デジモンアドベンチャー第28話「追撃!日本へ急げ」感想
脚本:まさきひろ 演出:今村隆寛 作画監督;信実節子 美術:飯島由樹子
8人目の選ばれし子どもをつぶしに、光が丘へ軍勢を向けるヴァンデモン。子どもたちの奮戦虚しく、あと一歩でゲートは閉じてしまう。
タイトルコールは太一、シルエットはドクグモン。「にほん」でなく「にっぽん」と読まれています。
城を出て、ゲンナイの家に招かれる一行。束の間羽を伸ばし情報とごちそうをチャージして、ヴァンデモンが魔法の力で開けたゲートを再び開ける謎に挑む。皆の信頼で謎を解く決意を固めた太一は、光子郎を指名した。さてどうなる…
●ゲンナイ:ヴァンデモンの出陣を知らされても、残念とだけで落ち着き払っている。ゲートを開く方法がないではないと、勿体付ける。そりゃあ「やいジジイ」と言いたくもなるわな。なぜ出てこなかったかは、出不精だからといういい加減のようなはたまた大真面目なような理由付け。小説では「(黒い歯車を埋め込まれた)背中の古傷が痛んで」とある)。人間でもデジモンでもないと自称。実体を持たず、またデジモンなら持っているデータ・ウィルス・ワクチンという属性も無いと。謎はかえって深まったと言える。選ばれし子どもとは、「この世界とお前たちの世界を救うために選ばれた子どもたち」との事、選んだのは誰なのか、ゲンナイは明言を避けた(小説では「ホメオスタシス」と光子郎に答えている)。DWで唯一頼りになるゲンナイは、一行の幸運を祈り送り出す。
●ゲンナイ宅:敵に見つからないよう、ピンクの湖(小説によるとテンプ湖)の湖底にあった。湖の中に階段が現われるシーンは、モーゼの十戒の海が割れてエジプト軍から逃れるエピソードが元ネタか。塀に囲まれて池もある立派な庭園を擁する日本家屋がそれであった。ここでお琴の効果音とうぐいすの鳴き声が和風な雰囲気を出している。淡水なのに周囲を海水魚のタイ・ヒラメ・チョウチンアンコウが泳いでいるが、ゲンナイ作のメカだと。光子郎以外のデジヴァイスを接続するアダプタ等、デジモンアナライザーの機能追加はわかるけど、もう、自力で何でも作っちゃうのね。呑気で淡々とした風なので独居はさみしいからとそんな人間味のある感情をお持ちとは意外。供した食事は、食後を見ると、ご飯・味噌汁・焼き魚・レモン汁をかけるつまりは唐揚げ的なもの、という和食のよう。しかしメカ作りならともかく、一人なのにどうやってあの人数分の調理をしたのだろうか。ナノモンの隠し部屋のように、データをいじるとかで実体化が可能なのか?
●光子郎:7人とテントモンが眠る夜中、独りゲンナイに食らいつく。薄暗い部屋、二人の長い影、静けさは際立って、流れるのは光子郎のテーマ。DWにある全てのものは人間の世界のに流れているデータから出来ている。この世界が変だとしたら、データが壊れているか欠如しているとゲンナイ。光子郎の探求心に応えつつ、就寝を促すやさしい声かけも。
太一の指名を受け最初は驚いたが、7人の心は一丸となって、光子郎に期待。仲間からの温かい言葉を背に受け、推理力全開。カードの配置を理論的に推理し突き止める。
●太一:やいジジイ、と相変わらず口が悪い。「まぁいいや、適当にはめ込んでみようぜ」は爆弾発言であった。1枚でも間違えると別のパラレルな世界へ飛ばされたり、人物が不完全に復元される可能性もあるというから、絶対にミスは許されない。リーダーとしての自覚はなかった彼だが、他の子からの信頼を一身に受け、今まで多くの謎を解いてきた光子郎を指名するという選択に踏み切る。そして、最後の一枚は太一の判断に一任される。おそらくは、サッカーという勝負事で培った瞬時の判断力がものを言った。
自身のパートナー・アグモンでなくゴマモンのカードを選んだのは「アグモンのを記念にとっておきたかったかったから」と後で明かしていたが真偽はいかに。伏せた二枚から、「開け、ゴマモン」と語呂合わせなゴマモンを、光子郎と対照的に理屈でなく彼らしい直感で選んだと私は推測する。「開けゴマ」の元ネタは、「千夜一夜の物語(アラビアンナイト)」の一篇とされる「アリババと40人の盗賊」に登場する、扉を開ける呪文。未知の扉を開き、新しいものと出会う比喩表現にも用いられる。なぜ胡麻なのか、諸説あり。ゴマは重要な作物で、収穫期になるとそのさやが成熟して開くので、農民の収穫への祈りとして唱えられた、など。ちなみに私のハンドルネームの半分はゴマモンのゴマから採用してます。
●丈:「大変だろうがその力を信じなさい」とゲンナイに言われ、重責に一人へこんでしまい、空がフォロー。そんな弱い面もあるがどっこい。カードの推理が煮詰まった時に、大きな舵を切ったのは普段及び腰な丈その人であった「僕はお前に任せる」。個人的には丈のような奥手の二人称が礼儀正しい「君」でなく雑な「お前」だったのは意外。ここで流れ始めるSevenのインスト版がムードを盛り上げる。年長者として無責任ではない渾身の采配。本当に成長したなあ、わたしゃ泣いちゃうよ。それを受けて他の子も次々と、太一への信頼と冒険の継続を口にする。
●ゴマモン:光源が湖からとわかり、様子を見にいくと申し出たが、オナラを疑われた末に置いてきぼり、かわいくて、笑。
●パルモン:セルフイメージはきれいなのに、ミミには本音で美しいと思われてないのが傷ついちゃう。
●カード:デジ文字でデジモン名の記載があるカード。カードをはめ込む石板に、古くから魔よけやシンボルに用いられた五芒星の穴が九つ。ゲンナイが所有していたカード(クワガーモン、アグモン、ガジモン、アンドロモン、エレキモン、ユニモン、デジタマモン、ドリモゲモン、トノサマゲコモン、ゴマモン)の10枚うちよくわからない紛れ込んだ1枚を除いた9枚をはめ込む必要がある。カードの配置に子どもたちは悩む。太一は「いい奴・悪い奴・汚い奴」、丈は「小さいの・普通の・大きいの」ヤマトは「弱い奴・まあまあな奴・強い奴」、空は「住んでる場所よ、陸とか海とか」、どれも明確な根拠はないし、はずれの一枚がどれかもわからずじまい。光子郎は石板を、ネットのオカルトのサイトで見たという(そんなとこも行くんだ、意外)。小説ではアレイスター・クロウリー(イギリスの著名なオカルティスト・儀式魔術師・著述家)みたいだと言っている。彼の推測は「ワクチン・ウイルス・データ×成長期・成熟期・完全体」、そうするとアグモンとゴマモンのカードがだぶってしまう。でも拍手でみんな感謝する。他人と距離を置く癖のついている光子郎にとって何よりの報酬だったであろう。
●ドクグモン:昆虫型の成熟期。普通で大人しいデジモンだったが、コンピュータウィルスに感染してから、触れるだけで腐食させてしまう呪われし毒の塊となってしまった。必殺技は、凶悪な牙から発せられる毒「スティンガー・ポレーション」。アトラーカブテリモンの対デビドラモン戦で城は崩れつつあり、ゲートを前にして退路を断たれた一行に多数で襲いかかる。こいつもヴァンデモンに敬意を払い様付けするだけの知性はあるデジモン。技を受け、ガルルモン・トゲモン・イッカクモンは毒でしびれてしまう。が、親玉らしき一体を超進化したワーガルルモンが倒し、ぎりぎりで一行はゲートを通過した。「地獄に道連れよ!」と言っていたから、自分が悪事を働いている自覚はあったということか。そしてドクグモンは城の崩壊と運命を共にした。
明転。開いたゲートから一行はこの世界に招かれたと同じ激しい流れに呑み込まれ、気づくとキャンプ場にいた。ここではSevenのヴォーカル版が流れる。甘く切ないインスト版から、快活でスケール感のある曲想へ。広がる青空、夢なんかじゃない、冒険したのもデジモンがいるのも。確かに日本へ帰還したのだった!さあ、8人目を救いにいざ!
●ヴァンデモン:テイルモン・ピコデビモン・ウィザーモン・デスメラモン・バケモンらしき兵を従え光が丘に現われた模様。そこでは通信障害が発生していた。
<ドクグモン:田野(たの)恵さん、現めぐみさん>東京俳優生活協同組合所属、声種はアルト。こなせる役柄は幅広い、ちびまる子ちゃんの野口さんなど。堂々とした憎らしいドクグモンを演じて下さった。
次回予告:ようやくゲートを開けて現実世界に戻れた7人。だが、既にヴァンデモンは8人目を探すべくマンモンを使って光が丘で暴れさせていた。食い止めるべく、子どもたちは…。
2025.3.30. 記