デジモンゴーストゲーム第33話感想

デジモンゴーストゲーム第33話「死霊ノ囁キ」感想

脚本:佐藤寿明 絵コンテ:- 演出:高戸谷一歩 総作画監督:二階堂渥志 作画監督:村山綾音、澤木巳登理、Eugene Ayson、Noel Anonuevo (2022/7/10 放映)

<あらすじ:公式サイトから引用>
ひょんなことから死にかけ、生と死の狭間の世界に迷い込んだ清司郎。なんとか現世に帰ってきたものの、その日を境に彼にだけ不気味な声が聞こえるようになる。その声に合わせて、まるで彼を死にいざなうように起きる危険な事件の数々。清司郎はついに事故に巻き込まれ、再び生と死の狭間の世界に連れ戻されてしまう。そこで待っていたのは、死者の魂とだけ友達になれるデジモン、セピックモン。ずっと清司郎のことを呼んでいたセピックモンは、彼と友達になるため、清司郎をあの世へ引きずり込もうとしていた。

●全体を見て:録画のタイトルには「…死へと呼び込む謎の声」と追加されている。
大変忙しく、今回も、書けるのこれだけかあというあきらめとともに送る。
テーマは私の想定外の「臨死体験」。日本では文春文庫の立花隆著「臨死体験」が最大の文献だろう。清司郎が調べていた通り、花畑やトンネル、或いはまばゆい光の世界を体験する事例は多いよう。ただ、体験者はそれらの光景に言われもない充足感を感じたり、絶対的な崇高な存在を感じたり、生還すると人生に前向きになったりする事例が圧倒的に多いから、清司郎が怖くて二度と味わいたくないと感じたのは、セピックモンの故意なる事例だからだろうか?
生と死というデリケートな問題がテーマ。お盆だから、こういうテーマをセレクトしたんかな?軽々しく扱ってよい題材ではないが、まあ許容内。臨死体験はそうあるものではないので、二度も臨死状態になる清司郎が哀れすぎる。
何話にもわたって被害者の立場に置かれた清司郎が、今回も危険にさらされる。この扱いはメインキャラとしてちょっと不遇。今回のように主役を張る(といってもあくまで被害者としてだが)ぐらいないとかわいそう。デジヴァイスと携帯電話を繋ぐという機転を利かせたのは唯一見せ場となったシーン。
マミーモンの試作薬を試すのに名乗りを上げた宙。好奇心と先輩への敬愛とは言え、危なっかしい。清司郎のパートナーたるジェリーモンがそれを押しのけて志願したのは、絆が感じられて良かった。
マミーモンが病院に居ついているのや、ピッコロモンとベツモンの再登場など、既出のデジモンの再登場とその後がわかるのは大変楽しみで良い。もはや人間界でデジモンが共存するのは珍しい事ではなくなった。とすると、ゴスゲの行きつく先は?まだ見えない。
今話も一話完結のパターン。セピックモンに明確な強い殺意があったのが、悪意でないだけに余計怖い。ジェリーモンから罰を受けていないし、恐山送りも懲罰というより環境を変えてやっただけで、人間を死にいざなってはいけない罪悪ということがどこまで伝わったのかも不安なところ。

●宙組:清司郎の付き添い係でバトルもなし。「先輩」と呼んでおいて「寮長」と言い直すところに、最期かもという事の深刻さがうかがえる。
清司郎が電話をかけてきたことで、「行って帰ってこられる場所にいるはず」と推測、あくまで冷静に希望を捨てず。

●瑠璃:セピックモンをかわいいと。不気味なお面姿なのに、その感性がわからない。

●アンゴラモン:清司郎が聞いた声をマミーモンのところへ持っていき分析。アンゴラモンはデジモンについて博識なので瑠璃に頼りにされている。現に、状況からセピックモンを思いついた。
「人間15年、生死の狭間をさまよえば、これまさに夢幻のごとし。友は作りたし、命は惜しし」。セピックモンを誰がどうやって青森まで運んだのか不明だが、アンゴラモンは現地ではなく恐山の光景のワイプとして登場。スタッフがそこまでしてポエムを詠ませる執念を感じて可笑しい。「人間(じんかん)五十年、化天(げてん)のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり」天界と比すれば人の世の五十年は短くはかないという織田信長の言葉が元ネタ。けどなあ、友を作りたがっていたのは一方的にセピックモンで、命が惜しいのは清司郎。なんで文章一緒くたになってるの?

●清司郎:一度目はピッコロモンの思わず使ったビットボムで臨死状態に。二度目はセピックモンの手配で向かって来る自動車をよけた際頭部打撲して。賽の河原と三途の川のような、川渡りも臨死体験でよく見られる事例の一つ。賽の河原とは、子どもが死後に行き、苦を受けると信じられた冥途の三途の川のほとりの河原。子どもは石を積み続け、塔を作ろうとするが鬼にいじめられ壊されてしまい、菩薩が子どもを救うとされる。石を積むのは、親より先に亡くなった罪を償うため。
大企業のITコンサルティングもしている。学生ながら起業して社長になった光子郎を思い起こさせる。
若いし持病はないのだろうから、救急隊員の言う「主治医」とは最初にMRI検査をしてくれた医師のことだろう。目黒が最寄りで、MRIがあって、脳神経外科もしくは神経内科がある病院は複数あり、聖地は絞れない。東邦大学医療センター大橋病院、東京医療センター、東京共済病院等。
予告について前回コメントした時の頬の光は、涙ではなく照明でした;
かくれんぼにハラハラさせられる。

●ジェリーモン~テスラジェリーモン:二度目の臨死状態の清司郎に何度も電撃を流すも虚しく。助けたくて必死なのだろう、せつない。試作薬で生死の狭間に着いたらみなぎる力、セピックモンに有無を言わせず清司郎を奪還するという見せ場!テティスモンに進化するまでもなくセピックモンを現世にひっつれてきた。ダーリンに対する独占欲の強さも見せた、気の無いふりして実はぞっこんなのがかわいいじゃん。

●セピックモン:友情のデジメンタルで進化した魔人型のアーマー体。図鑑によると、仮面の異様な力により死者の魂と会話できる。通常はDWの密林深くに棲み、めったに人前に出ない。一説には死者の魂だけが友達であり生きている友達がいないという。必殺技は死者の魂を封じ込めた呪いの武器「スピリットブーメラン」。
死者としか友人関係が結べない特性から、偶然死にかけた清司郎に目を付け脳内に呼びかけ、死なせて友人にしようとするというホラーMAXな展開。呼びかけがまた、ぐちゃとかズタズタとか血とか生々しく残忍な殺し方ばかり。そういう意味では悪意がないとも言えない面がある厄介者。
声は斉藤彩香さん、あれ、ピロモンで出られていた方のこういう形での再演。可愛らしい声だけに、死を仕掛けてくるとこや真剣になった時に、お面なので表情がないし、よけいに怖い。「今日は帰さないよ」とつぶやいた時の凄み、声優さんてやるなあ。

●マミーモン:東映大学病院に居ついているようで、人間界に馴染んで、解けた誤解を元に本当に人助けしてくれているのがうれしい準レギュラー。非業の死を遂げさまようデジモンの死霊たちを呼び出す事ができるという。けど活躍したのは試作薬の開発だけ。
「バイタル」とは、血圧・脈・呼吸などの生命活動の数値・状態の事。ここの場面の脚本の医事考証はされていないようだ。臨死状態ならバイタルは安定しておらず、血圧や脈の測定不能、呼吸停止、瞳孔散大などほぼ生命活動が一時停止しているはず。なので「目立った外傷もなくバイタルの正常な」臨死者は医学的にあり得ない。それは遷延性意識障害の患者(いわゆる寝たきりで意識が戻らない病態)との混同だと思われる。
声は忘れてしまうので書くと、菅生隆之さん。

●ピッコロモン:いくらなんでもあの狭い部屋でビットボムを放つとは、ガンマモンに噛まれた反撃にしては大技過ぎた。他にも今後もなんかやらかしちゃいそうで心配なデジモン。死なせかけたんだから謝罪が欲しいところ。声は前と同じく吉田小南美さん。

●ベツモン:クロックモンの監護に文句たれながらも実直に従っているのがうれしい。声は岸尾だいすけさん、早速の再登場がうれしいし、声もたった数言なのにモブベツモンでなく岸尾さんというのがスタッフの乗り気が見えて良い。

●店員:声は既出の宮園拓夢さん。

●救急隊員:声は既出の橘内良平さん。

●鬼火:鬼火(おにび)とは、日本各地に伝わる怪火(空中を浮遊する正体不明の火の玉)の事。一般に、人間や動物の死体から生じた霊、もしくは人間の怨念が火となって現れた姿と言われている。
声は既出の川口桜さんと、後藤恵里菜さんは、同じく青二プロのジュニア枠の方。

●恐山(おそれざん、おそれやま):青森県にある日本三大霊場の一つ。9世紀ごろに天台宗の円仁が開基した。山中の奇観が死後の世界に似ていることから、「死ねば魂はお山に行く」「河原に積み石をすれば死者の声が聞ける」「お山へ行けば死者に逢える」といった信仰が生まれた。イタコの口寄せでも有名。

●宙のデジモン調査ファイル:作中で説明できなかったからの偶発的な措置か、それとも今後連載となるのか。「宙の」と謳っていながら肝心の説明のメインはアンゴラモンだし、瑠璃も清司郎もしゃべっているから、どこが宙?という感じ。

●次回予告:鱗とスプリット・タンと言えばヘビ。人間で敢えてスプリット・タンにしているなら、ピアスやタトゥーと並んで心理学的に一種の自傷行為に当たる。そういう方面のエグい話ではなさそうだが。登場デジモンはわたし的には不明。「家族が」と言ってるけど、宙の両親が出るとは思えない…。

(2022/7/17 記)


               もどる