デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION絆 感想

「デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆」感想

<全体について>
シリーズ20周年記念の、デジモンを見ていた世代・デジモンを知る世代によって創られた、旧作へのリスペクトとオマージュに満ちた、客観的に見ても大変良くできた作品と感じます。キャラデ、脚本、キャスティング、作画、演出、音楽どれをとっても質が高い。ただ一点の懸念を除いて。久しぶりにデジモンを見た、感動した、推し活を再開したという声が多いのは知っていますが、私はダメでした。
私は02最終話の熱烈な信奉者です。全ての人にパートナーデジモンが存在する未来。私にもパートナーデジモンが存在する未来。なのに本作は、ラストと謳いながら、02最終話の未来とスムーズに繋がらない「子どもが成長するとパートナーデジモンとの関係は解消され、デジモンは消える」という大いに矛盾したコンセプトを保持しています。なのでそこが唯一のネックとなり、続編としての本作を私は認められません。ラストと言うなら、02最終話に素直につながる展開であってほしかった。それが出来ていないという事は、その溝を補完するさらなる続編が無いと成立しません。
ただし希望はあります。ゲンナイさんが、「君たちに無限の可能性があるなら或いは(その結末を変えられるかも)」と発言し含みを持たせていることが一つ(ただし太一の耳には入っているが聞こえていないという描写)。もう一つは、強く想うなら現実化するというデジモンの世界観から、太一とヤマトのパートナーデジモンとの再会・共生の強い望みが叶う可能性。それをさらなる続編で描いてみせる事。当面の関心事は、ビギニングがそれにあたる作品かどうかという点ですが、現時点で残念ながら溝を補完する続編という雲行きではありません。ラスエボを見る限りでは、1人目の選ばれし子どもはメノアという描き方ですがこれとも違う内容ってもう何が何やら…。
子どもには無限の可能性、パワーがある、成長に伴って大事なものを失う、それは分かる。じゃあ大人には可能性が無いんでしょうか。大事なものが手元に無いんでしょうか。そんな悲しいメッセージ、大人に言わないでください。大人になることは素敵なことのはず。ひとり親として自分の人生を曲がりなりにも切り開いてきた私はそう感じます。別れを設定することでお涙頂戴作品になっているという評は悲しくも的外れでありません。
02のSDにして最終話演出の角銅さんが参加を降りたのは、自然な流れと感じます。

<キャラクターデザイン>
●そのキャラに合ったファッション路線を、具体的なファッション誌を提示して統一性を図っているというこだわりよう。どのキャラもおしゃれ。
●井村京太郎(山田京太郎)というキャラは、旧作でプロデューサーをされていた木村京太郎さん(読売広告社)という聞くところによるとオサレなイケオジさんがヒントだそうで。ええ、存じてますともそのお名前。
●モルフォモンはかわいかったのに、エオスモンはガチガチ硬い感じがして、人工デジモンというオチに納得。エオスモン・ファイナル・フォームは、巨体にして女性的で神々しくも不気味、女神に相応しい。
●アグモンとガブモンの最後の進化のキャラデ、モンスターであり人型でもあり逞しくもスタイリッシュでとてもカッコいいと私は思う。でも「あり得ない、ダサい」という酷評も見受けました、賛否は別れるところか。オメガモンの新しい進化ではありませんでした。それも見たかったな。
●ミミはアメリカに渡ったあたりから飛ばしたファッションに賛否が分かれたが私は平気で、今作もわたし的には全然OK。かわいいしやや落ち着いたかな?って感じ。

<ストーリー>
●脚本は大和屋暁さんです。成長していく子どもたちと、変わらないパートナーデジモンとの距離感。それを取り上げたのは嫌いではありません。例え大事なものを失っても、前へ明日へと進み続けるしかないのが人生、それも嫌いではありません。宿命は変えられないとしても、運命は変えられる、確かにそう思います。皆を救いたい、メノアすら救おう。何が正義か正解か簡単に言えないとこも好きです。あくまで前向きなストーリーはよくできていると思います。ただ、02最終話との整合性が取れていないという悲しさが、どうしても私に感情移入を許しませんでした。
●東京タワー上にかかるオーロラ。アウローラはローマ神話の曙の女神。知性の光、創造性の光が到来する時のシンボル。転じて、同じ語がオーロラのことを指すようにもなったという。また、エーオースも古代ギリシア語で暁の女神を指す。オーロラは渋谷、日本橋、お台場にも、そして世界各国でも見られるという報道が。そんな折、転じて中野駅前に現われたのはおなじみパロットモン。皆の連携、光子郎の采配ぶりとカウントダウンでDWに送り返されて。デジモンがある程度日常にいるのが自然な時代。さあ新しい物語の開幕。
●田口監督の意向で、太一一人でなくヤマトも加えたダブル主人公にしたのは良かったと思います。無印、02は各キャラの均等な配分に配慮したわけですが、本作のこれはこれでまあ良かった。丈先輩や大輔たちの出番が少ないのはとても残念ですが。
●オメガモンの退化と共に、意識を乗っ取られたモンたちに押しつぶされてなお言う、進んでいくんだ未来へ向かって!太一のホイッスルを吹き鳴らしての決意表明。どういう理屈か、それが皆の意識を回復させるとは。
●メノアは実は敵役、でも監督は単なる悪役にはせず共感できるキャラクターにしたかったという。大事な存在との突然の別れが深いトラウマに。だから、子どものままパートナーデジモンと一緒にいられる理想郷を作った。明日へ先へ進むことを手放して。共感はできるけれども、デジモン作品から逮捕者を出したのは衝撃的。道義的にまずいキャラは過去にいたが、「犯罪者」かあ…。それこそ、伊織たちがメノアの研究室に無断で入って調べたのも犯罪では?
●お台場海浜公園でアグモンの「太一が大人になると ぼくたち一緒にいられないの?」の後のロングショットは印象深い。海と空の青、白い橋とカモメ、逆光の小さな太一とアグモンに流れる沈黙。切なくてヤバいです。
●スマホでなくプリペイド携帯と公衆電話というのはスーパーバイザー・関さんからの助言で、「スパイ映画かよ!」との太一のツッコミは大和屋さんのせめてもの抵抗らしいですね。冒頭、初めて出るデジモンをパロットモンにしたのも、メノアの髪型も関さんの助言というから、やっぱりこの方筋金入りですごいなあと。
●夏が過ぎ次の春が来て。太一とヤマト「待ってろよ、絶対会いに行くからな!」わずかに描かれた希望。消えたアグモンとガブモン、モルフォモンは、はじまりの街で再生はしないのでしょうか?

<キャスティング>
●メインキャストはtri.からの続投で、そういう意味で違和感はありませんでした。
ただ、ゲンナイさんがtri.の黒ゲンナイからいつものゲンナイに戻っていたのは説明不足(というかあの黒ゲンナイはナシだろ)と思いました。
●花江さんの太一が今だに落ち着きません。藤田淑子さんがご存命だったとしてもキャスト変更は止む無かったでしょう。けれど私には花江さんは繊細でナイーブで内気な少年のイメージが強くて、炭治郎こそ受け容れられたものの、太陽のようなたくましい太一にはやさしすぎて何か図太さみたいなものが足りない気がしてしまいます。ごめんなさい。
●ホルモン屋にいた女性客二人に、tri.の芽心とメイク―モンの声優さんを登場させたのは良かったです。
●メノアは、複雑な背景を持つ特異なキャラで、音声特典で監督たちが言うとおり、松岡茉優(まゆ)さんが当てて初めて成立するキャラだったのだろうと思います。私知らなかったんですが本業が声優ではなく女優さんながら、アニメ作品のオファーも受けていると。宮原永海さんのようなバイリンガルでないようですが、宮原さんはウォレスで既出だし、そこは演技力で何とかカバーという事か。「このしゃべり、ルー大柴かい」という厳しい評も見ました。わかります。
●アドコロでは小林由美子さんだったし、田村睦心さんも嫌いではないんですが、光子郎に女声をあてがうならなぜ天神有海さんでないのか、tri.もラスエボも経て、まだ思います。天神さんは一応ネットで発信はされてるので引退ではないと思うんです。復活しないかなあ。これだから旧作の古参ファンはよくないのかなあ。
●ブックレットにキャスティングが省略されて載っているので、ここで書き出しておきます(敬称略)。何で載せてくれないのかなあ、スタッフもキャストも皆で作ったのに。
モルフォモン:谷口夢奈(たにぐちゆな)。アーツビジョン所属、「あひるの空」主人公・七尾奈緒が代表作。
パロットモン:佐々木義人(よしひと)。AIR AGENCY所属、名バイプレーヤー。
森川:兼政郁人(かねまさいくと)。アーツビジョン所属の若手さん。
阿部:沢城千春。ステイラック所属、沢城みゆきさんの実弟というからびっくりの、実力派若手さん。
女性客:荒川美穂。東京俳優生活協同組合所属、tri.の望月芽心役。看護師資格を持ち勤務経験もある。
女性客:森下由樹子。青二プロ所属、tri.のメイク―モン役。
アナウンサー:佐藤はな。アクロス エンタテイメント所属の若手さん、妖怪ウォッチのUSAぴょんが有名。
男:山本圭祐。ワン・ツゥ・スリー所属の俳優さん。

<作画、演出等>
●緻密で繊細かつ迫力と力のある作画は、素晴らしいです。でも東映アニメは「制作」であり、「アニメーション制作」はゆめ太カンパニーさんなんですよね。事情を知るすべもないですが、いっぱしの東映アニメ作品ファンとして実に残念です。プリキュアにはあんなに力を入れているのに、デジモンはなぜ外注、と思います。
●パソコンやスマホの画面、ホルモン屋の内装、メノアの部屋のポスターや内装、太一の卒論資料、ビール缶のデザイン、井村の部屋など細かい部分も描き込まれており見応えと情報量があった。
●冒頭の中野のバトルの疾走感は、本当に心奪われました。特にエンジェモンとエンジェウーモンの華麗な美しいバトル。被害を最小限にするエンジェモン。ただ、現実の中野を知る人には、迫力がありすぎて街が壊されることがトラウマにならないか心配します。それほどド迫力です。
●進化シーンは、旧作の進化バンク(低予算の中、角銅さんが手作りしたという)をもとに作画され、これぞデジモンの進化シーンと言える仕上がりです。
●デジタル空間への移動のトンネルはウォーゲームのそれへのオマージュ。デジタル空間自体は、ウォーゲームのは一つの完成形であり、それとは別となると、とある作品のイメージを再現したらしいのですが、私はゲームをしないので全く見当がつきません。ただ、様々な制約の中、よく描けていたのではと思います。オレンジと黒の色合いが不気味。
●朝顔、空と入道雲と雷、雨、ミミの病室から見える青空と飛行機雲、桜並木と、季節感あふれるアイテムでいろいろなメッセージを受け取りました。   
●大輔、賢、伊織が食すラーメンは、絵コンテに詳細はなく作画であのようなマシマシ(チャーシュー、卵、ネギ、海苔、あと白いのはもやし?)になった、と。すごくおいしそう。ここの音楽が02組なのでターゲットのインストで何やらユーモラスなのが楽しい。加えて、大輔の着信メロディがラーメン屋のチャルメラ、笑。音響さんがんばっています。アルマジモンが、大和屋のがおいしいと言っているのは脚本家のジョークでしょうが、海外のラーメン事情は日本並みに今や激戦。それをくぐって勝ち抜いた02最終話の大輔はとてもすごい実業家という事になります。ハードル上がってる。
●デジモンアニメシリーズで神格化されたモチーフ、蝶を使わない手はありません。メノアの髪留め、モルフォモンのキャラデ、メノアの周囲にいる青い蝶、太アグ・ヤマガブの別れの夕暮れに飛ぶ蝶。
●ヤマトが調査に利用した国立国会図書館、基本18歳未満は入館不可(ただし条件により入館可)などルールがいくつかあり結構面倒。この時代、モンも入館許されるのね。
●高層ホテルのプールは高級感があり大人っぽく、大学准教授たるメノアの富と地位と美貌にぴったり。その孤独な頬を流れる水は、つたう涙にも似て。そこを訪ねた平服太一の場違い感;
●メノアの策略がついえて、選ばれし子どもに平和が訪れた描写にて、海岸でウォレスとテリアモンとロップモンが描かれたのは、02夏映画のファンサービスですかね。

<各キャラクターについて>
●太一:太一は大人の娯楽の象徴の一つであるパチンコ店でバイト。ギャンブルが宝くじも含めるほど大嫌いな私は、パチンコ屋かよ~と気を落としてしまいました。まあ飲食店ってタイプでもないか。早明大学政治経済学部4年(某M大学中野キャンパス)、近隣で一人暮らしとなれば、お台場のマンション住まいの家庭でも家計に助けは必要だろう。
帰宅は夜遅く、食事はコンビニ。ビールにエロ本、成長していく太一、アグモンとの微妙な距離。でも手を差し出して言う「アグモン、俺たちはずっと一緒だ」。うん、と握り返すアグモン。その想いこそが大事。
大学生の小遣いで酒が飲める店を探して、ぶち阿佐ヶ谷店さんに落ち着いたというエピソード、やっぱりそういうリアリティの追求はデジモン作品ではしてくれてうれしい。
早過ぎた試作品のVRゴーグルの成果はともかく、太一のゴーグルは大輔に託したはず。なぜ太一の手元にあるのか。後日同じ型のを入手した? 
卒論は「人類とデジモンの共生について」。「共生こそが、我々の生活、人生を豊かに」「来たるべき未来について提案していきたい」と記述している。少しは吹っ切れただろうか。
●ヤマト:ヤマトのバイク、高級そう。ひとり親家庭の大学生でも買えるものなのか、作品内でのカッコよさ優先なのか。どうやら後者のようではあるが、就職せず院へ進学とか、大輔たちにお好み焼き食べ放題を確約するほど、経済的に余裕があるよう。父子家庭なのだから、余裕がある理由の描写が欲しかった。
ハーモニカを品定めする親子や、ストリートミュージシャンの姿を見るヤマト、つまりはバンドや音楽から離れてしまっていることを間接的に描写、良いと思う。
ところで、大学の講義でメガネをかけてるけど、常時使用しないのは講義以外はコンタクトってこと?? 
音声特典を聴いて、ヤマトの身近にいるのが女子でなく阿部君で良かったと、同意です。ただでさえイケメンでモテるのだから。ついでに言うと阿部君との会話の後にうつむくヤマトが印象的です。第一志望の内定を得た一般市民・阿部君に比べて、選ばれし子で院への進学は決まったもののモラトリアムで不確定な自身を振り返り落ち込んだのでしょうか。
ガブモンと別れたスポットは、ブックレットによると横浜だという。どなたか聖地の心当たりありますか。音楽から離れていたヤマトは再びブルースハープを手にしていた。
●空:華道を継ぐという描写がこれも02最終話の和テイストのファッションデザイナーという未来と違う。意図が不明。デザイナーと家元を兼業しているという可能性がゼロではないが、今作の積極的に華道を継ぐというスタンスは、ちょっと違うのでは?と気になってしまった。
戦闘に参加しないのも納得いかないというか、あの一瞬のデジヴァイスの光のリングで察しろというのは無理では。空のデジヴァイスのタイムリミットが先に来る理由は、家元という将来をもう確定したから?それも明確な描写がない。将来を確定したというなら、医者を目指す丈や会社社長としてもう何年にもなる光子郎がまず関係解消の憂き目にあうはず。
あとなぜ、02の公式カプのヤマトでなく、太一の名を呼んだのでしょう。そもそもtri.でもヤマ空じゃなかったしなあ。公式さん、どうなんですそこんとこ。
●光子郎:光子郎については、会社社長にして選ばれし子どもの参謀に変わりなく、頼もしい。tri.の色ボケな光子郎が私はあまり好きではありません。回収したエオスモンの破片の解析に成功、エオスモンとメノアの正体を暴く活躍ぶり。神童メノアをしてジーニアスボーイ(天才少年)と呼ばしめた。太一にDWのエオスモンの座標を送信しておいたのもさすが。
烏龍茶常飲は変わらず。窓から観覧車が見えるから、会社はお台場周辺と思われる。ただ現実にはパレットタウンの観覧車は2022年8月に営業停止し解体された。当時はそれを知らなくて描いてたってことか?
tri.では光ミミが公式の推しカプでしたが、今作でその描写は全くない。光子郎の恋(私は初恋と考えている)は片思いで終わった、と考えていいのでしょうか?
●丈:医大の5年生である丈先輩に関して一つ言うと、最後の病室のシーンは違和感があります。医師ではない医学生が職員である看護師を引き連れて病室の患者を訪室することはあり得ません。たまたま点滴管理に来ていた看護師と、医学生が訪室のタイミングが合っただけなのだろうとしか言えません。
あと、看護師は今どきナースキャップは廃止されています。理由はいくつか。修道女の制服だったという歴史的背景、洗濯をあまりしないので不衛生、作業のじゃま、男性看護師の増加など。ワンピースのユニフォームもほぼありません。力仕事があるので、トップスにパンツスタイルが一般的。まあドキュメンタリー作品ではないので、記号としてそれらが用いられても大目に見るのがいいのでしょうが。特に未来のゴマモンにはナースキャップかぶってほしいしな。
遅くなりましたが、丈先輩の白衣姿、私の世代で言う萌えですね!メガネのデザインも変わりましたね。薄茶のフルフレーム。コスの参考にしよう。メガネを外して床に伏していた素顔も、丈先輩マニアには萌えポイントです。
●ミミ:雑貨の販売業という事で、これも02最終話の料理研究家という未来と異なります。違えた意図は不明。
●02組:音声特典で監督らもご指摘でしたが、京が出ると明るい雰囲気になりますね。スペインから現れた京に最初に挨拶したのは賢、それとエオスモン戦で賢が京の無事を気遣ったのが何気にポイントです。「京さん」苗字だと他人行儀だし、呼び捨てにするほど密着してもいない適度な距離感。私は下世話な人間なので、賢と京がいつからどうやって明確な交際関係に発展し、深まり、結婚に至ったのか知りたいです。賢京カプのエピソードを歓迎します。
生真面目な伊織が、メノアの研究室を訪ねたのはいいにしても開いちゃったからって無断で入るのは存外でした。昔の伊織ならそんな違法行為許さなかったと思うので。
大輔はブイモンと戦ってなんぼ。ラーメンのことばかりでない描写にはほっとした。
●メノア:8年前にモルフォモンとのパートナー関係が解消。身体の一部をそがれたような喪失感を感じなくてすむ理想郷。それが救済になる、女神になるんだ、とエオスモン最終形態へ進化。プライドが高く理知的な神童の顔の奥にウェットでエゴイスティックな激情の闇を抱えた人物といったら言い過ぎか。
メノアが無意識に拒絶していたモルフォモンの遺言は「ずっと、一緒だよ」でした。そうこなくっちゃ、離れるのはやっぱおかしいよ。
●オメガモン:カリスマ性の高いデジモン・オメガモン。エオスモンファイナルフォームに一撃で退化させられちゃうなんてちょっと残念。それと、さらなる進化を見たかった。
●デジモンたち:オメガモンから退化してハンバーガーを食べているシーン、モンたちがとてもかわいい。別のシーンの、ハンバーガーショップの店名、笑。ミミの病室でお気楽に挨拶を交わしたり、テントモンがゴミの片づけをしたり、ラーメン食べてる大輔たちの膝に乗って食べたり、ガブモンがヤマトのバイクに乗ったり、モンの日常がどれもかわいい。

<音楽>
●音楽は富貴(ふうき)晴美さんです。恥ずかしながら存じ上げないので調べました。国立(くにたち)音楽大学作曲科を首席で卒業し同大学院修了、大阪府出身、東京都在住の38歳。意外とお若い。映画音楽、ドラマ、CM、アニメへの楽曲提供を多数している。クラシックからロック、ジャズまでジャンルは広く、オケの派手な曲から繊細な音で心情を表す等、印象に残るメロディーなど親しみやすい楽曲を作っているという。ジャンルの広さは有澤さんと同じですね。
冒頭のボレロは、ああデジモンの映画が始まるんだという感慨を覚えさせます。ファンの条件反射、笑。
ここぞという場面での有澤孝紀さんの音楽へのオマージュあり、旧作の挿入歌をジャズっぽくアレンジしたインストの挿入あり、主に後半の今作独自の世界観ありで、豊かな印象を持ちました。ただ自分は悲しいかな?笑、有澤さんの音楽が好きすぎて、いまだに他にあんまり興味を持てずにいます(有澤さん「音楽協力」という名目でクレジットに載ってました)。一応新シリーズでサントラが出れば買うんで、ファンとして貢献はしとるんですが。
●OP曲:「Butter-Fly」、作詞作曲:千綿偉功、編曲:渡部チェル、歌:和田光司
挿入歌:「breave heart~LAST EVOLUTION Version~」、作詞:大森祥子、作曲編曲:太田美知彦、歌:宮崎歩
挿入歌:「その先へ」、作詞:白井裕紀、去曲:Yippee、編曲:渡部チェル、歌:宮崎歩。挿入歌と言えばガツンとバトル調が相場でしたが、別離を呑み込んでの絆の進化としてふさわしい希望ある歌。Yippeeさんて、こういう読めない文字列とか数字や記号の入った名前のアーティストさんて、私は生理的にダメ。読めないことを前提とした名前って、意味不明で腹立つ。身勝手に表現しておいて、読んでほしくないの??
ED曲:「離れていても」、作詞・作曲:岡本真夜、編曲:黒川陽介、歌:AiM。岡本さんはデジモンミュージック初参加ですが、いいんじゃないでしょうか。ド直球な歌詞ですが、子どもらの進んだ道を描いた映像と共に、明るい前向きさが終幕にぴったり。

<特典>
中鶴勝祥描き下ろし三方背BOX、物語の終幕の近さを表す夕暮れのレインボーブリッジを背景に、12人と12体の穏やかなやさしいひと時。必ず一緒だよ。ディスクの出し入れをする時に傷つけないようひやひやします。20年目の宝物です。
総作画監督・立川聖治(せいじ)描き下ろしデジパックケース、新たで最後の進化形がアップで、良いです。二大主人公であることが伝わります。
スペシャルブックレットは、読み込みたいけど指紋を付けたくない代物です。
絵コンテ集は、冒頭だけですがさすがに見応えあります。
スタッフ感謝イラスト集は、様々なスタッフながら皆さんとても絵がお上手なのに驚きます。こちらこそ大感謝です。
ドラマCDは、別の機会に感想を書こうと思います。
音声特典の田口智久監督と木下陽介プロデューサーのオーディオコメンタリーは、裏話がいろいろ聞けました。デジモンへ込めた想いが伝わりました。
花江さんと坂本さんのコメンタリーは。特異なエピソードはない(薄い感想、笑)が、お二人の親しさが伝わってきた。お二人とも東京出身だが、地方へ行くと方言に馴染んでしまうとおっしゃっていた。アグモンは進化するたびに声に効果をかけるのでそれに謝意を述べられていた。オメガモンは坂本さんと山口さんの息が不思議とぴったり。プライベートで格別に親しいわけでもないのに、そしてアフレコ時に作画ができあがっていないのに、絶妙の息!お二人とも、お別れギリギリの二人の会話がとても普通だ、と印象を語っておられました。最後に、デジモンを長く支えてきたファンへの謝意が述べられました。
映像特典は、ノンクレジットED映像と、PV集(これだけで10編もあります、熱の入れ方がヤバい)です。


(2023.8.15 記)デジモンは大好きなのにぐずぐずと悩んで感想を書きそびれ、3年半が経ってしまいました。映画公開は2020.2.21(金)です。

 

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