デジモンゴーストゲーム第21話感想

デジモンゴーストゲーム第21話「蜘蛛ノ誘惑」感想

脚本:山口宏 絵コンテ:宇田鋼之介 演出:野呂彩芳(クレジットにはないが、角銅博之氏が『演出のチェックのお手伝い』をしたそうです) 総作画監督:二階堂渥志 作画監督:李少雷、佐藤敏明、武内昭、金澤龍、權容祥 (2022/3/6 放映)

<あらすじ:公式サイトより引用>
(私の注釈:サイトのリニューアルに加え、例の東映アニメへの不正アクセス事件もあったためかしばらく未更新であった。)
宙のもとに、いきなりやってきたソニアと名乗る女性。彼女は宙の母の友人で、昆虫の研究者なのだという。そんなソニアに誘われ、商業ビルで催されているイベントへ遊びに出掛ける宙。清司郎、瑠璃の三人。だが、それは恐ろしい罠だった。なんとソニアは、人間を食料にするアルケニモンの変身した姿だったのだ。襲いかかって来る、アルケニモンの部下であるドクグモンたち。果たして宙たちは、不気味なクモの巣の張り巡らされたビルから、無事に脱出できるのか!?

●全体を見て:録画のタイトルには「…脱出不可能!?恐怖の罠」と追加されている。
山口宏さんは「百鬼夜行」「占イノ館」を担当。シスタモンシエルに、フェレスモンと、どちらも話の通じない壊れちゃった悪い敵の話。宇田鋼之介さんと言えば以前東映アニメにフリーで居て、個人的にワンピのSDの印象が強い方が何でまたデジモンに。野呂彩芳さんは「口縫男」「百鬼夜行」「占イノ館」を担当。武内昭さん、アニメーターで有名な竹内昭さんの間違いでは?
アルケニモンの罠は狡猾で、パートナーデジモンの善戦虚しく全員捕らわれてしまう。ガンマモンの間一髪、グルスへ進化!ここでキター!13話ではボコモンが殺されたショックと激情で自ら進化したが、今回はガンマモンの意識がなく、生き物の直感なのか死に直面していきなりの進化。アルケニモンへの非情な容赦のなさは13話と同じ。他に対応策がなくあのままでは全員が食われていたから、殺戮は必然。実はそんなに悪い奴でもないのではと思わせる。現に宙は対話を試みた。しかしその時ではないと意味深に拒否、ガンマモンに退化してしまう。このように悪意しかなく実害もある敵デジモンに関しては、罰が与えられる方が作品のコンセプトとして納得できるのだがどうか。ただ、あまりに非情な手段なのは気になるが。

●宙:第三者に自分の子どもの頃の話をされて気まずそう、いい描写。ソニアの誘いに乗った張本人。まあデジモンに見えない変身ぶりだったので仕方ないか。物知りのアンゴラモンも、やな感じに敏感なガンマモンも気がつかなかったし。
やめろという命令がやめてくれとの懇願に変わり果ててのグルスの登場。ガンマモンに戻って少し安堵の表情。それを見下ろす謎ガルゴモン…。

●ガンマモン:前話で獲得した三形態への意図的な進化にて、突進するのにウェズン、飛ぶためにカウスへと。一度退化しても空腹のままですぐまた進化できるのはゴスゲだけの設定?

●グルスガンマモン:気を失い餌になる寸前のガンマモンが死の淵からの覚醒、やらなきゃやられる弱肉強食の原理、グルスガンマモンへ進化。デスデモーナの描写(アルケニモンの瞳が泳いで上転、体が霧散)は良くも悪くもエグいよ~。これも作り手としては抑えた描写なのか…。
グルスに話しかける宙、だが「まだその時じゃねぇんだよ」と拒否られて。白地に影な人間とデジモンの対比が美しい。「その時」とは?宙がデジモンに寛容でいられなくなるような場合のこと?
デスデモーナとは、シェイクスピアの「オセロ」の登場人物。名前はギリシア語の「不運な魂」に由来する。本作では、宇宙繫がりで天王星の第10衛星の名からくると思われる。

●瑠璃:一顧客だったのか、モールの閉鎖を知っていた。情報収集力をほめられるも、喜ぶどころかはあ?と疑念。ソニアと一番関係が浅いせいか、はたまた女の勘か、一歩引いてソニアが怪しいと一番ににらむ。

●アンゴラモン~ジンバ―アンゴラモン:大量のドクグモンに消耗するも瑠璃を守り抜いてみせると断言、ナイトの心意気。「朝の蜘蛛は福が来る。夜の蜘蛛は盗人が来る。そしてデジモンの蜘蛛はもう来るな」。「朝蜘蛛は親の仇でも殺すな、夜蜘蛛は親でも殺せ」との全国的に存在する言い伝えが元ネタ。朝蜘蛛が現われると、待ち人が来る、福があるから大事にし、夜の蜘蛛は泥棒が入る前兆、悪い事の兆しだから排除するというもの。今回もモノローグにフォローはなし。

●清司郎:頭脳をほめられ警戒心が解かれてしまう。いくら色恋に疎いと言っても、あの美人だしね。

●ジェリーモン~テスラジェリーモン:進化すればドクグモン一体ずつなら駆除可能。だが、数があんまりです。

●アルケニモン(ソニア・モリーナを名乗る):ギリシャ神話の「蜘蛛の女王」の姿をした、魔獣型の完全体。昆虫型でなく魔獣型なのがミソ。全てのドクグモンを統べる女王であり、知性が高く非常に狡猾、短気で凶暴。人間のような姿に変身できる。必殺技は、切れ味の鋭いワイヤーで敵を切り刻む「スパイダースレッド」、腹部に隠れている無数のドクグモンで襲う「プレデ―ションスパイダー」。
寮に客が入るのに、入り口で部屋の主と直通ですか。例の受付があるはずなのに。どういうセキュリティ?
配偶者の有無を区別する女性差別的なミセスではなくより中立的な「ミズ・アマノカワ」と呼んでいるのは驚き。未だミセスやミスが通用してしまう日本の今日にあって、うれしい限り。脚本家さんの見識か。いや、国際的にこれが当たり前なんですけど。
イベント「驚異の昆虫ワールド展」が罠。タクシーを待たせてるって、宙なんかその間お茶入れてますけど、どんだけ待たせるの。「不思議なお友だち」ガンマモン名指しで言うてる時点で怪しいと思わんと。しかも清司郎と瑠璃の「友だち」のことまで知っているなんて超怪しい!宙は果たしてそこまで母に話したのか?疑問が。でも擬態が精緻で人間の姿だから疑わないのか;
研究テーマは「より良き進化の可能性の探求!」各体の進化の状況を冷静に観察しつつ、早く食べたいとよだれを流す猟奇性、まさに狂気の沙汰。山崎さん怪演!誤解を解いたり逃げ得だったりのパターンはあり得ない。学者たちを食べ殺したことも含め配慮の余地はなく、グルスによる爆殺も止むなしと思う。
02ではマミーモンと共に憎めない悪役で、非情な最期を遂げた。また、眼鏡は外していなかったので、今作が初の顔見せ。今作では確信犯的殺人鬼で同情の余地もないが、またも恵まれぬ最期は何の因果か。
声は山崎和佳奈さん、青二プロ所属、02のアルケニモンの懐かしくもうれしい再演。コナンの毛利蘭役が有名な方。同志社大工学部卒というリケ女。

●ドクグモン:昆虫型の成熟期。もともとは大人しかったが、ある時強力な電磁波の嵐に巻き込まれウイルスに感染。以来、触れるだけですべてを腐食させる、コンピュータウイルスに寄生された体になったという。全力で逃げようとも、その八本の足の移動力で相手が疲れ果てるまで追跡を止めない。必殺技は牙の毒「スティンガー・ポレーション」。今作では、脳の味が落ちるからと毒牙は使わず、数で押していた。アルケニモンが抹殺されてからは、統率を失いどうなったやら不明。あれだけ数がいたのだからその顛末が省略されたのは残念。

●黒?色付きガルゴモン:セリフはなし、謎。黒アグモンといい、何?

●宙の母:所属は国連や政府の機関などではなくNPO と判明。日本の難民援助のNPOは、ウクライナがこんなご時世だから触れると、現実には「難民支援協会」「難民を助ける会」というのがある。
宙がガンマモンについても伝えていたのは実に意外。宙自身も謎を抱えている状況のまま、信じてもらえないから黙っていると思ったが。というわけで、作中に宙と連絡している描写が無かっただけで(意図的?)、宙は母とは連絡を取り合いかなり込み入った話もしているという事だ。そうならネグレクトの線は薄くなったが、厳しく言えば中一を放置同然なのは変わりない。
母親に関しては21話にして初めてのネタバレ。今後もっと家族の事が(瑠璃や清司郎も含め)描かれたらうれしいのだが。良き相談相手だったボコモンも不在となったし、中学生だけで困難に立ち向かうのは、各シリーズを見ていた者として惜しい。
事が済んでのメールのタイミングが最悪。ソニアという知人が来日するとの情報。という事は、ソニアさんは実在しアルケニモンが事前にソニアの情報を得てなり切っていただけなのか。だとしたら本物のソニアの風貌はどんなだろ。

●学者:声は金本涼輔さん、青二プロ所属の中堅さん。

●重役:セリフがあるのは2人だが、学者の他にスーツ姿は4人いるから、このビルの今回の被害者は5人。脳を食うという「ぐしゃぐしゃ」「ずぶっ」というウエットな効果音、オイこれ日曜朝のキッズアニメだぞ?!グロテスクすぎやしませんか。いやいや作り手にとってはこれでも抑えた描写なのか…。脳を食われれば当然絶命、助かった目撃者も深いトラウマに襲われるであろう。後味悪い。
声は中根徹さん、青二プロ所属、主に俳優業や映画の吹き替えをされている名脇役。二人目は既出の中村光樹さん。

●次回予告:最後に清司郎の包帯のアップ、メインは清司郎なんだろうか?

(2022/3/12 記)

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