デジモンアドベンチャー第37話「完全体総進撃!きらめくエンジェウーモン」感想
脚本;吉村元希 演出:芝田浩樹 作画監督:海老沢幸男 美術:清水哲弘
自ら8人目を名乗ったヒカリは囚われの身となった。一方ウィザーモンはテイルモンとヒカリに本物の紋章とタグを渡そうと。
タイトルコールとシルエットはエンジェウーモン。
●ヒカリ:ファントモンに拘束され、フジにてヴァンデモン・テイルモンとご対面。「娘、お前はなぜ自分から名乗り出たのだ。私が何をするかわかっているのか」「何となく」「ではなぜ」「みんなを苦しめるから」「んん?」「あなたがみんなを苦しめるから!!(決意の大声)」「フフフフ。向こう気の強い娘だな」幼い女児を直ぐに殺さず言動でいたぶって楽しむ変態野郎!嫌ですねえ。向こう気とは、相手に負けまいと張り合う強い気持ち、心意気。自分の身の安全よりも皆を苦しめる元凶への怒り、とても意志の強い子。正義感というより生命を傷つけるのが許せないやさしさ。ウィザーモンを映した瞳が涙で潤んだ。デジヴァイスを手にしたらこっちのもの、光の紋章が発動しテイルモンはエンジェウーモンへ超進化!それは白衣の天女!あの子猫が。聖なる美しさにみなうっとり。
●テイルモン:8人目発見で首実験は終わり、しかし困難の本番はここから。対面してヒカリの名を口にしてしまい、8人目だと証明してしまう。ついにヴァンデモンに抹殺されようとしたが、カブテリモンとリリモンが攻撃し、ピンチを免れた。ウィザーモンにとっては必然の行為であったが、テイルモンの認識としては悲劇に「巻き込んだ」だろう、それは辛い。顔を崩して泣くテイルモンと、微笑んでこと切れたウィザーモン、涙。
●エンジェウーモン:キャラデザに関して、放映されている海外のキリスト教圏では「天使様なのに恰好がエロティックだ」と少々問題になったらしい(日本のクリスチャンがどう受け止めたかも自分としては知りたいところ)。独特の宗教観を持つ日本ならではのキャラデザということだろう。「ヴァンデモン、選ばれし子どもたちの使命をじゃまし、現実世界にまで浸食した挙句、わが友ウィザーモンを亡きものにした、その罪の大きさを知れ」徳光さんの演技カッコイイ!セイントエアーでヴァンデモンは動けなくなり、パートナーデジモンには力がみなぎる。完全体の必殺技を集結し、エンジェウーモンはホーリーアローを放ち、ヴァンデモンを貫いた。聖なる力の完全勝利!
●ウィザーモン:リリモンの石化を魔術で解いたこと、8個目の紋章を持っていたこと、タケルと丈の証言で、ヤマトと空の疑念を払しょく。まず自分を信用してもらえなければ、テイルモンを救えないので必死だ。「借り」と言うからには、テイルモンへの想いだけでなくヴァンデモンへの恨みを根に持っていたのは彼の性格から言って個人的に少し意外だった。そしてあまりに悲しい犠牲。「すまない」「何がだ」「こんなことに巻き込んで」「いいんだ、君に会わなかったら私は意味のない命を永らえただけ。君に会えてよかった」「ありがとぅ…」。この最後のやりとりの最中は、さすがにヴァンデモンも攻撃してこなかった。そこは美学に一応の礼を言おう。ウィザーモンはテイルモンにだけ忠実で、テイルモンがヴァンデモンから離れて安らかな日を送ることをひたすら願っていたのだろう、自らの命を引き換えても構わないほど。テイルモンが7体のデジモンと離れて苦労しながらも、闇に染まり切らなかったのは、ウィザーモンのおかげがあっただろう。
●太一:紋章の光で催眠から解放されたミミからの8人目発見の報に、ヒカリを案じながら、ミミを連れて移動。ヴァンデモンがフジへ向かったのは知らないから、ひとまずヒカリを隠したアクアシティへ戻ろうとしたかと思われる。「俺の妹に手を出したら承知しないぞ」シスコン太一、そうこなくっちゃ。サッカー少年だが、投球受球の腕も確かで、デジヴァイスはヒカリの手へ。
●ヤマト:ヒカリを任されていたのに、後悔先に立たず。アクアシティに隠れていなかったことを父に叱られる、まだ自分が選ばれし子どもつまりは騒動の当事者であることを理解されていない。
●空:ヤケをおこすヤマトをフォロー。ヴァンデモンに「笑ってる余裕などないわよ!」と好戦的なきつい発言、珍しい。
●光子郎:ヤマト父に、怪獣ではなくデジモン、悪いのと良いのがいて、ガルルモンらは味方で仲間だと説明。それまでの短い時間で、味方たるこの大人にこの霧のいきさつ(DW、選ばれし子ども、ゲンナイ、ヴァンデモンについてのもろもろ)をどこまで情報伝達できただろうか。ヤマトたちに、結界の中心が球体展望台だと告げる。
●丈:太一の妹が紋章の主、8人目とウィザーモンに聞いて驚く。ヴァンデモンの手下が8匹目と聞いてさらに驚くが、タグと紋章を持っているというだけでどうやってその事実を受け容れウィザーモンを信用したのだろう。踏み込んだ描写が欲しいところだが、対話から嘘はついていないと感じた、そんなところだろうか。ヤマトたちとの合流の際の「お~い!」が素っ頓狂で、「緊張感のない丈」らしくて良い。しかし、エンジェウーモンへの進化の時、下あごを手でつかむ仕草はあんまりカッコよくないので丈ファンとしては微妙。
●タケル:目覚めたウィザーモンに「ボク タケル、よろしくね」疑うことを知らぬ無垢さでウィザーモンに親しみ、気遣う。久しぶりに会う父の足元に抱き着いてスキンシップ。本当は一緒に暮らしたいのだろう。
●パタモン~エンジェモン:渋谷で勝負を預けられた通り、アンデッド型にとって切り札となる天使型。パートナーデジモンの中でも、成熟期ながらヴァンデモンに痛手を負わせられた。せりふがカッコいい「観念しろ!」「罪を悔いるつもりはないのだな」そうそう、言ってやって下さい変態野郎に。
●ヤマトの父:期待したけれども、光子郎と共に衛星放送以上の何かやらかしたりはしませんでした、残念。テントモンの関西弁に驚く、ツッコミどころはまずそこかい、と私もツッコんでしまう、笑。ガルルモンが元はガブモンと聞かされ、デジモンなるものに心の免疫ができるのは早いようで、容体の良くないウィザーモンに対してはもう人間と同然の対応をしていた。離れて暮らす次男との思わぬ対面、頭をなで、その行動力と懐かしさに感慨もひとしおだったろう。子どもらが球体展望台へ向かうのに局内を案内した。そうそう、実際に決まったルートでないと展望台へは入室できません。でも唯一の保護者なのにそこから先へは上がらなかった、なぜ?この事態は子どもらとデジモンに任せるしかないと認識していたから?自らなすべき仕事に戻ったから?
●ヴァンデモン:7人の子どもを1人も殺さずにいたのも美学なるものか。光と相反する闇の王として、光の紋章の8人目にこだわったのだろうか。8人目が見つかったとの報告に、ビッグサイトからフジテレビへ移動。そこが決戦の地となる。パートナーデジモン完全体の必殺技をいとも簡単に無効化するあまりの強さ。だがエンジェモンとは相性が悪く、攻撃され痛手を負いファントモンを失う。そこで当然、ヒカリとテイルモンへ攻撃を炸裂させる。だがウィザーモンが間に割って入り、二人を守って散った。雑魚呼ばわりとは心外な。フジのその場所に、ファンからの命日の献花が長年続いていると聞く。
「この世界をすべて闇へと塗り替えデジタルワールドと融合し全てを統べる王として私は私のなすべきことをしてきたまでだ」と、開き直りもいいとこ。ヴァンデモンは消滅し、球体展望台は崩れ落ちる(これ、フジは許可したんスね;よくもまあ)。これで世界は元に戻る、と子どもたちは自信の笑顔。しかし、タケルとヒカリの指摘通り、霧は晴れていない。タケルはこの回でヒカリと初めて会い、同じ天使型デジモンを持つ子どもとして、以降親しさを深めていくことになる。つまりは最初のタケヒカなシーン。わたくしタケヒカ好きなので記しておきたかった。霧が晴れない理由とは?!締めのシーンはお台場の遠景。
●ピコデビモン:8人目発見は、ファントモンから直接ではなく、側近の体のピコデビモンからヴァンデモンに伝えられた。合図一つでヒカリの髪をつかんだり、デジヴァイスを奪ったり、小間使いとしてよく働く、小憎らしくも哀れ。デジヴァイスが光ると、聖なる力への苦しみから、手放してしまう。
●タスクモン、スナイモン:再登場。しつこい、苦笑。
次回予告:ヴァンデモンを倒したのに霧は晴れない。それはヴァンデモンの真の姿である魔王の復活を意味した。究極体を倒せるのか。そのカギは光と希望の矢であった…
2025.5.6. 記