぼんやりし心理的に追い詰められていくタカト。ギルモンの呼び掛けも届かず。木々を高速で行き交う光は、情報の伝達を示しているという。
亀裂が入り激しく傷んだ道路。小中氏「ちょっとこの風景にはびっくりした。何しろデ・リーパ―の設定というのは、9/11直後に制作しているという特殊な事情で考え抜いたもので、あまり生々しい災害としては描かないつもりだったからだ。しかし、実際にこういう事が起きたなら、そして交戦があったなら、こういう風景にもなるだろう」。複数人で作っている以上、認識の微妙な違いはあるのだろう。
懸命に走るクルモン、追いかけるインプモン。何とジュリがいる、とクルモンは言う。その名には敏感なインプモン、「俺は、あいつの為には何でもしなきゃなんねーんだ…。」レオモンを殺した記憶、消えない罪悪感。
かまわずに行こうとするクルモン、しかしバブルスが攻撃をしてきた。転倒するクルモンとインプモン。そう来るならとベルゼブモンへ進化(小中氏によると、ベルゼブモンの声に変わるのにエフェクトは使わず声の魔術だという)、バブルスを抑えてクルモンを行かせる。
今話の構成とクルモンについて小中氏「46話のタイトル・ロールはジャスティモンだが、活躍は冒頭と終盤。中盤に活躍するのはクルモンと、それを守るベルゼブモンだ。更にはアンティラモンの存在感。33話で縦横自在にアンティラモンを演出された今沢さんが、今話も担当されたのは本当に幸甚だった。/だが、一番見直して心を動かされるのはクルモンだ。初期は楽しい事ばかりを追いかけていたクルモンだったが、レナモンとの相克に悩んでいた留姫につきまとって、徐々に変わっていった。シャイニング・エヴォリューションは一世一代の大技であったが、それを放って以降のクルモンの存在理由──。それは今ならこう言える。クルモンは「心のデジモン」だったと」。意味深。心かあ。私はジュリにずっと寄り添っていたのが印象的です。
アンティラモンが若松河田(趙先生宅付近)から辿り着いたのが、新宿大ガードの西側。シウチョンとはDアークで会話可能。そんな機能あったっけか?見回しても他のデジモンはいない。と、都庁の方へ飛んでいくクルモンを発見!
バブルスに狙われるクルモンだが、ベルゼブモンがブラスターで一掃。都庁の二つのタワーの間に着くクルモンだが、それ以上進めない。見えない壁があり、その中へ入りたい、とクルモン。ベルゼブモンが銃で撃ち続けると、ついにバリアにひびが。そのバリアこそ、デ・リーパ―のコア・カーネルの外郭だった。拳で打ち砕き、穴を広げてクルモンを中へ入れ込む。
しかしベルゼブモンの体は、カーネルの防御作用によって赤いケーブルに巻き取られカーネル内に束縛されてしまう。気にするクルモンを促して行かせるベルゼブモン。クルモンは、カーネルの真ん中に囚われているジュリへ向かう。その状況をまんま見ていたアンティラモン、そしてシウチョン。
小中氏「樹莉が囚われているのは、テスラコイル・スパークしている透明なカプセルの中だった。恐ろしくデジタルの手間が掛かっているカット」。Tesla Coilテスラコイルとは、ニコラ・テスラに考案された、高周波・高電圧を発生させる共振変圧器の事。このカットのためにデジタル合成担当さんは苦労されたんでしょうね。クルモンがジュリに呼びかけ続けると、カプセルはクルモンを招き入れるが、ジュリは顔を伏せたまま。小中氏「樹莉は半覚醒。長い時間、アイソレーション状態にあり、デ・リーパ―に全記憶を吸い出された後である。ノーマルな意識など保てる筈がない」。アイソレーションとは、分離、隔離、絶縁の意。
ヨモギカメラ(ヨドバシカメラのもじりだろう)西口本店近くへ来たケンタ。千葉からだから、使ったのは総武線か東京メトロ東西線だろうか。俺だってテイマーという気持ちはヒロカズと同じ。その上空を飛ぶセントガルゴモン、呼んでも聞こえそうにないが追いかけるケンタとマリンエンジェモン。
まさにゾーンを目前にして。サクヤモンが金剛界曼荼羅を詠い、桜の花びら舞う防御シールドにセントガルゴモンを包んで、二体ゾーンへ突入する。目に入るのは崩れ去ったビル群という惨状。
一方タカトは。高校生然としたADRジュリが38話のジュリのセリフを再生「私、いい子なんかじゃない…」。あの時のジュリの背中を思い出し涙するタカト。「やめて加藤さん!」また本物のジュリとADR を混同している。「全ては運命なのよ」言い放った末に現われたADR-01Juri Type B。肌は水色になり鋭い目、背部に生えた翼の様なもの、変わり果てた姿。加藤さんじゃない。「全ては無に帰るのだ。無というのは美しい」。それはデ・リーパ―の価値観。「本当の加藤さんはどこだ!?」
そう、ここにいる。やっと少しだけ目を開けるジュリ。
青い木々は無となり、迫ってくるジュリ・タイプB、逃げるタカトとギルモン。木々の消失は、ゾーンに突入したルキの目に留まり。急ぐサクヤモンとセントガルゴモン。サーチャーに金剛界曼荼羅を破られてしまい苦しむサクヤモン。転倒したタカトとギルモンがあわやという時、突如マリンエンジェモンがオーシャンラブを吹きかけ、ジュリ・タイプBは退散、危機一髪。そんななのにケンタが普通に歩いてくる。オーシャンラブのおかげで、難なくゾーンを歩いてこられたよう。さすが、そこは究極体。あくまで自然体なケンタが可笑しい。三番手に甘んじているこのコンビ、実は侮れない!オーシャンラブでサクヤモンも回復。
マリンエンジェモンについて小中氏「マリンエンジェモンがケンタのパートナーに選ばれたのは、このオーシャンラブが最終決戦では大きな要素となり得ると考えたからだった。ただ、このサイズなのに究極体という最強さは何らかのハンデが必要と考えて、ぱぴぷぺぽしか喋れない、というコミュニケーションの困難さをケンタには抱えて貰った。しかし、これが全然ハンデではなくなっていくのだが。ただ、岩村愛さんには申し訳なかったと今も思う」。喋れないのは考えた上での設定だったんですね。ぴぷぷもかわいくてよかったと思うけど?
さて、ゾーンから出るためセントガルゴモンがジャイアント・ミサイルを撃ち打ち破り、皆外へ飛び出す。
ジャスティモンとホーンストライカーの交戦は続く。ジャスティモンのピンチにガードロモンがディストラクショングレネードを発射し事なきを得る。爽やかに礼を言うリョウ、大喜びのヒロカズとガードロモン。ジャスティモンのアクセル・アームで勝ったと思われたが、ホーンストライカーは巨大化して反撃してくる。そこへサクヤモンとセントガルゴモン、更にアンティラモンも加勢、ジャスティモンがケーブルを切断して倒す。礼を言うジャスティモン、おそらくはシウチョンに教わった言葉であろう、どういたしましてと返礼するアンティラモンがかわいい。
ルキの家に帰宅したテイマーズ。リョウのピンチを助けた事を興奮してケンタに自慢するヒロカズ。オーバーだと笑うリョウ、取りなすジェン。そこへ、趙先生宅で留守番しているはずのシウチョンが、クルモンとベルゼブモンの事を伝えに来る。ロップモンが参戦を望んだゆえに。リョウはシウチョンを一人前のテイマーと認め、デヴァイス・カードを贈る。さすがにヒーローは目の付け所が違う。無印で太一が最年少のタケルの事を一人前の男として扱ったことが思い出される。
ルキがぽつりと、アリスにちゃんと礼を言ってなかったと漏らす。そう、一人淡々と去っていったアリス。
タカトは庭からゾーンを眺め、ジュリを案じる。ここで普段素朴なギルモンが「タカトが落ち込んでると他の人まで滅入っちゃう」などとまあえらく殊勝な事を言うのにはびっくり。赤ちゃん同然だったギルモンが、こんなに心の機敏を理解していたなんて。
クルモンが呼びかけるもジュリはまだ無言。どうしたらジュリを救える?最後に都庁のカーネルを映して終幕。
今話について小中氏「最終話近いと、各話でこなさなければいけないポイントが多くなり、作話の自由度はやはり下がる。アクションも多くなる。しかしそうした制約の中で、ライター陣は点と点を繋ぐだけでなく、エモーショナルなドラマを書いた。/今話は、とにかくクルモンの健気さとベルゼブモンの侠気、樹莉の今ある状態の描写、最後に合流するケンタの良い感じの気の抜き方─、あ、アンティラモンとシウチョンのやりとりも楽しかった。そして、私はアリスに関しては45話で決着をつけた気でいたのだが、留姫にリマインドさせるというフォローも元希さんにはしてもらった。タカトにはその余裕が今はないが、留姫にはそうした思いを抱いて欲しかった」。制約の中でのエモーショナルな展開、確かに受け取りました。ケンタの、いい意味で呑気なところがとても好きです。三番手に甘んじても、ちっともカリカリしていない。戦いたがっていた頃のルキとは対照的で。

次回予告:ジュリの心に重くのしかかる「運命」という言葉。テイマーズが勢揃い、でも何かが足りない!ファイナルコールはタカトとギルモン?

(2022/4/10 記)

 

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