デジモンテイマーズ第51話「夢見る力こそ 僕たちの未来」感想
脚本:小中千昭 演出:梅澤淳稔 作画監督:出口としお 美術:清水哲弘 (2002/3/31 放映)
シナリオタイトルは「夢見る力こそ 僕たちの未来The Biggest Dreamer」という。
グラニに助けられ、今度はクリムゾン・モードになって飛翔、それでもADR-01CTypeにはぼろくそにされて。サクヤモンは持てる力を全てジャスティモンに委ねる。そしてジャスティモンはこれまた、二人分のパワーでリーパーを切るが、これも再生。セントガルゴモンは弾切れもあり拳法で交戦。どれも死力を尽くした戦いが長すぎて、しかも勝利のカタルシスがないので見ていて耐えがたくなってしまう。
ジュリも同様で、助かりそうになっては拘束される、が繰り返されてもうお腹一杯。かと思えばいきなりカーネルから解放されておりおや?と思ってしまう。ジュリの見どころは一応、Dアークを掲げて「私の運命は、私が決める!」。しかしこの後にも、ジュリの瞳の奥のわずかな恐怖がマザーを活気づけるというしつこさ。
最終回の死闘というのは、こういうものなんだろうか。
「人間もデジモンも、予めいてはならない存在なのだ」とマザー、デュークモンは反論する。「人間だって動物だって植物だって、それにデジモンだって、みんな命を持って生まれたら、それを守るんだ!だってそれが大切なものだから!」
突如、リーパーは地底へ引きずり込まれる。四聖獣四体がDWとRWをつなぐ穴を封じてくれたのだ。シナリオにはスーツェーモンとチンロンモンだけだったが、できてみると四体揃っていて良かったと小中氏。
デュークモンの武器を早々に失わせて、ADRと肉弾戦をさせたのは小中氏の意図。光線の撃ち合いは、何度も見せればインフレをしていくからと。殴り合いだとタカトのダメージは大きいが、それでも逃げないタカトとデュークモンの戦いを見たかったという。
ジャンユーと山木がジェンに、テリアモンにシャッガイを託したと打ち明ける。DWとRWを相互に干渉し小型ビッグバンを起こして、ブラックホールに人工知性を引き込む。高速回転し進化したデ・リーパ―を、逆回転させ退化させるという理屈。それでセントガルゴモンは穴の中へと降りていき、旋回を始める。激しい旋回に耐えるセントガルゴモン。
しかしSHIBUMIは引っかかる。そう、それはつまりは子どもたちとデジモンの少し早い別れを意味した。
デュークモン「僕たちは、絶対に、いなくていい存在なんかじゃない!」その拳がついにCTypeを消滅させる。やっとすっきり。
カーネルにジュリはおらず、緑色の光に包まれ漂っていた。これはシナリオにはない描写で、クルモンの密かなパワーがジュリを保護したらしい。近づくデュークモンの背後からこれでもかとまたケーブルが延びるが、セントガルゴモンの旋回のおかげで穴へと引いていく。マザーの断末魔、やった!
さて、究極体たちはその姿を保てなくなる。デ・リーパ―の退化と共に、ゾーン内で活動できるようにしたレッドカードは、ゾーンが消失しては究極体そのものも成立しなくなるから。死闘の末に進化は解ける。そこでギルモンはタカトの体をジュリの方へと吹っ飛ばす。
ジュリが目を開けると、そこには傷だらけのタカトが。マドンナをお姫様抱っこ、ついに救出を果たす!抱き着くジュリ。コレをタカジュリでないとは言わせません、笑たとえ小中氏であってもv小中氏「日本の小学生の、最大限な愛情表現は「抱き着く」事だと思った」「タカトと樹莉の関係性は、恋人には至っていない。だから、これが「最大限」なのだ」。ハイ、何はともあれごちそうさまです~v
ここから早く出ないと。するとオーシャンラブの泡で、マリンエンジェモンたちが助けに来る。やっぱり最後までには残りのテイマーとロップモンも出てきてくれないとと思ってたんだ。さあ、帰ろう。小中氏によると、テリアモンを気遣うガードロモンのセリフが梁田さんを呼べずケンタに振り替えられたという。テリアモンも、オーシャンラブで穴から救出されめでたし。さすがに息も絶え絶えのモーマンタイ。
小中氏「本来的には、英雄的に戦って世界を救ったタカトたちを、皆が祝福する様な場面があって然るべきだった。けれど、やはりそれは不要だ。これはあくまで、子どもたちの目線で描いた、子どもたちを描く物語なのだ」。そうですよね、この終わり方でいい。小中氏の感慨「一年続いたシリーズ最終話のラスト・シーン。この終わり方だけは、ぼんやりとシリーズ構成を始めた時から想定していた。しかしこの場面に至るまでは、到底初期に思いつける範疇では有り得ない膨らみを、他のライター陣、演出家の方々によって築かれてきた。それを経ての終わり方なのだから、意味合いがまるで違っている」。
新宿中央公園、最後に残った「ゾーン」が消えていくのを見つめるテイマーとデジモンたち。小中氏「四角形のモザイクが明滅する。これも手間の掛かる処理だったと思う…」。ここから流れる「3Rrimary
Colors」(作詞:山田ひろし 作・編曲:太田美知彦)。はっきり三人の歌が聴けるのはここが最初で最後。小中氏「何より、この曲の雰囲気、ローズの美しい和音と三人の歌声がここで流れるということが重要だった」。詩の内容は第一部のテイマーたちの心境だが、何故かラストシーンに曲が合い、じんとくるのだ。
インプモンとアイマコも来ていた。インプモンは自分のテイマーだと紹介する。小中氏のこぼれ話「2018年に、割と本気で続編番組「デジモンテイマーズ2020」という企画書を描いた時の想定では、この二人がメインの一軸になる予定だった。勿論、タカトたちも描くが、これについては後に書くかもしれない。いずれにせよ、実らなかった」。テイマーズ02なんだよ、ニューテイマーズなんだよ!笑。もし実っていたらと思わずにおれません!!
どうしてもジュリに謝りたいインプモン、でもそんなの慣れてなくて言葉に詰まる。ジュリは何と俺の生存を心から喜んでくれた。俺を許すってのか…?小中氏「ここで歌頭。タカトが「なんで戦わなくちゃいけないんだろう?僕はただ傷つけたくないんだよ」が流れる。これがテイマーズだった」。マジ泣けるよここ。く~!
謝ろうとしたのに先に許されてしまい戸惑うインプモン。その動揺のせいだけでない、体が変化している。デジモンたちはみな光を発し、退化してしまう。抗議を覚悟で、ジャンユーがそこに現われ謝罪する「しかし、これが(二つの)世界を守る、唯一の方法だったんだ!」。
ゾーンに吸い込まれ消えゆく幼年期デジモンたち。タカトはまた会えると信じて、ギギモンを手放す。ガードロモンだったカプリモン。マリンエンジェモンは本来ルカモンという幼年期があるが、ここはそのまま究極体。サイバードラモンだったホップモン、インプモンだったヤーモン、クルモンはそのまま、ロップモンだったチョコモン、テリアモンだったグミモン、レナモンだったポコモン、ギルモンだったギギモン。約束だね、タカト、楽しみだねと言いながら消えていく。野沢さんの演技!とてもかわいい姿になった末に消えてしまうという別れ方、泣かずにおれようか。やばし。
ほぼ消えるゾーンを見つめるテイマーたち。ジェンは振り向き、涙顔のまま首を横に振り笑顔。セリフこそないが、父や大人たちを許したのだった。小中氏「勿論、気持ちの整理など出来ていない。しかし聡明なジェンは、父たちが決して、デジモンと子どもの別れなど意図していなかった事も理解したのだ。/山口眞弓さんには申し訳なかったが、一番重要な場面は、映像だけで見せたかった。最終回で一番見せたかったのは、ここだった」。ジャンユー、膝を着き男泣き。そしてゾーンは消滅した。
後日のまつだベーカリー、カジュアルな服の麗花と山木が買い物に来ている。小中氏のボヤキ「ヒュプノスのロゴ入りパーカー、とうとう商品化されなかったなぁ…」。笑、ニーズはあったと思いますがね。一方、恐竜公園も淀小も元通りに。やる気の充実した浅沼先生の姿も。
最後のタカトのモノローグは、サイレント(台詞なし)処理というシナリオでは物足らないと梅澤さんが足したらしい。「こうして僕の生活は、ギルモンが現われる前と何一つ変わらなくなった。ギルモンと、出会う前の…」。「3PrimaryColors」はきっちり全曲流れ、美しく終わった。冬枯れの公園、ギルモンホームの近くで何かを感じ取り向かったタカト。デジノームが飛び去った後のそこには何と、ゾーンの光が…。タカトの笑顔で終幕。
小中氏「私が、ギルモン・ホームで再びデジタル・ワールドへの架け橋がまだ、リアル・ワールドにはあるという終わり方にしたのは、今思うと「貝澤さんなら、こういう終わらせ方をさせるだろうなぁ」と思ったのだろう。/意外と貝澤さんは、私以上にウエットさを避ける印象を抱いていた」。あんな大きな犠牲を払って確保したDWとRWの境目が、早くも危うくなっている事に私はちょっと驚いた。未来への希望のある終わり方ではあるのだが。
デジモン、DWが非日常という世界観の作品、少々難解で粘着質でしたが、アドとは違ったまた良いものでした。お疲れ様でした。
(2022/6/25 記)