デジモンアドベンチャー第34話感想

デジモンアドベンチャー第34話「運命の絆!テイルモン」感想

脚本:吉村元希 演出:川田武範 作画監督:伊藤智子 美術:清水哲弘

8人目をめぐる子どもたちとヴァンデモン勢の密かな戦いは続く。8個目のデジヴァイスは一体どこに。そんな中、ヴァンデモンは本拠地をお台場とし暗躍。

タイトルコールとシルエットはテイルモン。心を新たにした彼女ではなく、まだヴァンデモンにかしづくポーズである。今話の内容にそぐわないが、シルエットに動きを持たせようと意図したためか。

待って待って、探して探して…8人目と8匹目との運命的な再会。しかしそれはヴァンデモンの悪辣さによって引き裂かれてしまう。

●太一:名簿探しに区切りをつけたのか、リビングでスイカを食べながら(太一が食べるシーンはないから、食べたのはアグモンとヒカリだけかも)テレビニュースを見ていると、ヤマトから電話。ヴァンデモンのやり口に焦る。そんな夜だった、敵と思ってきたテイルモンが身を挺してヒカリをかばい、8匹目のデジモンと明らかになったのは。事情が変わったとなれば、太一の決断と行動は手堅くも素早い。短時間だが気心が知れたのか、テイルモンはさっそく彼をファーストネームで呼び捨てている。ヴァンデモン相手に、テイルモンに加勢するものの…

●ヒカリ:ウィザーモンがデジヴァイスを発見した直後の場面に登場し、8人目であることを暗喩している。夜にベランダへ出たのはどこかあの白猫が気になったのか。それは運命の出会いの場となる。空を飛ぶ者、二足歩行の白猫に警戒を示さないのは、デジモンに親和性の高いヒカリらしい。デジヴァイスを手にした白猫が手を差し伸べ、ヒカリが触れるとそれは発光した!8人目はヒカリであった!危険を回避するためベランダにひとり残されて、テイルモンへの想いは募る。テイルモンを呼ぶ声はお台場に響いて…

●テイルモン:子猫のような姿の聖獣型の成熟期。見た目に反して攻撃力は強く、必殺技は長いとがった爪で攻撃する「ネコパンチ」。尻尾に聖なるデジモンの証たるホーリーリングをはめている。幼年期はニャロモン、成長期はプロットモン。デジモン開発者・渡辺けんじさん曰く「ネコに憧れるハツカネズミデジモン」とのことで、小説版ではネズミ扱いであるが、アニメ版には適用されておらずネコ扱いである。

ヒカリを8人目と疑いながらも、その向けられた温かい笑顔に、一思いに殺す事ができず、ヴァンデモンには告げずに監視を続けていた。「長く独りでいると心が硬くなってしまう」ウィザーモンのことは同じ長き孤独の体験者として救いの手を差し伸べ、部下ながら親友と思っている。

生まれてニャロモンの時から誰かをずっと持ち続け、プロットモンに進化して自分から探しに出たものの出会ったのは誰かではなく残忍なヴァンデモンであった。その目が気に入らないという理由だけで激しい虐待を受け心身に傷を負った。「ずっとずっと待って待って探して探して、でも逢えない。誰だったんだろう」。この言葉は切なく胸が詰まる。それのあまりの辛さに、記憶にふたをして生きてきた。ヴァンデモン配下の絶望の日々。何のために生まれ、誰を待っていたのかいつしか忘れていた。

●ウィザーモン:魔人型の成熟期。魔法使いを意味する英語wizardが名前の由来と思われる。デジモンシリーズにおける別次元の異世界「ウィチェルニー」からやってきたさみしがり屋。シャイで、マスクで顔を隠している。魔法の杖の先には、渡辺けんじさんが生みの親であるたまごっちのようなのが付いている。必殺技は敵に雷を落とす「サンダークラウド」、得意技は相手の記憶を消す球を放つ「マジックゲーム」。02、フロ、ゼヴォリューション等にも登場する人気デジモン。

長い一人旅で死にかけ、テイルモンに助けられた。以来命の恩人(体と心の)・テイルモンに従ってきた。なのでヴァンデモンへの忠誠心はそもそもない。その彼が有明の森(正式名称は有明テニスの森公園)のカラスの巣で、迷走を尽くした8個目のデジヴァイスを発見したのは偶然ではなく運命か。デジヴァイスをヴァンデモンに渡す訳にはいかないと考え、うすうす感じるところあったのだろう、テイルモンのもとへ。「8人目の居場所はあなたの心の中にあるのではありませんんか?」とテイルモンの嫌う心を読む行為をしてまで問う。「幼い昔の記憶を取り戻すのが怖いのですか?(中略)自分の過去を思い出すのです」献身的な忠告。目を細めいぶかしむテイルモン、ヴァンデモンの入れ知恵かと疑うが、そんな関係ではない。テイルモンは、以前誰かを待って探していたはずだと。そして大胆にもヒカリのもとへ言わば直談判という手に出る。二の足を踏んでいたテイルモンの背中を押すように。ただひたすらテイルモンの幸せを願って。そしてようやくテイルモンは記憶を取り戻す。パートナーを待っていたことを。その誰かが今、目の前にいる!守りたい!

●ピコデビモン:ウィザーモンが何かを嗅ぎつけたことを敏感に察知。ここら辺は人の心を読む悪辣さと奇妙な悪運の強さを感じる。だから配下で小物なりにここまで何とか生き延びてこられたのであろう。ウィザーモンの機転の利いた芝居に騙されてはいた、そこはやはり小物。酔ったふりのウィザーモンに「お前もか」と言っているから、現実世界で酒での憂さ晴らしをしている模様。

●ヴァンデモン:「お前のその目は、やがて私に刃を向けることはわかっていた」「その目はただの反抗的な目ではない。希望の光を帯びている。夢を信じようとする光を」そこまでわかっていた、さすがに人を見る目はたけている。それでも配下に置き、虐待し、抹殺もいとわない悪辣さ。どうかウィザーモン、助かって!紋章がなくとも、テイルモンをおとりに使って、8人目をあぶり出そうという卑怯者。この後ビッグサイトへ向かったと思われる。

●アグモン:昼間の対デスメラモン戦で完全体になった負担が残っており、ヴァンデモン相手にギガデストロイヤーは一蹴され、完全体から退化してしまう。ヴァンデモンのような経験値の大きな完全体とは、互角の勝負はまだ難しいということ。

●ヤマト:三軒茶屋へタケルを送った後なのか、8人目の安否について当然気が急いたのだろう、遅いのに夜のうちに、渋谷にてヴァンデモンが配下を抹殺したという衝撃の知らせを太一に一報。同じ頃、テレビニュースは渋谷での急性貧血女性続出を報じていた。あの変態野郎のせいで。

●丈:さすが真面目な先輩、夏期講習があるにもかかわらず全ての名簿で電話をかけたと。どれだけ大変だったか、お疲れ様。ただ、見つからない太一の名簿は、空と同じクラスだったから不要なはず。「あとの手掛かりは太一の家にある名簿だけ」、というのは設定上は間違いですな。どのみち8人目探しは解決した。

●ミーコ:ヒカリによく懐いている。テイルモンからすれば「気楽なものだな。エサもらって昼寝してたまに飼い主の相手をして。そう、どうせひがみさ、確かに心を許せる者などいなかった」気の休まることのなかった幼少期、ひがみと客体視してもなおうずく心の傷と孤独。

<ウィザーモン:石田彰さん>ピアレスガーベラ所属の声優・俳優。「石田ボイス」と呼ばれる独特な声質で、ミステリアスな役やクセの強い役が多い。エヴァの渚カヲル、ガンダムのアスラン、ゴスゲの東御手洗清司郎など、印象的な役は数多い。個人的にも、あまたの声優さんと一線を画すたぐいまれな才能の方、それがデジモンに関わってくれたことはとてもうれしい。

次回予告:お台場を包む謎の霧は、ヴァンデモンの結界であった。その中で暴れまくる悪のデジモンに人々は逃げ惑う。そんな時、ミミの純真が新たな進化の花を開花させる。

2025.4.27.記

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