デジモンアドベンチャー第44話感想

デジモンアドベンチャー第44話「迷いの森のジュレイモン」感想

脚本:前川淳 演出;角銅博之 作画監督:海老沢幸男 美術:飯島由樹子

大きな犠牲に心痛める中、第二の刺客ピノッキモンが現われる。ピノッキモンの館から自力で無事戻ってきたタケルの成長。それを見て、ヤマトとガブモンは姿を消した…

タイトルコールとシルエットはジュレイモン。樹海の王たる、老いて風格ある、低く太めの声。タケルの成長ぶりに自身の存在意義を見失うヤマト。そこをまんまとジュレイモンに付け込まれ罠にはまり、太一との勝負を決意する。挑んでくるメタルガルルモンの本気に、アグモンは…

●ヤマト:タケルの庇護を自身の存在意義としてきたから、タケルの自立度の向上は存在意義の危機であった。タケルも他のみんなも、強くなった。なのに俺は変わっていない。俺は何のために存在している何者なのか。まだ小学生なのにその問いは哀しい。あんまり自分を責めないで…。そんな心の揺れをジュレイモンに付け込まれた。「自分を磨くこと」「それには覚悟が要る」「ライバルを倒せ」。湖面に映ったのが太一の姿。それはガブモンにも見えたからには、ジュレイモンはヤマトの心の中を直接操作したのではなく、湖面のデータをいじくったと思われる。仲間と戦うなどと言っていたヤマトだが、実は迷いがあった。「わからない、くそ、俺はどうしたらいいんだ。友情の紋章、なんでこんな俺の紋章が『友情』なんだ!」そうなんだよね、これには私も答えを出してあげられませんでした。そして結局ジュレイモンの罠にはまってしまう。最初流れるのはまたも「涙の行方」。前々回、前回も同じ曲なのは、「子どもたちの心の揺れ」というテーマで三話とも通底しているからだと私は解釈しているが、選曲スタッフ(西川耕祐さん)と演出さんの意図やいかに。そしてヤマトの動揺には「Seven」のアコースティックヴァージョン、さらにガブモンの決意にはいわゆる必殺シリーズのような曲をというオファーで作られた曲が流れる(これも「歌と音楽集」に未収録なので曲名は不明)。何とも贅沢な劇伴で、盛り上がる。「迷いの森」とはヤマトの迷う様そのものであった。

●ガブモン:「わかったよ、ヤマト。ヤマトはヤマトの思うようにすればいいよ。何も、太一みたいに突っ走るばかりが正しいわけじゃない。きっと、ヤマトにはヤマトにしかできないことがあるはずだよ!」「俺にしか、できないこと」「それを、二人で見つけようよ! そのために必要なら、オレは、ヤマトのために戦うよ!」頼もしいすごい献身ぶり、強いパートナーシップ。紋章の発動。でもガブモンはわかっている、ヤマトが仲間も友だちも友情も信じたいということを。これは懐深くて切ないよね。

●太一:8人揃ってなきゃと焦りを口にしており、ヤマトとミミの反応を一度は内省していたが基本的な前進姿勢は全くブレず変わっていない。なのでヤマト不在に文句を言い、思い悩んだりはせず。

●丈:ヤマトとガブモンの離れてゆくのを唯一目撃していた。用を足しに行っただけかとって、あのタイミングでトイレとかってあり得ないと気付いてくれてれば。ヤマ丈派、失意。逆に言えば、23話の友情の紋章のやりとりがあったからこそ、丈はヤマトにふと目が行ったのでは。

●ミミ:8人揃ったからって、戦ったって、とまだグリーフワークは終わっていない。47話でようやく区切りをつけ前進できるのだが。ウンチをわしづかみし投げ返すという開き直りの超絶リアクションに、敵も味方も驚愕。このウンチ、なぜか固形を保っています。べちゃべちゃだったらギャグとして成立しづらいからか。

●空:ヤマトをくん付で呼んだり呼び捨てたり。だが太一をくん付で呼ぶことは今まで一度もないので、太一は盟友だがヤマトは太一と比べ少しだけ距離があるように聞こえる。太一の「空耳か?」のあと。空とミミが目を合わせる。そっちの空ミミですかい、ご愛敬なシーン。

●ヒカリ:誰にも聴こえぬ声を、また聴く。今度は気のせいでもなく、ヤマトの声でないという確信もある。声の正体は45話で明らかになる。ということは、前回聴こえたのは私が推測した、ピノッキモンの心から漏れた声ではないのかもしれない。

●ゴマモン:「ガブモン、どこにいるんだよっ」この一言にさえゴマの愛嬌が詰まっていて、耳に残る。私だけでしょうか笑。

●テイルモン:「誰だって、一人になりたい時はあるもんだ」とヤマトに理解を示す。ヴァンデモン配下で、自身も、そんな時があったのだろう。

●ピノッキモン:もう遊びは終わりだと宣言、これは恐るべし、殺人劇の始まり。「殺す」を連呼、よくキッズアニメとして許可が出ましたな。ヤマトをジュレイモンに任せ、他の子をさて文字通り高みの見物。タケルがやはりお気に入り、嫌われてますが笑。ガーベモンを「死刑に」と言ってるが、これは制裁でなく言葉通りの処刑を意味するのであろう。ジュレイモンに「負けるかも」「足りないもの」と言われ、貫禄の完全体をあっさり処刑してしまう強さ。唯一の自分の理解者であったのにジュレイモン哀れ。消し去ったものの重さもわからぬ愚か者。

●ジュレイモン:ウッドモンが進化し非常に高い知性とパワーを得た植物型の完全体。樹海の主であり、ピノッキモンの従者。森に迷い込んだデジモンをさらに深くへと抜け出せなくし、さらに枝のような触手やツタで敵を取り込んで自らの栄養としてしまう恐ろしいデジモン。必殺技は、口にすると死に及ぶ木の実「チェリーボム」。CVは菊池正美さん。礼儀正しくヤマトに接触し、図星を決め、作戦に成功する老獪さ。最強の二匹を戦わせれば。ピノッキモンには「心」がないという弱点を見抜いており、進言したが抹殺されてしまう。知らない事はないほどに知性が高く情の機敏を理解しており、レベルとは逆に、ピノッキモンをどこか孫のように想い気にかけていたのではないだろうか、合掌。

●ガーベモン:パソコンの「ゴミ箱」が進化した、突然変異型の完全体。「これでも完全体だ」とナレで紹介されており、その実力は汚物系らしくない強さを誇る。ゴミ箱の中はブラックホールとなっている。必殺技は「ウンチバズーカ」。ウィンドガーディアンズの一員。CVは平田広明さん(と、竹内さん?)。成熟期の、ピノッキモン曰く「へなちょこ攻撃」では束になっても倒せず。一体目はリリモン、二体目はメタルグレイモン、しぶとい三体目は究極体・メタルガルルモンに倒された。


最後に一言付け加えるに、これでこの回の感想が書き切れたとは現時点でも思っていません。


知らんジジイに説教されて無視できず悩むってパターン、ドラマCD「手紙」も同じなんだよね…ヤマトってそういうキャラ??

次回予告:遂にメタルガルルモンとウォーグレイモンの二大究極体バトルが勃発!ところが、ヒカリに異変が起きて重大な謎が…

2025.6.2. 記

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