デジモンテイマーズ第50話感想

デジモンテイマーズ第50話「真紅の騎士デュークモン 愛するものたちを救え!」感想

脚本:小中千昭 演出:角銅博之 演出助手:地岡公俊 作画監督:浅沼昭弘 美術:徳重賢 (2002/3/24 放映)

最終話前話で、マザー デ・リーパ―と各エージェントが勢揃いしての死闘。バトル続きで正直辛いです。でもジュリはあきらめない、人間は進化できる!運命は変えられる!そうだよね、レオモン…。
助けを求めるジュリの叫びを胸に、逗子の海でデュークモンに進化しグラニで飛び立つタカト。見送る両親とカイ。あれが美しくも誇らしい我が息子たち。
シナリオ・タイトルは「紅蓮の騎士よ 愛するものたちを救え!」だったという。
一方、横浜から飛び立つサクヤモン。
ケーブルに拘束されるジュリとクルモン。この子は私なんかをずっと、とクルモンに手を伸ばすジュリ。するとポーチからデジヴァイスが落ちる。ハッとするジュリ。
ゾーン上空に、光る球体がある。そこはジェンの待っていた場所。SHIBUMIから預かった、デ・リーパ―の中でも戦える赤いカード。さあスラッシュという時に、ジャスティモン~リョウとサイバードラモンも到着する。あくまで爽やかに、ヒーローは遅れて来るもの笑。皆デジヴァイスを構え、赤いカードをスラッシュ!同一のカードを複数のテイマーがスラッシュする場面はこれが最初で最後。エキサイティング。球体から飛び出す4人の光の柱。
この場面について小中氏「ジェンがタカトたちとどうやって落ち合って、レッド・カードをスラッシュするという場面にするか、シナリオで随分悩んだ。理詰めでリアルにやってる段階ではないな、と考えて、四聖獣がもたらしたデジタル・グライドの空間という柱(シーン名)で角銅さんに投げてしまった。そもそもデジタル・グライドは、リアル・ワールドで究極体に進化する為に、テイマーをデータ化するというもので全く異なる。角銅さんに相談すると、何とかしますと言ってくれた、と思う。/見返してみると、これはD-Arkのパワーで成されたものだと思える。ジェンのスラッシュで、はっきりと言葉ではないものの、テイマーたちに「集まれ」という合図が届いた。デ・リーパ―・ゾーンの上空辺りで、こうした仮想空間がテイマーたちが持っている-Arkによってもたらされた、と見てくれたら嬉しい」。了解です。
さあゾーン突入、最後の戦いに皆気合いが入る。突入の衝撃、抵抗に耐えて進む。
それをモニターしている山木たち。ジャンユーは「私は覚悟している、どう思われようとも…」と、その意味は最終回でわかる。山木「ご自分を責めないでください。今は、彼らに託すしかありません」と山木。蟻地獄作戦、準備だ。山木「奇跡を起こすんだ、我々で」。大人たちの戦い。
もはや建物の欠片すらない変わり果てた街。小中氏「9/11、或いは戦争の戦場、或いは自然災害、そうした現実から掛け離れた描写を追及して、こうした光景が生み出された」。赤黒いそこに立つ、マザー・デ・リーパー。ジュリの囚われている場所だ。バブルスにオプティマイザー、クリ―プハンズ。皆で応戦するも、グラニは叩き落され、デュークモン・ジャスティモンは放り出される。
マザーへと地を走るデュークモンとジャスティモン。地に突き刺さったグラニを残して。
子どもの無事を祈る恵と麗花。蟻地獄作戦はもうすぐ。
サクヤモンが金剛界曼荼羅でオプティマイザーを葬る。小中氏「バンク使用だとばかり思っていたが、角銅さんは新表現を導入された。もう「鎮める」というニュアンスではなく、敵を消去しなければならないのだから、表現が変わっても然るべきだった」。
ジュリは解き放たれる。究極体四体の乱入と交戦により、エージェントに意識がとられ、カーネルが手薄になったから。ジュリはクルモンを抱き上げる「もう絶対に嫌だ、誰かがいなくなるなんて、もう絶対に!」。心からの言葉。落ちているデジヴァイスを拾い上げて「こんな事が運命なの?」いや違う。
小中氏「レオモンを失ったテイマー、樹莉のD-Arkは、本来的には失われる筈だ。タカトが一回、自分のD-Arkを落として破壊してしまったのだし。とは言えそれは、デュークモンの進化時に、D-Arkを新しいデザインのものにしたいというスポンサー要求からだったのだが。/結果として、精神が不安定な樹莉が、砂嵐しか表示しないD-Arkを見つめる─という場面を幾度も描写して、デ・リーパ―がそれを通じて樹莉という存在を検知し、人間の個体標本として狙いをつけた契機にした。/そして今話、樹莉がそれを持ち続けた意味をしっかりこの後に描く」。大人の諸事情も呑み込んで、オリジナルな物語を作っていったんですね。
板橋二丁目の信号。新宿から板橋まで広がったゾーン。パトカーが巡回していると、突然現れるパラティスヘッド、パトカーを破壊。全てを無に。それに対抗したのは、ガードロモンの技だった。俺たちだってテイマー、黙っちゃいられない。頼もしいvケンタはいつしかマリンエンジェモンとの意思疎通ができるように。ますます頼もしい。しかし、警視庁のヘリ(パイロット:世田壱恵さん)に止められる。多くの大人はテイマーの戦いなどわかっちゃいないのだ。
これが最後の戦い、気合いを再度入れる皆。クイーンだキングだという会話に笑うタカト。「みんな変わんないや」「僕たちこれから、加藤さんと、それにこの世界と、デジタル・ワールドを救おうとしてるんだよ?何か凄いんだけど、僕たちは全然変わってないんだもの」いや、全裸四人で日常会話をされるとこっちが恥かしい…。単に友達の救助でなく、DWとRWを救うという自覚はあるのね。
避難のバスの中で。アイマコに介抱されるインプモン、自虐的な言葉を言うも、うれしそう。そんなアイマコのもとにデジノームからの贈り物、Dアーク。アイマコもまさにテイマーだ。
Dアークを手にしたジュリ、決意する。一緒にここを出て、笑顔を取り戻して。デ・リーパ―に中から呼びかける。「私がレオモンの言葉を、運命を自分勝手に受け止めていたから。だけどそんな私だって明日は笑顔で一生懸命生きていける!」「進化できるの!人間だって!」「運命は逃げられないもの、そうじゃないんでしょう?レオモン」するとDアークにレオモンの姿が浮かび、うなづいて消える。ジュリは礼を言い、わずかに笑む。
消えていいものなどない、消さないでと叫ぶジュリ。だがジュリは再びケーブルに捕らえられてしまう。もういいよ~緊縛プレイ;まじで。この姿がはりつけのキリストに見えるという事で、海外版によっては違う絵柄に変えられたそう。デ・リーパ―は言う、人間は破滅を望むと。他者を傷つけたい願望、と。嘘だと叫ぶジュリ。
デ・リーパ―の声はデュークモンたちにも聞こえていた。人が生み出したデジモンは相手をロードして予定された進化をするだけの存在と。デュークモンは反論する、人もデジモンも、より高みに進化できると。上昇するデュークモンとサクヤモン、ジュリに呼びかける。
進化について小中氏「人とデジモンが一緒に進化をする─。スーツェーモンが最初に示した通り、それは人にとってもデジモンにとってもアブノーマルなもので、それが普遍化する筈はない。これはテイマーズという物語に限っての、奇跡だった。それによってでしか、デジタル・ワールドとリアル・ワールドを襲う災厄が避けられなかったからだ。/でも、サクヤモンもセントガルゴモンも、自分達はデジモンの「進化ルート」の軛から逃れたと考えていた。そもそも進化ルートは、例外が多くあるものなのだ。/人だって進化できる─。自分をより向上させる意思さえあれば、それが人としての進化なのだ、と、我々スタッフは子どもに伝えたかった。それは、今話の浅田さんの演技と、角銅さんの演出、浅沼さんの作画監督の仕事を経て、アイやマコの年齢の視聴者にだって届いただろうと信じている」。子どもだからと妥協せず伝えようとする真摯さに感動。
するとマザーの頭部が光り、その光が大地を変形させる。深くなっていく穴。
参戦したいロップモン、しかし究極体にはなれていないから…。
この穴は─、デ・リーパ―がDWとRWを地続きにしてすべてを消そうという兆候。だが、この「トランスフォティック・エディ」超高速渦こそ、デ・リーパ―を退化させる切り札という。オペレーション・ドゥードゥルバグ開始だ!そしてシャッガイも!しかし今この筑波にあるのはプログラムのみ。ヒュプノスのリソースもマシンパワーもデ・リーパ―に食われたはず。一体どうなって。よくはわかりませんでした;
穴から無数のケーブルが上昇し、束ねられ、「リーパー」を形成。小中氏によると、渡辺けんじさんが描いたものに中鶴さんがその場で手を加えたのが原型という。呆然とするセントガルゴモンとサクヤモン。怖いけど怖くない、と自分を励ますルキ。デュークモンがファイナルエリシオンを放つが、リーパーの口に吸収されてしまい、鎌が振り下ろされマントがボロボロに。
ジュリは力なく訴える、「もうやめて、私は運命を変えられる…」。響いてくるタカトがジュリを呼ぶ声。小中氏「同時に流れ始める「The Biggest Dreamer」のアカペラ・イントロ。見直す度にこれが流れるタイミングの絶妙さには唸らされる。この曲が本編で流れるのは51話中ここだけ。曲は静かなアカペラで始まる。こういう場面でなければ映えない。そして曲が盛り上がるのはこの後の展開なのだ」。挑むジャスティモン、セントガルゴモンのバーストショット、サクヤモンの飯綱が炸裂。リーパーは青い炎に包まれ、その影響がマザーに伝わりジュリとクルモンがピンチに。
ジュリを任されたタカトとデュークモン、ちょうど「走れ!」という歌詞がここに重なるという、小中氏の言う小さな奇跡。マザーを駆け上ると、途中に偽ジュリの大きな顔が現われる。黒い息を吐きかけられ転落するデュークモン、マントもなくて。悔しい。
そこに声が届く「飛びたいか、翼を得たいか、デュークモン」。デュークモンは念じる、このデュークモンに翼を!後方の量子崩壊しかかったグラニが最後の力を振り絞り、力をデュークモンに託す。グラニはやはりデジモンだったと気付くタカト。そしてグラニはデュークモンの翼となって共に生きる!6枚の翼を持ち左手にインビンシブル・ソードを持った姿。デュークモン・クリムゾンモード。
小中氏「グラニの設定と一緒に、クリムゾン・モードの設定を提示されたのはどの時期であったか。そんなに前ではなく、シナリオがデジタル・ワールド編に入ってからだと思う。だからオープニングにも描かれていないし、登場は番組終了間際。番組寿命から見ても、そんなに商品展開は出来ない。それでも入れたい!という熱意を感じて、シリーズの終幕間際での登場となった」。その熱意が汲まれたおかげで、特別なものを目にできるんですね。
小中氏によると、6話で初出のカード「白い羽」からの引用だろうと。右腕を差し出すと、そこには光の神槍グングニルが現われる。進化(モードチェンジ)シーンはまばゆく美しい。小中氏「進化バンクなどとても新規には作れず、モード・チェンジ前、後をデジタルで繋ぐ編集だが、新しい姿になる時の紙吹雪の様な四角のパーティクルは、デュークモンの進化バンクと同じ表現」。スタッフが新シリーズに取られる中での、精一杯の美しい表現に拍手。
偽ジュリをグングニルで粉砕、雄叫びを上げ飛翔、マザーの顔へ近づくクリムゾン・モードの目のアップで終幕。オメガモンといい、人型究極体デジモンのこのつぶらな目、いいよな。
グラニについて小中氏「設定を聞いた時、私は「それじゃ殆どデジモンですよね?」と訊いた。いや、デジモンそのものではない、という答え。そうですか…、と引き取るも、アーク、そしてグラニも、明らかに自我を持っているという描写をしていた。/最後の最後だけ、グラニに喋らせたいと思った。アーク、グラニに一生懸命話しかけた、ギルモンとタカトに御礼を言って欲しかった。/グラニの声は、ドルフィン役の菊池正美さんが、ドルフィンとは全く異なる発声で演じられた。前話の次回予告で既にネタバレ的に出演されている」。グラニが喋った、驚きです。予告は、気づかなかったなあ。確かにドルフィンと全然違う、菊池さんてやっぱすごいなあ。
角銅氏について小中氏「今話のシナリオは多くの部分をシナリオで具体的には描写せずまま、角銅さんに委ねてしまったところが多い。これまでの数々の伏線を回収していく段では、新たに設定を考える余裕が私にもなかった。/前シリーズ、というよりも、デジモン・アニメそのもののクリエイターであった角銅さんが、テイマーズでも引き続きローテーションで入って貰える事は本当に有り難い事だった。角銅さんと複数話を作れたシリーズは、私のキャリアでもテイマーズだけになってしまった。単発では幾つかあったのだけれど。/テイマーズでの角銅さんは、やっぱり21話「レオモン様」が至高だった。私とは、7話、35話でも組んで戴き、やっぱりこの時も色々甘えてしまっている。/ちょっとしたプロジェクトはこれから予定があるものの、やはり角銅さんと一度は本格的にホラーのアニメを作ってみたいと今でも思う。/お疲れ様でした!」。いちファンとしても、デジモンは角銅さんありきと、私は思っています。
小中氏のブログに付記された角銅氏のツイートによると、地獄の穴とケーブル群、複数の爆発シーン、金剛界曼荼羅の新作、グラニと融合する際の光芒、シャッガイのパソコン画面など作ったそう。「小中脚本はどれも絵コンテにする際悩むところがなく、大変楽しい仕事でした」「ホラーは是非ともどこかで実現しますように」。だそうです。クリエイター同士のリスペクト、う~んラブいv

次回予告:最終決戦!幼年期…凄いネタバレ。ファイナルコールはタカト、ジェン、ルキ?

(2022/5/31 記)

 

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