デジモンアドベンチャー第33話感想

デジモンアドベンチャー第33話「パンプとゴツは渋谷系デジモン」感想

脚本:浦沢義雄 演出:角銅博之 作画監督:直井正博(原画も直井さんお一人) 美術:飯島由樹子

8人目が見つからないまま、子どもたちはヴァンデモンの手下との衝突を繰り返していた。その8月2日、芝浦で8人目を探したヤマトは、タケルを母のもとへ送っていくため渋谷方面へ。

タイトルコールとシルエットはパンプモンとゴツモン。異例にもコールの最後は笑い飛ばしてます。浦沢脚本ということで、またも変な期待をしてしまう。

●渋谷系:1980年代後半から1990年代にかけて、渋谷を発信地として若者の注目を集めた音楽とファッションの文化。音楽ではピチカート・ファイヴ、フリッパーズギター(小沢健二と小山田圭吾、スチャダラパーなどのアーティストが代表的で、その音楽はオシャレでリラックスした雰囲気が特徴。彼らは洋楽を中心に渋谷で入手できる大量のレコードを聴き音楽制作に生かした。ファッションで言うとカジュアルでギャル男系・お兄系・109系・古着を活かした渋原系などがある。具体的にはラフなアイテム使いやデニムの腰履きなど。…というわけで、パンプモンとゴツモンは別に「渋谷系」とは関係が無く、単に流行り言葉の雰囲気を借りて引用しただけと思われる。現に、作中に渋谷系の音楽やライフスタイルは一切出てこない。ただ「ここがデジモン世界でも有名な渋谷!」とパンプモンが言っているから、断片的な情報はDWでも知られているのだろう。

●パンプモン:斧の刺さったカボチャというシュールな頭部をもつパペット型の完全体。成長期のような小柄だが強力な攻撃力を持つれっきとした完全体。ハロウィンの時期に発生していたコンピュータウィルスの突然変異、という都市伝説があるが悪質なウィルスではなかったので性格は悪くない。必殺技は巨大なカボチャを空中に出現させて敵を押し潰す「トリックオアトリート」。無印以外のシリーズにも多数出演しており「怖くてかわいいルックスが女の子に大人気」と紹介される人気者。

ゴツモンとはレベルが違うがすごい仲良し。ヴァンデモンの手下で8人目を探すはずが、渋谷に降り立ってその雰囲気が気に入り遊ぶ気満々。細かいことだが、登場時の音楽は渋谷系では全くなく「エテモンのテーマ」笑。パチンコ、放尿、ギャルをナンパ、信号機へのいたずら、ショーウィンドウへの侵入、ソフトクリーム盗み、犯罪的な行為に大した悪意はなく「何にも考えてなーい」、どこか憎めない。出てきた目的は8人目探しと聞いてヤマトらは身構えるが、パンプ「渋谷の方が楽しくなっちゃってv」、ゴツ「俺たちすっかり渋谷系デジモンになっちゃった~!」(背景がカラーの集中線、笑)。いち渋谷系好き、オザケンファンとして、どこがじゃとツッコんでもいいですか。ところで日本円を持たないはずなのにどうやってパチンコ店で遊べたのだろうか。

ヴァンデモンに対面すると「様」を付けているが、不在の場面では呼び捨てにしていた。どういう経緯で配下になったかはわからないが、そもそも忠誠を誓うつもりなどないのであろう。ヴァンデモンに紋章を奪わぬことを叱責され一度はヤマトらを追い詰めるが、舌の根が乾かぬうちに「選ばれし子どもたちと戦うより渋谷で遊んでた方が楽しそう」、ゴツ「そうそう、俺たちと一緒に遊ぼう」それがまさに本音なのだろう。もっと別の形で出会っていたらと思わずにいられない、あっけない最期。

●ゴツモン:鉱石データをまとい、強力な防御力を持つ鉱石型の成長期。やんちゃで陽気な元気者。必殺技は超硬度の鉱石を頭頂より射出する「アングリーロック」。ゴツモンも複数の作品に出演している人気者。

●ヤマト:タケルのパタモンへの叱責をやさしく注意する。子どもたち一同の中では一番大人っぽい容姿だが、パンプとゴツに成人の服を着させられ、ああまだ小学生なんだと笑っちゃいました。タケルに至っては平安貴族の帽子などとんちんかんなファッションを着させられ、ガブモンはクマの着ぐるみ。一体どういう品揃えの店ですか。「いい奴らだったのに…何も殺すことないじゃないか!」と怒り、流涙まで…。「あいつら、ほんの少しの間だったが、俺たちの友だちだったんだ、ガルルモーン!」友情の紋章発動、ワーガルルモンに超進化。

●タケル:4年前離婚しタケルが奈津子(CVが坂本千夏さんゆえの命名)と住む三軒茶屋は、渋谷から東急田園都市線で二つ目の駅。シングルマザーなのにバリバリいいとこ住んでますなあ。稼ぎがいいのか、養育費を十分もらっているのかどちらかでないと住めないエリア。流れるのはヤマトのテーマ。時刻は7時7分、小学生の外出としては遅い時間。この後の騒動に食われた時間を考えると、ヤマトの帰宅があまりに遅くなるのは親としてとても心配です。周囲に気を使っていたのか、「送らせろよ」「わかった」兄弟だけだとなんか会話が自然なイイ感じ。地下鉄で渋谷駅まで来て、そのまま三軒茶屋駅に向かうつもりなら、その地下鉄は東急田園都市線と乗り入れている半蔵門線に違いないので、おそらくは芝浦付近の捜索を終えて都営三田線芝公園駅から乗車し、大手町駅は複雑すぎるので次の神保町駅で半蔵門線に乗り換えたと推測する。ハイ、鉄子なのでこういうの楽しいです!

●ガブモン:パンプとゴツに出合い頭にヴァンデモン配下のデジモンと認知、ガブモンに進化するも、戦うどころか一緒に逃げ回る羽目に。パタモンを「そんなに執念深い奴じゃないんだけど」と評しているのは興味深い。「あいつらじゃ戦う気がしない」ごもっとも。しかもヴァンデモン再来の時にはヴァンデモンに嘘をついてかばってくれたし。

●パタモン:タケヤマ(私はヤマタケよりタケヤマですな)のやりとりに「別れるのが辛いの?」と図星の発言をし、タケルを怒らせてしまう「いくらパタモンでも、兄弟のことに口を出すな!」。タケルは甘ったれと思われるのが嫌だったのだろうか。それで不意に降りたのが渋谷駅であった。全ての騒動はここから始まってしまった。「待ち合わせと言えばハチ公前」という会話を聞いてハチ公前へ向かう、離れてしまったことを反省していた。ワーガルルモンの苦戦、パンプとゴツの死にタケルも反省すると気持ちが届きパタモンはエンジェモンに進化。デジタマに戻って以来、現実世界での初めての成熟期への進化であったが、トコモンに退化はせずに済んだ。それだけ強くなったのだろう。一旦つかえが取れてしまえば、タケルと大の仲良し。

●ヴァンデモン:パンプとゴツが命令よりも遊びたいのが本音とは当然把握しているであろう。一度は泳がせるが再来時に「お前たちにもう用はない」と宣告、躊躇なく抹殺してしまう。ワーガルルモンは同じ完全体だが悲しいかな格下、劣勢に追い込まれる。しかし、相性の悪い聖なる力を持つエンジェモンの登場を機に、勝負をお預けにし去っていく。ヤマトとタケルたちの心に、深い傷とヴァンデモンへの恐怖を残して。渋谷の夜空に、二つの流れ星が。ここのピアノ曲も良いんですが、音楽集に未収録。未収録の良い曲が多すぎるので、音楽集Ver3を出すことを切望します。有澤さんはもう居なくて、新曲は出ないのだから。。

●女の子:いわゆる渋谷ギャルを描きたかったのだろうが。耳ピアス6つ鼻ピアス1つ、緑のバンダナに茶色のバサバサヘア、薄紫のアイシャドーと口紅、へそ出し紺色キャミソール、両腕に赤・黒・黄色のブレスレット、白い腕時計、カーキのハーフパンツ、厚底サンダル、これって渋谷系??強いて言えばヤマンバギャル?小汚くまるで色彩に統一感がないド派手さ。こんなギャルでも欽ち〇んの仮装大賞見てるんだ。

●テイルモン:八神家のマンションの屋上にて、ヒカリを監視している。そして8個目のデジヴァイスは、誰の目にも止まらぬカラスの巣の中に。ナレ「のちに彼らは知ることとなる、それがまだ大いなる戦いの序章に過ぎなかったのだと。やがて8人目の選ばれし子どもが自らの運命を悟った時、戦いの炎は一気に燃え上がり全てを呑み込んでいくことになる。それはもう間近に迫ろうとしている」。大いなる戦いか、その壁の厚いことと言ったら。

<パンプモン:寺田はるひ(現・七緒はるひ)さん>スチール・ウッド・ガーデン所属の声優・歌手。成城学園中・高・大学卒のセレブ。父は有名なレーサー、母は元タレントで、その離婚に伴い寺田と離縁し芸名を七緒とした。大学の同級生に映画監督の深作欣二さんの息子さんがいて、深作作品に出演し演技の面白さに目覚めたという。おばさん役、ヒロイン役、先生役など幅広く演じている。

<ゴツモン:杉本ゆうさん>東京俳優生活協同組合所属。声域はアルト、小さい頃から声の低さがコンプレックスだった。映画「風と共に去りぬ」の吹き替えで声の低い声優の演技に魅力を感じたのが声優を志すきっかけの一つであったという。個人的に思い入れがあるのは、「とっとこハム太郎」のまいどくん、ねてるくん。

<女の子:朝井晴美さん>所属は現在フリー。「フルーツバスケット」の木之下南など演じられている。

次回予告:テイルモンには悲しい過去と失われた記憶があった。だがウィザーモンの導きで、真実はいよいよ明らかとなる。そして8人目とは…

2025.4.22.記

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