デジモンアドベンチャーtri.第6章「ぼくらの未来」感想

●あらすじ:メイク―モンとオファニモン・フォールダウンモードが融合してオファニモンが生まれる。放置すれば現実世界がデジタルワールドに呑み込まれてしまうので、太一を探す余地もなく現実世界へ戻る子どもたち。オファニモンはさらに強く、苦戦を強いられる中、ハックモンが現実世界をもリブートすると告げる。何とか食い止めようとする光子郎だが、ヒカリがテイルモンから受けたメッセージ「全ての光はメイク―モンの中に」をヒントに芽心からパスワードを引き出す。すると、オルディネモンに封印されていた全てのデジモンの記憶が戻り、デジモンたちが正気に戻っていく。しかし、その隙をイグドラシルに突かれ、もうオルディネモンを倒すしかなくなると決意を固める子どもたち。西島の命懸けのおかげで帰還した太一も駆けつけ、オメガモンがまるでメイク―モンの最後の意志のようにマーシフル・モードへ進化し、オルディネモンを討つ。現実世界のリブートはぎりぎりで回避され、大輔たちの無事も確認される。ホメオスタシスによりイグドラシルは強制排除が叶い、メイク―モンを看取った芽心は鳥取へ帰る。街は復興を始め、クリスマスに皆で芽心に電話し、離れていても仲間だと伝える。

●全体を見て:02組は髪型がわかるかわからないくらいの淡いシルエットのみで、登場させないのが徹底していた。02組でもタケルとヒカリはなぜそうならなかったのかも不明だし、皆の話題に大輔たち出てこないし、そう来たか。
私としては子どもキャラの声優さんの熱演はずいぶん馴染んできて、でもデジモンキャラの声優さんをデジアドと変えなかったのは正解だったと思う。
驚くほど多くの伏線が回収されずに残り、無印・02との話の齟齬が多く、最終章もお粗末なラストと言わざるを得ない。最後にアグモンの「冒険はさらに進化する 新プロジェクト始動!」のメッセージから(映画館のみで、ブルーレイには入っていません)、続編(映画?)があるとの噂がたっている。やはり第6章での収集は不可だったか。しかし、全くの新作ならともかく実質第7章なんか出してこれ以上デジアドという作品が混乱するのなら嫌だなあ。
残念だったのは、02最終話の子どもたちの将来像との穴埋めがtri.で具体的にほぼなされなかったという点。穴埋めの続編というよりパラレルなストーリーとしてしか私の中では成立していない。無印、02で大切にされた「紋章」というキーワードが全く出てこなかったのも、続編と言い難い理由の一つだ。また、デジタルワールドのリブートが、後になってしれっと無かったことになるんじゃねという一部ファンの予想は当たってしまった、はぁ~。

●太一:西島が致命傷を負っているのに太一がまるで無傷というのは不自然。あと、ウォーゲームで機械音痴が描かれていたが、ラボで進んで機器を操作しようとするのも不自然に感じた。
大輔たちの無事が知らされてからずいぶん経ってのご帰還、遅い!引っ張るね~。ヒカリに懇願されても、オルディネモンを倒す決意は変わらず。それが大人になったっていうこと?
●ヤマト:太一不在でリーダーになり一応活躍する。ホメオスタシスでもイグドラシルでもなく自分たちの正義で世界を救うと叫ぶ。
将来宇宙飛行士になる事が示唆されるが、あと太一の予備校と光子郎の研究ぐらいで他のキャラは放置…
●空:最後に髪を切っていた理由、心の変化がわからないのは残念。キャラデザ的にも地味な髪型だし。太一・ヤマトとの微妙な関係も最終的に特に取り上げられずに終わった。何だったの。
●光子郎:ヒカリの不思議な夢?からメイク―モンのデータを解析、全てのデジモンのデータを内包している事、メイを安定させる特殊なデータが封印されている事を突きとめる。パスワードを芽心が入力するとデジヴァイスが光り大きな変化が!現実世界のリブートを絶対回避すると決意し大手柄。前々からだが、デジモンの研究者になるという将来像がはっきりしている。
●丈:これという見せ場がなく残念!冬の制服、カッコいいv将来デジモン医になるが、ここでは医の字もなし;
●ミミ:見せ場ない人その2。光ミミの進展はなく個人的にほっとした。
●ヒカリ:太一を失ったことであれほど絶望し高熱まで出したのはちと驚き。そんなに重症のブラコンだと公式で認めていいの?という感想は前章と同じく。
とうに死んだウィザーモンに導かれるが、彼の登場の理由がいまいち不明。現実世界で死んだからデジタマになれず今も幽霊のような存在でいるということか。このヒカリの不思議な夢(白昼夢?)が、後に意味を持つ。
誰にでも光と闇はある、メイク―モンを殺さない方法をと太一に迫るが断られ、自らも戦うことに答えを見つけようとする。
●タケル:相変わらずヤマトの呼び方が統一されてない。
私はタケヒカ・天使組好きなので、二人が寄り添っていてうれしい。
芽心へのメールという形で締めの語りをしたのは、将来像を少し匂わせる。空がショートヘアにしたのに気付くなど、女子への目配りは相変わらず。
●芽心:結局、何の紋章持ちかに全く触れずに終わった。光子郎はメイク―モンを「やさしく素直で、芽心との温かい思い出」云々と言っているが、優しさの紋章は賢ちゃんだし。
メイク―モンでさえ御せなかったのに、オルディネモンを海へ誘うなんて無理じゃんと思ったらできた;「メイちゃんを殺して」と言わせて、テイルモンが分離してもオルディネモンの姿は変わらず何だかんだと手だてはなくメイを看取ることに。仲間だからこそ殺す、それを殺してくれて「だんだん」なんて悲しすぎる。
●アグモン:最後まで大食いキャラ扱いが悲しく、笑えない。いや逆にそれ以外明るいエピソードを入れられなかったということか。太一の帰還を信じている姿に感動。芽心への電話で言いよどむ太一に代わり、芽心に仲間だよと伝える。
●ガブモン:ヤマトへのハグ、進化できないアグモンに代わっての活躍は良かった。
●オメガモン:他の究極体パートナーデジモンの力が集まり美しい白い翼のマーシフルモードへ進化。merciful、慈悲深い。目元の青線のデザインは涙の象徴だという。仲間を討つのはあくまで涙を流しながらの慈悲の表れということか?しかし結構弱った相手にとどめをさすという役割は、スーパーヒーローとしてややすっきりしない。
ちなみに「mercy  killing」の訳は何と『安楽死』。安楽死と尊厳死の違いをここで深く論じる気はないが、個人的にこのキャラにこの単語でストーリー上良かったのかという気は残る。
●テントモン:新妻的エプロン姿を披露。そうだよね、何かとみんなを温かく気遣うさまはまさにエプロンおかん。
●パルモン:「恐縮です」が一回目ウケたからといって、ここでも引用するのは無理があったと思う。
●パタモン:エンジェモンでなくホーリーエンジェモンでデビモンと対峙するが、負けるなんて…無印のデビモン篇を踏みにじるような展開で納得いかない。
●テイルモン:ヒカリの夢の中でメイク―モンは泣いて謝罪し、テイルモンはメイク―モンが仲間に救いを求めていると言う。「全ての光はメイク―モンの中に」とヒカリに伝える。
太一が戻ったせいか今度は正しくホーリードラモンに進化しオルディネモンに貴重な打撃を与えた。
●オルディネモン:全裸の女体姿が様々な角度から映され、キャラデザに禍々しさは出ているものの卑猥で精神衛生上好ましくない。エンジェウーモンのセクシーさとは別問題。客層に幼児や学童がいないことが前提だとは思うが、それはつまり広い世代に見せる気はなかったということ。
相変わらずやたら強くて、パートナーデジモンが負けっぱなしで何とも。結局メイク―モンには戻れず、いくら全てのデジモンの記憶云々と言われても、tri.に登場した意味はそもそも何だったのだろう・他に選択肢がなかったのかと悲しく思う。
●黒ゲンナイ:賢が解放されたというにもかかわらずカイザー姿も健在で、このキャラの扱いはもう何も言いたくない。ナレーションにデジモン解説、デジモンの良心、未来のタケルを演じてきた平田広明さんも、正直困惑したのではと思ってしまう。最後に次はデーモン・ディアボロモンと言い残して消え、続編開始の噂の根拠の一つとなった。悪の元凶なのに何の裁きもなく退場したのには驚くし、tri.の続編に出てきたらまた嫌な思いする;;
●ハックモン:安定様の使者として、中立だったはずが子どもたちに「友人」だという。何か変。ジエスモンに進化し、オルディネモンからテイルモンの分離に成功、光子郎の意見に耳を貸し現実世界のリブートを回避した。
●アルファモン:登場すらしなかった。何だったの。
●西島:地割れに呑み込まれたはずが、なぜか謎のラボに到着。そんなのが地下にあってそこに着くなんてちょっとご都合主義じゃありません?太一に未来を託しヘタレが最後に華を飾った。かっこよすぎ!ただ、流血のさまが生々しすぎて、デジモン史上最初にして最悪の描写ではないかと思う。これも客層が高いことを念頭に置いてとは思うが、ひどい描写。京や伊織がデジモンを「倒す」ことに躊躇していた描写が吹き飛んでしまうような残酷さだ。
●姫川:デジタルワールドをさまよったままフォローなし、西島も死んじゃうし。
●望月教授:デジモンの分析は皮相的だし、親子の情がほとんど描かれず、鳥取に戻ってからは姿すら出ない。もうちょっと頑張って欲しかったキャラ。
●太一の父:クレジットにあるが大したことをしゃべっておらず残念。八神母ともう一人の女性の保護者は誰なの?家族を登場させるならきちんと描いて欲しい。
●ED:ラストはロマンティックにホワイトクリスマスだけど、東京ってこの時期はまだ雪は降らないんだよね。Butter-Fly~tri.Version~、和田さんに加え宮崎さん・AiMさん・選ばれし子どもたち・パートナーデジモンが歌う、セリフの一声に思いが詰まった、最終章にふさわしい究極の一曲!これ聞いたらtri.のいろんな残念が吹き飛んでしまう。やっぱり永遠の名曲だなあ。
        

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