デジモンテイマーズ第48話感想

デジモンテイマーズ第48話「樹莉を守る力 ベルゼブモンの拳(けん)!」感想

脚本:前川淳 演出:地岡公俊 作画監督:八島善孝 美術:清水哲弘 (2002/3/10 放映)

いよいよジュリ救出のタイミングとなるベルゼブモン。しかし球体は硬く、獣王拳を使わざるを得なくなる。それを目撃したジュリはレオモンの死がフラッシュバックし、パニックに陥り…。
ベルゼブモンフィーチャー回だからして、脚本は前川氏。小中氏「インプモン、ベルゼブモンの約1年間の物語の一つの決着。今話のベルゼブモンの執念、へこたれなさはまさに19話のインプモンだ」。中盤からまつもとただおさんと交代で演出助手を務めた地岡氏の演出デビュー作となる。地岡氏はあの凝ったかわいらしいアイキャッチも制作されたという。
エージェントと死闘を繰り返すデジモンたち。山木らは前線で戦う子どもたちのためにゼロアームズ・グラニをリアライズさせた。
拡大するゾーンは、オペラシティのすぐ下まで。あのコアに加藤さんがいる…。しかしベルゼブモンはケーブルに拘束されたまま。タイトルコールは獣王拳だからして読み方は「こぶし」でなく「けん」。
オペラタワーの吹き抜けに停まるグラニ。デイジーが保守点検。さて新装備を装着しよう。何だか目があって疑似デジモンらしくなった。グラニの長い苦難の旅を、SHIBUMIが労う。ギルモンもグラニに声をかけると、アークの目が動く。
麗花の操作するグラニのメモリから、DWは荒み切って47%がデ・リーパ―に消滅させられたという。ずいぶん具体的な数字の根拠は?恵の方は、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド等の通信施設がデ・リーパ―に襲われたという。アメリカ人のデイジーは気落ちする。バベルの目は見えないけれど恐らく同様。
じっとしているなど耐えられないと剛弘、が山木はあきらめない、とサングラスを外し(カッコつけて、笑)それを教えてくれたのは息子さんたちだと。子どもたちだけを戦わせはしないと宣言。いけ山木!
デ・リーパ―の核カーネル・スフィアは突如拡大し、ADR-09Gate Keeperが展開しカーネル・スフィアを防御するとともに、板状のアクティブウィングが変幻自在な攻撃が可能となる。そこには何とベルゼブモンが見えた(シウチョンは以前から訴えていたが)。小中氏の注釈「デ・リーパ―は、デュークモンらデジモンを脅威と認識している。だがリアル・ワールドにいるデジモンという存在が処理出来ていない。ベルゼブモンを確保しつつも破壊しようとはしていない」。これは助けに行かねば、顔を見合わせるテイマーたち。リョウなどはサムズアップの余裕。僕たち、行きます!美枝はショックだが、剛弘は応援態勢。駆け出すテイマーたち、皆を守るためロップモンを残して。
サイバードラモンとガードロモンが、テイマーたちを送りだすために先攻。加藤さんを助けに行くんだ!デュークモンに進化。ジェン、ルキ、リョウも進化。じれるロップモン。
グラニが新装備を装着し山木の掛け声で発進!吹き抜けから垂直に上昇する。その姿、勇ましい。
バブルスの攻撃に応戦するサクヤモンとジャスティモン、セントガルゴモン。グラニが飛来し、デュークモンをジュリ救出に向かわせる。
今だうつむくジュリ。俺があの子を助けなきゃと、気合いでケーブルを切断するベルゼブモン。突如、残った太いケーブルの作用でベルゼブモンはスフィア外へ排出されてしまう。そこへデュークモンが到着、一点突破を図りデスストリンガーとファイナル・エリシオンを同時発射するが、スフィアはなんと無傷。
背後に現われたサーチャーが、見て解析したその映像を各端末に流す。街へ家庭へ学校へ。それは戦っている究極体の子どもの映像。さすがに全裸は映せないので上半身だけ。淀小の避難先・都立橋本小学校の仮設校舎にも。昼食時、給食ではなく手弁当の児童たち。タカトと、デュークモンの戦う姿が流れ、浅沼先生は思わず校庭に出てタカトを応援する。続く5年2組の児童たち(クラスメイト:魚谷香織さん)。浅沼先生、すっかりいい先生になって。
完全体ならデジモンの支援だが、究極体は子どもたちが、デジモンと一体となって戦っていた事を思い知る山木。戦う兄の姿に涙ぐむシウチョン、ロップモンは参戦を決意する。ビルの窓を破り出陣。ずいぶんと手荒な。テイマー・シウチョンを促し、クィーン・デヴァイスをスラッしゅぅ!リョウが46話でくれたカード。ベルゼブモンがメインの今話だが、ここはなかなかの見どころ。アンティラモンはピンクの光に包まれ飛翔。バブルスに囲まれたヒロカズとケンタを救い出す快挙。しかしバブルスは無数。
ここで山木が恵をファーストネームで呼ぶ!同棲している麗花ならともかく、いやそれでも職場内だぞ、恵を苗字で呼ばないなんて公私混同。指示は、デ・リーパ―に侵されていない衛星回線を探す事。
ゲートキーパーの攻撃に苦戦するベルゼブモンとデュークモン。このシーンについて小中氏「ハッキリ記憶していないのだが、デュークモンとベルゼブモンを共闘させない様にデ・リーパ―が工作、というのはシナリオ通りなのだけど、ゲートキーパーの防御板が兵器化するというのは、演出とゲートキーパーのデザイナーである中鶴さん、作画の八島さんとで相談されて作った場面ではないだろうか。こういう攻撃をする、という設定画は事前に無かったと思う」。小中氏のあずかり知らぬところでも、クリエイター魂は発揮されて。
大交戦を見て慌てるクルモン、しかしジュリはうつむいたまま。
突如、ゲートキーパーの衛星の一つが「目」を向ける。このデザインは次話のマザー デ・リーパ―の目に近いという。ベルゼブモンを凝視し、ジュリのメモリーのデータ検索を開始する。ベルゼブモン、インプモンが進化したデジモン。レオモンをロードしたデジモン。これを繰り返し言う。何とも気の毒。
窓を叩いて反応する肇、その場に崩れ、介抱する静江。親のもどかしい思い。
うるせー、貴様に何がわかる!しかしレオモンをロードしたのは動かしがたい事実。それでも俺が、ジュリを助けるんだよ!逆五芒星を描いて、魔法陣が現われる。カオス・フレア!何発も撃ち込むが、目は無傷。しかもカオス・フレアを学習して反撃してくる。ベルゼブモンのマコにもらった大切な「光線銃」が消失、許さねえ!無傷が繰り返されると、見てて萎えるんだよなあ。やっぱり勝利のカタルシスがないとつまらない。ただでさえバトル自体には興味が無いのに。
一方デュークモン、グラニの飛翔をもってしても、板状のスレート群は避けられず。タカトとの交信に成功する山木。それは恵の功績。恵について小中氏「ねじり鉢巻きで衛星回線の一つをデュークモンに繋げた。ITワーカーの汗が報われる瞬間。小野寺恵、最高の笑顔。第一部前半では、ゴーグルで素顔すら見せず、冷徹な声で無感情にオペレータを麗花としていた恵だが、前川さんに命名されてから、完全にキャラ変。たちまちIT労務者OLらしさが出て、宮下さんの芝居が丸っきり変わった」。書き進めながらキャラを肉付けしていく小中氏の手法こそビンゴ!恵、めちゃキャラ立ってます。
山木、グラニにユゴス・ブラスターを装着したのでそれを撃てとの指示。小中氏「この衛星通信は、デュークモンと直なのではなく、グラニを介しての通信。グラニは人間の先端テクノロジーのデータで、仮想空間にて作られた。アークもそうだが、本来は操縦者を必要としない自律型ドローンなので、衛星からの通信が必須なのだ。」「シリーズの最終到達点の、ぼんやりとしたイメエジは描いていたが、ここまでに蓄積してきた「物語」のディテイルを、この最終章では回収していく。思わぬ事が発展している事も多い。浅沼教諭だってそうだった。」「ユゴスの初出は7話。山木が作った、ネットワーク内の異物、ワイルド・ワンを粉砕する仮想攻撃兵器。それをグラニのリアライズに合わせて実装させたのだ。デイジーにアークの改修を強く持ち掛けたのは、山木なりの勝算があったからだった。」「こうした設定的な事は私が考えていたが、今話が迎えるクライマックスは、前川さんが自ら手繰り寄せた。/そもそもで言うと、テイマーズはデジモンの死を、一回はきちんと描く。命はだから大切なのだ、というメッセージとして。/で、テイマーズのデジモンは倒した相手をロードするという、元のデジモンそのものにはない設定を入れた。しかし、カードバトルの場合だと、勝者がカードを手にするのだから、全く無い設定ではない。/だが、じゃあデジモンのカードをスラッシュして、そのデジモンが生きているかの様に見せるのは、やはりそのデジモンが好きなファンには悪いよね、という事で、オプション・カードでの支援が圧倒的に多い。しかし留姫がスナイモンのカードをスラッシュしたし、32話ではジェンがテリアモンに様々なデジモンのカードでテリアモンを強化させた。カードの新たな使用方法は、まさきさんが最も研究してくれた。/だが、ベルゼブモンはカードではなく、実際にレオモンをロードしたデジモン──。/つまりそれは、今話クライマックスを自ずと導く。これを成立させる為に、カーネル・スフィアの設定を作ったといってもいい」。レオモンの死はあくまで重くて。
ベルゼブモンをどかせて、デュークモンはユゴス・ブラスターを撃つ。膨大なエネルギー。ゲートキーパーの外側がついに割れ、ジュリが囚われているスフィアが露出。タカトの声がジュリに届く、ベルゼブモンは本気で加藤さんを助けようとしている!
必死で透明な球体を繰り返し殴るベルゼブモン。「ベル、ゼブ、モンが、私を、助けようとしている」つぶやくジュリ。目を見開きはっきりと覚醒。ようやく立ち上がる。
ベルゼブモン、体力の限界。俺に、力をくれええ!小中氏「私は見返していて、ここで最も心を震わせた。ベルゼブモンだって、獣王拳を使えばどういうリアクションを樹莉がするかは想像がついた筈だ。だからこれまで、己の拳だけで撃ち続けたのだ。だが、どうしても、どうしても届かない最後の望みがこれなのだ。/そしてベレンヘーナは使っても、ダークネス・クロウ、レオモンを危めた武器は封印したのだ」。ベルゼブモンの真摯な心が伝わってきます。
助けてベルゼブモン…歩み出すジュリ。しかしベルゼブモンの使う獣王拳を目撃し、レオモンの死がフラッシュバックして涙を流し動けなくなる。パニック発作。球体は破れ穴が開いたが、ベルゼブモンの救出に身をゆだねられないジュリ。タカトもジュリを呼ぶが。そして惜しくも穴は閉じてしまう。
それでもあきらめずに殴り続けるベルゼブモン。その背中にスレートの群が突き刺さり、絶命寸前となる。ここで、終わるわけには、いかねえ!果たして…。死んじゃやだよう。
獣王拳について小中氏「終盤の、復活したベルゼブモンに如何に見せ場を作るかについて、前川さんと相談している時に、前川さんが考え出したのが、獣王拳を使う、という事だった。今でこそ、これの為に布石が打たれていたのかと思われたかもしれないが、これは終盤構成の段階で出たアイディアなのだ。プロットとかに書かれたのではなく、話している時に「で、獣王拳を撃つ!」と口頭で成立した。「おおお、はまったじゃん」と盛り上がったのを今も覚えている。演繹的に物語を作る事の醍醐味というのは、こういう瞬間があるからだ」。てっきり用意された伏線の回収と思ってました。
ジュリのリアクションについて小中氏「今話の樹莉の反応は、年少の視聴者には理解できなかったかもしれない。ベルゼブモンの真剣さ、タカトの呼びかけで、デ・リーパ―によって抑圧されていた自分自身の感情を取り戻したかったのに、最後の最後で足を踏み出せなかった。/しかし、自分が精神的なショックを受けたりした時、何と無力で勇気を失ってしまうかを実感する時があるやもしれない。そうした時、樹莉を思い出して欲しいと願った。/テイマーズの物語では、次話以降で樹莉自身でも克服していこうと奮闘する。最後には、タカトに救われるのだとしても、自分自身の心の決着をせねばならないのだ。だが、一人だけでは難しい─」。とてもじらされます。ジュリが自分自身で─確かにそれは重要だ。でも、一人じゃないよ。
インプモンについて小中氏の振り返り「インプモンが企画当初のメイン・デジモンだった。私が否を唱えてギルモンが生み出されたが、その分、物語ではインプモン~ベルゼブモンが主役に匹敵する存在感を、徐々に増していくべきだと考えた。/インプモンは吉村元希さんと前川さんが形作り、ベルゼブモンはほぼ、前川さんが書いたと言える。特に復活してからのベルゼブモンは、普通なら視聴者に嫌われそうな悪役が、その後驚く程にファンを獲得するキャラクターに育った。演出、作画、高橋さんの演技と共に、本気でベルゼブモンを共感得られるキャラクターとして昇華させる原図を書いてくれたのは、前川脚本だった。/お疲れ様でした!」。インプモン、本当に共感しまくるキャラです。そのセリフは一言一句漏らさず共感できる。

次回予告:自分を否定しないで立ち向かうんだジュリ!クルモンもいる!ファイナルコールはタカトとジュリと、クルモン?

(2022/5/4 記)

 

 

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