デジモンテイマーズ第49話感想

デジモンテイマーズ第49話「首都壊滅!クルモンの願い」感想

脚本:小中千昭 演出:川田武範 作画監督:信実節子 美術:渡辺佳人 (2002/3/17 放映)

サブタイトルの「首都壊滅」は、ジュリの悲しみの増大により力を増したゾーンが拡大し、都庁や街を完全に取り込んでマザー デ・リーパ―が形成された事。「クルモンの願い」は、マイナス思考のジュリに笑顔を取り戻してほしいという願い。ジュリの拘束シーンの連続、ゾーンに対する苦戦の長引きには少々萎える。それも、9/11の影響で仕方ないのか。
ゲートキーパーの攻撃を受け量子崩壊していくベルゼブモン。デュークモンもサクヤモンもあきらめるなと必死で呼びかけるが、自らがケーブルに拘束されてしまう。
ベルゼブモンのその姿を、アイマコもテレビで見ていた。おそらくはインプモンが元の姿だと直感して。
ジュリは、自分がベルゼブモンの救出に応えられなかったのを悔いる。
ベルゼブモンは遂にゾーンに落下する。もうだめか…。しかしゾーンからインプモンをグラニが回収に成功。よかった!サクヤモンが身を引き受ける。やはり因縁の二人。
山木が離脱を呼びかける。国連防衛軍がゾーンに総攻撃を仕掛けるというので、やむなく離脱するデュークモンたち。中にはジュリがいるのに。
迫るステルス攻撃機、爆発物ではなく無数のジャマ―弾が撃ち込まれる。ジャマ―の電磁波で攪乱させるという戦法。と、衛星通信が入る。相手はワイルドバンチとは旧知のアメリカ人、ベッケンスタイン教授(石井隆夫さん)。教授について小中氏「ジョニー・ベッケンスタイン教授は国連防衛軍科学顧問としてこのオペレーションを指揮した。本来はドルフィンと同じく先端的なネットワーク・テクノロジの研究者。今は、仮想世界が現実世界に及ぼす物理的な被害の防衛手段を研究していた。クラスター・ジャマ―は元々は小型核を用いないEMP兵器(電磁パルス攻撃/敵のコンピュータ機器、ネットワークをシャットダウンさせる)として既に作られていた」。さすがながら設定をそこまで煮詰めています。
サクヤモンに抱かれ意識を回復するインプモン。
スフィアの壁を叩き、出してと叫ぶジュリ。忌まわしくもそこにADR-01Bが現われる。ケーブルに拘束されるジュリ、苦しみ悲しみがデ・リ―パーの力を強める、とADR。抵抗するジュリの情動が元になって、ADRもケーブルに拘束され消される。自分の情動の変化がもたらす結果におののくジュリ。
デ・リーパ―は不活性化しジャマ―は一時効いたように見えたが、突如デ・リーパ―は温度が上昇し拡大を始める。ジュリが拘束に苦しんでいるから。
ジュリの叫びはタカトに届く。
ケーブルは伸び、都庁の最頂部まで泡に包まれてしまう。そして異形の姿、マザー デ・リーパ―(渡辺けんじのさんデザイン)となる。スフィアを顔の中心に配置した、単眼の女神の造形。今までにない巨大なおぞましい姿。
タカトは突進しようとするが、デュークモンは泡に入ると力を失うからと制止する。究極体三体、後退せざるを得ない。悔しがるタカト。ついにスフィアごとジュリは泡に呑み込まれて。デ・リーパ―について小中氏「ゾーンは東京都心部を覆い、これまではただ泡やブロブと言った不定形な形状をしていたデ・リーパ―は、ケーブルという物理的な形状をとる事で、アクティヴに活動が出来る様になる。/9/11直後に、いかにフィクションの中で人類存亡の危機的な状況を描くか。その命題に対する私たちの回答がこの地獄絵図であった。/ケーブルはファンの間では触手と認識されているが、そうした要素も勿論なくはない。おぞましいものという意味では変わらない。/だが、樹莉を苛むケーブルには強い意味があった。様々な外的要因によってがんじがらめになって、自らの力だけでは身動きが出来ない─という困難さの象徴だった。樹莉にとってそれが、「運命」なのだった」。そう言われると、長い緊縛シーンも共感できなくもない。
タカトの独白「デ・リーパ―・ゾーン、赤黒い巨大な泡は直径12㎞にまで拡大した。こんなことになるなんて、一年前の僕は夢にだって思わなかった。いつも通りの毎日がこれからもずっと続くと思ってた。ギルモンと出会った時、そうじゃないって判って、びっくりする事が一杯起こって、ギルモンと友だちになったり、他のみんながテイマーになったり、楽しい事だっていっぱいあったけど、こんな事が起こるなんて…。」日常を侵す非日常。
筑波先端通信科学研究所、ヒュプノスとワイルド・バンチはここに拠点を移す。タカトたちもいったんここで説明を受ける。山木はジュリの救出をあきらめていないが、肇の心中たるや。
タカト一家は逗子の叔母さん宅へ疎開。海辺の茅葺き屋根の家。そんなん今どき逗子にあるか?小中氏「もっと現代的な家だと思っていたので、びっくりしたのだけれど、確かに映像的にもこの方が良かった」。私は逗子に行ったこと以前にあるけど、茅葺きのイメージはやはりない。ちょっと無理では。
縁側で久々にゆっくりするタカトとギルモン。そこへいきなりカイ(サエキトモさん)が訪ねてくる。従兄弟の頑張りを応援しに来た。世界を救う、そんなつもりタカトにはない。ただ大切なものや友だちを助けたいだけと。「ウムヤーグワー」初恋の人と言われ恥ずかしがるが認めるタカト。だから助けたい。だろ?タカジュリは恋愛未満なんかじゃないって。
カイについて小中氏「(前略)浦添 海を登場させたのは、映画もシリーズと同じタイムラインにあるのだと、映画を見に行ってくれた視聴者にも伝えたかった事もあるのだが、タカトの素直な気持ちというものを、家族やいつも一緒にいる人々ではなく、ずばりと引き出せる様な誰かが欲しい、と考えて思いついた事だった。(中略)多少無理があっても出せるだろうといきなりシナリオで書いたら、関プロデューサーも承諾してくれて、サエキトモさんを呼んでくれた」。カイ登場にはそんな裏話が。従兄弟という立場、あけすけな性格がまさに適任!沖縄弁の演技は苦労されたであろう。
小中氏「ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル─。シナリオでは24話と同じくニューグランドだったが変更された」。ティールームでくつろぐ牧野一家。レナモンは女の子、と評するルミ子。一応ガールズトーク??家族といられる時間の事だけ考えてと言われルキは頷くが、手にはDアークを握りしめ。
クルモンはジュリに呼びかける、自分をいじめないで、笑って。デジモンながら、人間の心理を的確に把握。さすがテイマーズのアイドル。
ジョニーの通信、合衆国のデ・リーパ―も拡大を速めていると。生き残ったジャマ―弾の情報によると、ゾーン内の情報のやり取りは光の速度より速い、それで泡が急速進化したと。カーリーの対策は、デ・リーパ―を元の原始的なプログラムに退化させる事。オペレーション・ドゥードゥルバグ、蟻地獄作戦。ジョニーは、ワイルド・バンチに一任し、通信は切れる。
ジェンはSHIBUMIに、ゾーン内でも活動できる方策をお願いしているよう。しかしSHIBUMIはマイペースでつれない。
ソックパペットに、ジュリなんか死んじゃえと言わせる、追いつめられたジュリ。ジュリがいなくなればひどい事も起きない。そんなジュリにクルモンは泣いて訴える、みんなジュリが好き、笑顔が好きと。しかしクルモンとジュリはケーブルの力で引き離される。タカトに助けを呼ぶジュリ!逗子のタカトに、ジュリの叫びが聞こえる。緊縛プレイはもういいよ~;
マザー デ・リーパ―は言う、人間が生み出した全ての存在が愚かしい、人間の思考は非論理的、と。もはやジュリのメモリーは不要となって。
ジャンユーがテリアモンの体を検査機器で調べている。リアライズしたデジモンの組成を、デ・リーパ―解析に応用というが、実は何かをテリアモンに仕込んでいたのがのちにわかるのだが。
ゾーンの活動は、世界をまたいで熱を帯びる。どんな災害が起きるのか想像もできない。参戦を決意するジェン。SHIBUMIが用意したのはレッドカード。珍しくポーズもバンクもなしでスラッシュするとアークから赤い光が。
小中氏「ここから挿入曲「Starting Point」が流れ始める。和田光司+AiM+太田美知彦(作詞:松木悠、作・編曲:太田美知彦)「ソングカーニバル」に収録されている。タカト、ジェン、留姫、三人の最後の出陣は、悲壮なものではなく、未来に希望を持てる様に描きたかった。この男性二人と女性一人の歌は、これ以上ない程のマッチをしていた」。明るい門出が、なるほど良い。
Dアークが受信、しおらしい表情で母と祖母に謝罪するルキ、けれど前を向いた顔はきりりとして。横浜港から飛び立つサクヤモン。
ジェンからの戦う準備ができたという信号を同じく受信したタカト、時は夕暮れ。
ジェンを戦いに送り出すジャンユー、実は苦渋の方策を取っていたのがのちにわかる。
両親とカイに見送られタカトとギルモンも駆け出す、いざ出発!
ラストシーンについて小中氏「樹莉も含めて子どもたちは皆、それぞれにそれぞれなレヴェルで問題を抱えている。しかし皆、それを自ら乗り越えようとしている。/なるべく情報過多にならない様に、と書いたシナリオだが、私は美枝がギルモンを撫でるところで、いつも泣いてしまう。24話であれほど怖がっていた美枝。タカトがデジタル・ワールドから帰ってきても、ギルモンを労ったのは剛弘だった。今は、ギルモンがタカトにとってかけがえのないパートナーなのだと認めている。/ギルモンがいる事が日常化している─。いや、決してそれは日常なのではなかったのだと判るのは、この物語の終わりになる」。最後に切なさの予感。
美術の渡辺佳人氏について小中氏「(前略)テイマーズの場合、基本が現実世界であった。各話で驚く程精緻な現実が描かれ、デジタル・ワールドではそこからどれだけ離れ得るか。渡辺さんがこの仕事を楽しまれたかどうか、直接話を伺ってはいないので判らない。しかしいろいろ面倒をお掛けした元凶としては、感謝と共にお詫びするしかない」。作画の信実氏へのコメントについては省略。

次回予告:いよいよ最終話前話、デュークモンのさらなる進化?ファイナルコールはタカト、ギルモン、?。

(2022/5/15 記)

 

 

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