デジモンゴーストゲーム第35話感想

デジモンゴーストゲーム第35話「人狼(ひとおおかみ)」感想

脚本:森地夏美 絵コンテ:- 演出:池田洋子 総作画監督:石橋大輔、金久保典江 作画監督:酒井夏美、大山康彦、GU BIN、QIAN JIN YI (2022/7/24 放映)

<あらすじ:公式サイトから引用>
一夜町(ひとよまち)には人狼が出るらしい──ネットの噂に興味を持ち、一夜町に住む瑠璃の親戚の家へやって来た宙たち。それは単なる噂ではなく、街の人々が夜な夜な化け物に襲われるという被害が続出していた。一夜町には古くから伝わる伝説があり、百年に一度、人狼の祟りが人間を襲うのだという。しかもその伝説に月夜野家が関わっていることを知り、驚く瑠璃。次はいつ、だれが襲われてしまうのかとピりつく人々。町の老婆から「祟りを止めるには月夜野から生贄を出さなければならない」と聞かされた瑠璃は……
(私の注釈:「街」「町」と一貫性がないが、田舎ぶりから考えて繁華街ではなく「町」が妥当だろう。なぜ突然子どもたちが瑠璃の血縁の田舎町へ来たのか、ネットの噂云々は本編に描かれないので、あらすじの記述に頼るしかないのはちょっと説明不足。)

●全体を見て:録画のタイトルには「百年に一度、人間を襲う祟り」と追加されている。またも「…」がないので、逆に今までなんであったのか知りたい。
古い伝説・因習にとらわれた保守的な町の人々。これ、私も都会の下町育ちで地方住まいの経験もあるからわかる、田舎の独特の閉塞感。清司郎の言うようなわびさびなんてものじゃない。もっと重くて煩わしい。ただ「子供にそんな事」などと否定派もいる様子。さくらそっちのけで婆さんが仕切っていく。敬老は日本の良い風習なんだけど、こんな婆さんに仕切られちゃ終わりだなこの町は。
そんな「町」の伝説を、瑠璃の勇気と信念で打ち破っていく。でも、最後に伝説はやはり伝説として残り続けるという含みのある終わり方が深い。
人狼が本当にいるのか確かめようとする瑠璃に、アンゴラモンは釘を刺すものの止めはしない。自身が守ると誓っているから。その正体がデジモンと判明してからは、瑠璃は揺るがない。相手がデジモンなら、アンゴラモンと一緒に対応していけるという自信があったから。それが超進化へと繋がった。
ラモールモン、進化が来ると予想はしていましたが、あまりの獣っぷりには腰を抜かした。デカくて強いのはかっこいいんだけどね。演技も一変。
「狼」というからには、もう少しウルフ感のあるデジモンだったらよかった。ヴィジュアルが化け物には違いないがヒトにもオオカミにも見えないキャラで残念。他のデジモンという選択肢はなかったものか。

●宙組:「オレ前乗る」あ~わかります、現在は封鎖されているのだが、子どもの頃はバスの一番前の席に座るのが楽しみだった。それと同じかな。
サチ婆が「手遅れになるかも」と判断し町民を促すよそ者の中二って何。生意気言っちゃって、ちょっとカチンときた。
べテルガンマモンの段階で毒にやられ戦力外に。

●瑠璃:人狼の伝説を知らなかった。つまりは親がこの古い町を捨て都会に馴染み、瑠璃に伝説を一言も語らなかったということ。しかも、瑠璃が行くこと自体には反対しなかったようなので、そこにどんな想いがあったのかは想像するしかない。もしかしたら多忙で、行くのは瑠璃の単独の判断だったかもしれない。
大昔にここらを治めていた名門・月夜野家の末裔という新事実!本人は当事者とも知らずサチ婆に会いたがる、結果…。
閉鎖的なムード、古い因習に反発し、自ら生贄を志願して化け物の正体を確かめようという肝の据わりようは、中二女子にしてお見事。意地っ張りとも言う。「迷信に振り回されてすごすご帰るんじゃ何だか負けるみたい!」と強気。こわっ。
ヒトオオカミといよいよ遭遇、恐怖が煽られる。瑠璃の表情が見もの。
瑠璃にだけ見聞きされたヴィジョンは何だったのか。月夜野家の血は受け継がれて騒いでいた模様。でも、瑠璃は両親と同じくそれを他人に口にする事はなかった。伝説はあくまで伝説。ちなみに「伝説」というのは歴史的事実(人名、地名、事件など)を交えて不思議な事件を不思議なりに「事実」として報告するものであるから、事実無根とはそもそも違う。なので、600年前にはこの町に人狼に因んだ何か歴史的事実が本当にあったのだろう。人類史上、猛獣との共生に伝説は付きもの。
ピンクと薄緑というテーマカラーにリボン付きのファッションはまあまあかわいい。白無垢姿も印象的。

●アンゴラモン~ジンバ―アンゴラモン:廊下にて、ガンマモンとジェリーモンの口をふさぐ姿が可笑しい。
「勇気と無謀とは違う」確かに。でもそれを選べたのはアンゴラモンが守ってくれるとの信頼があったから。しかしジンバ―は大敗;そこで奮起する瑠璃、それに助けられてジンバ―も奮起。
「伝説も迷信も、空中楼閣。真実は深きやぶの中…」。「空中楼閣」とは、実現不可能なこと、根拠のない事、実際からかけ離れた空想的な物事。私は伝説と迷信は違うように思うのだが。表面的には、今回化け物の正体はデジモンだった。けれど、伝説の言う人狼の真実とは、また別のものなのか。瑠璃にヴィジョンを見せた何者かのように。

●ラモールモン:ラモールは仏語で死神の意。ずいぶんとまた物々しい。図鑑によると、秘められた野生本能が解放された獣型の完全体。敵の息の根が止まるまで叩き潰し続けるという直情的で自制のきかない衝動を持つデジモンだが、自身の衝動を恥じる個体もいるよう(それってこのアンゴラモンのこと?)。暴れるラモールモンを大人しくさせるには相当な信頼関係を築かねば不可能という。必殺技は、爪で敵の腹をひっかく「禍災爪」、2本の大刀を力任せに振るう「叩破伐倒」、大刀にまとった真空の刃を放つ「風牙烈巻迅」、最大の破壊力を持ち理性を全て野性に変換し大刀で両断する「豪怨毀永斬」。必殺技も物々しいですね~。
紳士・ナイトから一転、随分と野性的で凶暴。獣となって知性や理性は低まるようで、一人称が俺、発言が片言になっている。マンティコアモンとがっぷり組んで力も体格も負けず劣らず、必殺技のほんの一部を出しただけで勝利した、圧巻。

●清司郎組:ビビりすぎてうるさいと一喝され、笑。敵が毒持ちだったので、テティスモンの解毒薬が見事に味方や町の人たちを救った。戦力としては弱めだが、治癒力が頼もしい。

●マンティコアモン:ウィルス種デジモンのデジコアが好物という獰猛な魔獣型の完全体。マンティコア(ラテン語)は、伝説の生物で、ライオンのような胴と人のような顔を持つ怪物で、恐ろしい人喰いである。図鑑によると、そのウィルスへの強い執着に目を付けられ、天使系デジモンに使役されている。知性や理性はなく、他者のデータを食らうことだけが存在理由だという。必殺技は頭部と両腕の口から放つエネルギー弾「トリニティゴスペル」、三つのしっぽで敵を刺し強酸を流し込む「アシッドインジェクション」。あまりに凶暴で、使役する天使デジモンでも手に負えない事もあるという。
どういう経緯か天使系デジモンの束縛から離れてしまった乱暴者の個体。町の人の体を毒で傷つけて再起不能にしていた。最初は尻尾の毒で善戦。しかしラモールモンの猛攻に、仲裁が入らなければあやうかった。
声は高塚正也さん、青二プロ所属、アドコロのマンボモン、ゴスゲのユニモン・セーバードラモン・サングルゥモンで既出の方。

●ダルクモン:語源はジャンヌ・ダルクから。下級天使型の成熟期。常に先陣を切って戦う姿は「戦場の女神」と言われる。
ゴスゲのこの時期に出てきたというのは、デジフェスを控えて、デジモンフロンティア劇場版「古代デジモン復活!!」公開が2002年7月20日という記念だからか。この作品のボスキャラで、なぜだか歌手の上原多香子氏がはなはだしい棒読みセリフで演じた曰く付きのデジモン。
ダルクモンの見立てでは「この地に根付く伝説のデータを食べてしまい、自身をヒトオオカミとやらと思い込んでしまったよう」、そして体内のデータは全て抜き取ったと言い、手元から離したことを謝罪し約束する、その名において。 
声は斎賀みつきさん、賢プロダクション所属、個人的にはクールなイケメン少年のイメージで、今回はすっきり高貴な感じ。

●サチ婆:瑠璃の祖母・和子とは面識ある様子。月夜野家とは別の役割の家柄の生まれらしく、「水無月の雨の夜 子の刻(ねのこく:午前0時)に お堂の前へ参れ」がサチ婆に語り継がれた「生贄の捧げ方」。現代日本において、伝説を信じて疑わず、「祟り」「生贄」などと言う物騒な言葉にまるで抵抗がない筋金入りのお家柄。
サチ婆によると、伝説の人狼は、月夜野家の姫と恋に落ち、それを許さぬ武士たちとの争いの末に姫を殺されてしまうという悲劇的な存在。この悲恋と姫の死は、おそらく何かの形で事実に基づいているのだろう。
声は江森浩子さん、青二プロ所属、少年・少女・大人の女性・老婆(砂かけ婆とか)までこなす幅の広いベテランさん。

●さくら:瑠璃の親戚であるいいお姉さんだが、よそから嫁いで来た身で、月夜野の血は流れていない。よそ者だけに、伝説を信望する町の人々にたじたじ。
声は水沢史絵(ふみえ)さん、青二プロ所属、キュアマリンなど演じられている中堅さん。

●健太:化け物に伝説通りに襲われ、青黒い傷が。「健太」という命名らしからぬやつれた表情ばかり。瑠璃に絡むし、良い印象がないモブキャラ。
声は三野(みの)雄大さん、青二プロ所属、大阪芸大放送学科卒。アドコロでバコモンをされている。

●健太母:ええ、母たるもの逐一息子が心配です。声は既出の角倉英里子さん。

●町民:声は渡部(わたべ)桃花さん、青二プロのジュニア枠。既出の竹内大生さん。水希凛さん、青二プロのジュニア枠。

●団員:声は既出の權内隆介さん。宇野翔真さん、青二プロのジュニア枠、ラブオールプレーの委員長役をされている。フィギュアスケート選手の宇野昌磨さんとはもちろん別人。

●次回予告:今までのデジモンシリーズが散々テーマにしてきた「冒険」へのマイナスメッセージは衝撃だな!笑

(2022/7/26 記)



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