デジモンゴーストゲーム第52話「妖(あやかし)ノ湖」感想
脚本:十川誠志 絵コンテ:福岡大生 演出:西健太 総作画監督:二階堂渥志 作画監督:北野幸広、徐 易、あと変換できない方一人。 (2022/11/20 放映)
<あらすじ:公式サイトより引用>
「河童が出没し、人間を水中に引きずり込む」という噂のある湖にやってきた宙たち。その噂に興味を持った瑠璃が宙たちを連れてきたのだ。だが、瑠璃自身が本当に現れた河童たちにさらわれてしまう。それは河童ではなくガワッパモンというデジモンたちだった。そして彼らに「お頭」と呼ばれる別の凶暴そうなデジモンの存在。ところが、瑠璃は何故か一旦ガワッパモンたちに解放された。一体何故?ガワッパモンたちが妙な咳をしていた事から、「これは何かある、放っておけない」と思った瑠璃は、彼らにお頭と呼ばれている凶暴なデジモン、シャウジンモンの餌食になりそうになる。ところが、そこには意外な事実が……。
●全体を見て:録画のタイトルには「河童が出るぞ!湖に潜む秘密」と追加されている。
予告に出ていたのは水草をかぶっていたのでわからなかったガワッパモンであった。河童という割と人間と親しみのある妖怪が、人食いをしているという衝撃!?
シャウジンモンの数珠の傷みからくる人食い欲求、ガワッパモンの咳の原因は、夏にできたIT 関係の工場の廃液トラブルであった。正気に戻ったシャウジンモンは、住処を離れ人間のいない山奥へと移る決断を。人間とデジモンの共存の難しさがまた明らかになった。
気になるのは、既に食われてしまった被害者が元に戻らない事。つまりは被害者は食われずにガワッパモンたちが後で解放したというのだろうか。味の感想は、以前人食いをしていた頃の記憶か。宙たちが罪を問わないのはそういうことか。その辺がやや説明不足に感じた。(モデルである西遊記の沙悟浄は、元は天界の役人であったが罪を犯して天界を追われ、川で人を食らう妖仙となった。菩薩により改心し、三蔵一行に加わった。元の話では僧の姿で、河童の姿というのは実は日本に伝わってからの設定らしい)。
ガンマモンが戦闘当初からワープ進化、退化したアンゴラモンもラモールモンにワープ進化。前回説明があってさっそく、いとも簡単にワープ進化したのは、盛り上がりに欠けるように思う。絆の深まりや子どもたちの心の成長あってこその進化だと私は思うから。単なる成熟期の省略ではつまらない。ワープ進化そのものに心躍るというファンがいるのは知っているが。
いくら地方だからって、湖に架橋するなら車道もあるし照明も付けるはずだが、真っ暗闇とはこれいかに。演出の範囲?近未来という設定ならなおさら、リアリティを追及してほしいと思うのは私だけか。
それにしてもまたも中学生がビジネスホテルでもない宿で地方旅行とは、三人とも裕福な家庭だ。世間では修学旅行に行く費用さえ賄えない貧困層がたくさんいるのにと、ついリアルな令和の感想を言いたくなる。
西健太氏は、アドコロ46、55話で演出をされた方。
●宙:入浴中に、アンゴラモンがいない事になぜ気がつかないのだろう。メカなエスピモンが入浴しないのはわかるが。
バトルのメインはラモールモンに譲った形。
●ガンマモン~カノ―ヴァイスモン:ワープ進化でも時間制限はあるとわかった。完全体に進化したものの、水中戦で劣勢の末、退化してしまい、見せ所なし。
●瑠璃:原画が22人と7つの団体と多いが、なぜか瑠璃の顔がずっと不美人なのがすごく気になった。
ソロキャンパーの経験豊富な宙の忠告を無視して、朝を待たずに水辺に近づくという軽率な行動で被害に遭う。デジモン絡みなら危険は承知なのに急いだ理由がわからない。好奇心?
案の定湖に引きずり込まれ誘拐される恐怖。しかし、探しに来た宙たちに、ガワッパモンはなぜか瑠璃を解放して、もう近づくなと。
あれほど怖い目に遭ったのに、大人しく引っ込んでいないのは度胸と言っていいものか、何が彼女をそこまで奮い立たせるのかがわからない。
●アンゴラモン~ラモールモン:濡れたら体毛のボリュームが減少し違うヴィジュアルに。あんなに細いんだ。逆に言えば普段がいかにもふもふか。
カノ―ヴァイスモンの時間制限と瑠璃のピンチに、ワープ進化。登場回数が少ないので、ラモールモンの登場は楽しみ。野性的なラモールモンを指示下に置くには相当の信頼関係がないと、と設定にあるが、シャウジンモンにとどめを刺す手前でストップ、瑠璃はそれを実現して見せた、いいシーン。
「皆 すべからく すみかを欲すも 優良物件にあたるは難儀かな。 世は無常」。「すべからく」は「当然・是非とも」の意。「無常」はこの世の一切のものは常に生滅流転して、永遠不変のものはないという事。元ネタはない模様。デジモンが人間界で住処を確保する難しさから、定住に困るものもいる実情を嘆いて。
●清司郎:千憧湖が『エルフバスターズ』の神回第31話の舞台だから聖地巡礼に来た、とヲタ発言。千憧湖のモデルは調べたが、ない様子。那須高原に「りんどう湖」があるが。どんな神回か知りたいところ。
ガワッパモンの体調不良やお頭の凶暴化、それと工場の出来た時期が重なるという謎を後日に解いた。湖の水質調査を知り合いの研究者に頼んで汚染を確認、工場とも話を付けるという活躍ぶり、さすが天才とその人脈。
●ジェリーモン:浴衣選びを楽しみたいのに瑠璃にフラれてしまう。進化シーンはないが、テティスモンにて河童デジモンたちを解毒浄化するというお手柄。お話の展開に無くてはならない存在感。
●エスピモン:宙と同居だからついて来たのか、宙探しの一環か、準レギュラーとしての位置づけがよくわからない。今回は瑠璃にパシリにされてるし。当の脚本が本人に「いつもこんな役」と言わせてるし。
温泉マークの丸いものをいじっているが、あれは何?温泉饅頭?ならなぜ食べない。
●ダークリザモン:宙は想起する「だがここはお前たち人間の世界だ」。デジモン仕様にはなっていない人間界。人間とデジモンの共存の難しさを象徴する言葉。
●シャウジンモン:SHAWUDINの語源は調べたが不明。沙悟浄の通称である「沙和尚」(しゃおしょう)からだろうか。図鑑によると、DWの天界から追放された魔人型の完全体。冷静沈着であるが、とあるデジコアを封印した九つの首飾りのうち一つでも欠けると再び恐ろしいデジモンに変貌すると言われる。必殺技は、超重量級の「降妖杖」を軽々と回転させ水の竜巻を起こす「降妖杖・渦紋の陣」、杖を叩きつけ大地を砕き激流を放つ「降妖杖・滝の陣」、三日月状の刃を突きさす「月牙斬」。
首飾りが欠けると恐ろしいデジモンに、という設定を今回利用している。廃液トラブルが原因で一つ目の数珠が傷つき、瑠璃を逃がした時点で二つ目が傷つく。三つ目が傷ついて、子分のことも認識できないほど乱心。水中戦が得意とは言え、カノ―ヴァイスモン相手に圧勝する力の持ち主。テティスモンによって数珠の傷が回復したら正気に戻り、温厚なデジモンであったというオチ。
声は平田広明さん、ひらたプロダクションジャパン代表取締役、洋画吹き替え、ワンピのサンジ、最遊記の沙悟浄など、言うまでもない人気声優さん。
沙悟浄役だから河童のデジモン役なんだろうが、アドにてナレーション(将来のタケル)、デジモン解説、ゲンナイ、レオモン(、石田裕明)というデジアドの良心とでもいうべき配役をこなしていた方を、このような単発のゲストキャラデジモンの声で迎えるというのは、私としてはしっくりこない。ただ、ゾロ役とサンジ役の対決というのは偶然であろうが趣きがあった。
●ガワッパモン:音楽プレイヤーと河童のデータが融合したサイボーグ型の成熟期。図鑑によると、常に明るくノリノリで大好きな音楽を聴いているが、頭のディスクのような部分を傷つけられると涙する。必殺技は、頭のディスクを高速回転させ発射する「DJシューター」、伸縮自在の両手で放つ「ガワッパンチ」、摩訶不思議な踊りで敵の意表を突く「ガワッパラッパー」。
サイボーグ型だが、今話にてその存在はデジモンというより妖怪の河童そのもの。
お頭の人食いを憂いて、何とか食わせないよう努力していた。湖に引きずり込んで怖がらせ、近寄らせないよう図ったものの、河童が出るという噂で余計に人が集まるという皮肉な結果に。
人間界で言う「夏」「咳」という概念はないらしく、「キュウリがいっぱい食えるころ」と表現、「病気」という概念はある。
事態が事態だけに、「明るくノリノリ」な面は見られなかった。ガワッパモンたちが、凶暴化しても何とか支えようとしていたのは、それほどにシャウジンモンの普段のボスぶりが部下思いで良かったのだろう。
声は一体目は上村典子さん、青二プロ所属のベテランさん。二体目は中友子さん、青二プロと劇団SWAT所属、声優にしてナレーター、舞台女優、ちびまるの藤木くんが有名なベテランさん。三体目はピロモン、セピックモンで既出の齋藤彩夏さん。
●仲居:中学生三人が保護者抜きで泊まるなんて、よく予約を受けたな。多分、寮長が先生のお墨付きでももらったのだろう。声は既出の松嶌杏実さん。
●(初めに襲われる)若い男:声は既出の橘内良平さん。
●河童愛好家:声は既出の杉山優斗さん。
●調査ファイル:大分、福岡、茨城、岩手と河童の言い伝えは各地に渡る。それだけ河童は人間のイマジネーションを刺激する存在という事か。
●次回予告:2年目にして、清司郎がヲタな理由で楽しみにしていた修学旅行に!その先の「神様に魅入られて」しまったら?清司郎が被害者確定、では知識王とは清司郎のこと?テティスモンへのワープ進化は見られるか?
(2022/11/22 記)