デジモンアドベンチャー02 THE BIGINNING感想

映画「デジモンアドベンチャー02 THE BIGINNING」感想

背景色は、ルイの髪に近いブルーグレーにしました。気が重くて、公開から記述まで1年4か月かかってしまいました。

幼いルイの孤独と、ウッコモンの「はき違えた」献身が全ての始まりだった。鍵となったのは、対話の大切さ。
ブックレットの冒頭には記されている「デジモンと共に歩んだすべて‘子どもたち’へ贈る、TVアニメ「デジモンアドベンチャー02」のラストで描かれた‘決められた未来’へと向かう前に、避けては通れない物語」、と。そのこころやいかに。う~んあくまで決められた未来への続編を名乗ってますが。

プロローグを敢えて書き起こすと(見流すと内容が頭に残らないという老人の個人的な理由から)、
「この世界は可能性に満ちている。
目の前に繰り広げられる幾つもの世界は時に希望を感じさせ、
時に非情だ。
だが僕らはそれらの世界を迷わずに受け入れる。
なぜならそれは、新たな冒険の道のりへの1ページとなるから。
それは新たな可能性の始まりなのだから。」

この文が虫食い状態になり、「道のり 1」「ルート 1」となり、記号の√の下に02が配置され、アップとなり開幕。
「非情」とは、ルイとウッコモンの関係あたりを指すのだろうか。すると「新たな可能性」は、02組がルイを受け容れウッコモンとの関係を修復し新たな関係を結ぶことか。

2012年2月21日、突如東京タワー上空に現われた巨大な球体、通称デジタマ。それはある特別なデジモンが謎の青年ルイの誕生日を祝うための出現だった。流れるのはおなじみのボレロ。若いファンの中には、ボレロをデジモンの劇伴音楽と勘違いしてる人もいるとかいないとか。原曲はもちろん、ラヴェル作曲のクラシック音楽だ。青年はつぶやく「ウッコモン…」。ウッコモンとは一体…?そしてこの青年は?

「みんなにともだちを。世界中すべてのひとにデジモンを」
決められた未来って、ダメなんスか?と内心穏やかでない私。
世界中を圧倒するこのメッセージ。ルイの願いをウッコモンが曲解したもの。ビッグウッコモンは、70億の人類に強制的にパートナーデジモンを結ばせようとする。大きな間違い。02組のパートナーシップは作られたものではなく、自分や相手と向き合って心を通わせ築き上げてきたもの。

1週間が過ぎ、2月28日。21時10分20秒、同日の22時27分6秒、23時55分32秒の描写。部室に秒針が付いている掛け時計があるから秒単位の緻密な描写が可能になっている。それがビッグウッコモンの孵化のタイミングに生かされた。デジタル音痴なアナログ時計派の私としては大満足。そしてついに2月29日0時0分当日に!蘇るあのメッセージ、混乱する世界各地、かえったデジタマ!それが不気味にもバースデーソングを歌う。
 
ことの始まりは1996年2月29日(木)、16時35分14秒 ルイ4才の誕生日。さらに思い出させられる2000年2月29日、8才の誕生日。そしてディア逆のときは9才。

●大輔:まずは、台場の実家はもう狭いのかはたまた独立心からか、独り暮らしを始めたであろう賃貸マンションの狭いキッチンでラーメンを試作する姿が。
調理専門学校で学びつつ、「らぁ麺大和屋」で修業中という設定。木材を基調とした和風のわずか7席の小さな店で、値段は800円台と良心的。店名は脚本家からの引用だろう。お向かいに「トロネギレバー」「もも肉」なる看板があるから、飲食店街の中の一軒だろう。火曜日だけ店を借り切って「麺屋もとみや」なる大輔の流儀らしいシンプルな店名で11時~21時営業中。ポスターも、ラーメンの映え写真など無くシンプル。出すラーメンは醤油味が似合いそうなチャーシュー、青菜、煮卵、白髪ねぎ、海苔3枚、そして小さな白い塊は何?ニンニクやショウガなら黄色がかっていそうだから、大根おろし?さて公式によると家系だと。いやあ家系というオーソドックスなラーメンで世界相手に成功って未来、02放映当時と違いラーメンが世界的大ブームな現在からみると、ハードル上がってるんじゃ。ラーメンの出来に皆が大きな歓声を上げてるから、経済的理由でちょくちょく皆に振舞ったりはしないのか、それとも新作か。
救助されて礼を言わないルイに怒ったり、ルイが自分のパートナーに近づこうとするのを理屈抜きで応援したり、虐待する母に怒ったり、相変わらず沸点が低い熱い奴。
Tシャツの「RMN」はベタにラーメンの頭文字だろう。
「明日も俺と」「ラーメン作るぞ」(中略)「どれだけ話し合ったと思ってんだ!」グータッチ。それでこそこの二人。さあルイ、話しに行くぞ!
「突っ走ってばかりじゃ解決しないこともある。ラーメンがそれを教えてくれたんだ」へ~そんな効果もあったんですか、思わぬ学習方法は非論理的な大輔ならでは。
「あったかくなると変なのが」って、オツムの弱いオマエが言うかとツッコみたくなります。

●賢:大学2年生、警察官の試験に向け準備中という設定。才色兼備でモテモテの賢に、ワームモンの嫉妬の視線、笑
突っ走る大輔をフォローする冷静な名相棒。
「ごめん、心配かけて」と京に対して言っているから、好意は明らか。
「僕たちとデジモンは自動的に今の関係になったわけじゃない。いろんなすれ違いやケンカもしてきた。そうやってお互いを信頼できるようになったんだ」元カイザーの説得力。賢もまた、かつて孤独な少年であった。

●タケル:大学2年生で文学部という設定。ラスエボでは父子家庭のヤマトがデカいバイク乗ってたけど、タケルも母子家庭なのに母がデジモン研究で稼ぎが良いのか、バイトの描写も無いのにご立派な黒い大型車をお持ち。この車種を特定するのに熱中したファンもいたことを付記しよう。タケル風の冬ジャケットを探し入手したファンがいたことも。相変わらず帽子をかぶり続け、その上にはパタモンが乗る、笑。手元にはスマホ、ガラケーがまだ多かった時代だがそこはスタッフの配慮あってのスマホ。「全員集合!」と入力されている。
ビッグウッコモンを倒したら、6万人いる選ばれし子どもとパートナーデジモンとの絆も消えるのではと危惧する。「正論がいつも最良だってことはない」とも葛藤を口にする。おそらくは無印でのエンジェモン喪失のトラウマが関係していよう。
運転しながらのジョグレス進化は交通違反では;安全運転を。
自分タケヒカ派なので、冒頭に二人だったりラーメン屋の席が隣だったりお寺でも一緒、雪合戦、はうれしいポイント。

●伊織:剣道が終わっての着替えでいきなり半裸のサービスショットで登場したので、伊織ファンとしては腰を抜かした。最年少ながら、大人に近づいたねえと母心をもくすぐられる。
法学部への進学を決め、弁護士事務所でバイトも、と言う設定。
「デジデジ」「モンモン」、笑。パソコン部長で参謀だった光子郎にならってのことだろう、元「ハイパーマルチコンピューター部」部長、現OB。何じゃその部活;だからこの建物伊織の学校かと思ったら、ブックレットには「タケルの大学の屋上」だと。どういうこと?
山谷祥生さん、わたくし今もってしても読みづらい…(やまやよしたかさん)

●ヒカリ:「ウッコモンはかわいそう」。まずもってデジモンの立場で親身に考えられるヒカリらしい、他の誰もが口にはできない感想。
短大で幼児教育を学んでいる設定。幼稚園教諭を目指しているのだが、保育士とは全く別の資格なので、保育所でバイトと言う設定には危うさを感じないでもない。混同するファンが出てきそうと、私は心配する。
兄妹がただならぬきょうだい愛で結ばれていたが、ここでは多忙になった太一にヒカリは邪険にされているようで、テイルモンの言う通り変われば変わるもの。関係ないアルマジモンも合いの手を入れているから、一行の中ではこのブラコンシスコンは知られた情報のよう。

●京:インドでプログラミングを学びつつ、多忙な光子郎に代わって選ばれし子どものコミュニティを運営してるとの設定。
「ビンゴ!」は健在。
賢「やはり倒すしか?」京「考えるのをやめちゃダメよ一乗寺くん。きっと答えはある。考えましょう、どんなに時間が無くても」姓で呼んでいるからそれなりの距離感はあるが、ボディタッチもしてるからいい線いってる模様。付き合ってるまでいかない、友人以上恋人未満てとこか。
「出動!」の代わりに「みんな行くわよ!」と号令係。
「何イチャイチャしてるのよ!」これはこれは、腐った大賢・賢大ファンへのラブメッセージでしょうか←違う、笑。でもBLなる文化をを当然視野に入れた発言と思いますね。
「それが見つかるまで一緒に考えてあげようか?」とのぞき込むと「え、一緒っ…」おお、京さん攻めですな。賢は「京さん」とファーストネームにさん付け呼びvウッコモンについて推理する知的なところも相性良し。賢京という公式カップルを、よくぞ描いてくれました。
ところで大輔のヒカリへの片思いは全然出てこなかったけど、夢に夢中で成長したのか、それとも心変わりしたのかな?ちょっと知りたいかも。それはドラマCDにて。

●大和田ルイ:最初にファンに告知された渡辺けんじ氏のイラストは、幼いルイとウッコモンであったと判明。
デジモンという異形の目は、中鶴氏のラフ画しかも思い付きかららしいが、偶発的にしては相当衝撃のビジュアル。それを上手にストーリーに織り込んだ。目を怪我した玄関に鏡が置いてあり、それで挿入された眼球が見えるのも極めて自然な流れで描かれた。
東京タワーの頂上近くまで自力で登れるとは、異様な体力と気力。そこまで落ちなかった方が奇跡。それだけウッコモンを「清算」したかった。
「関係ない」「人間とデジモンは出会っちゃいけない。お互いを不幸にする存在なんだ」全人類にパートナーデジモンがつくのは地獄、とも。ずいぶんと挑発的。こじらせちゃってます。(ところで東京タワーの近くのお寺、聖地は実在すると思うんですが芝公園4丁目に複数お寺があり、調べてもわかりませんでした。分かる方、掲示板にてお知らせ願えますか)
「ウッコモンはぼくの幸せをはき違えてたんだから」ルイはその実情を語る。ウッコモンが先走って勝手にやった件が満載;ウッコモン恐るべし。しかしパタモンの言うように、ウッコモンが命の恩人なのも事実。実母が死なせるとは思いたくないが。
「僕は君とちゃんと話したいんだ!」。明転、ビッグウッコモンの動きが止まる。そしてルイは過去の母に語り掛ける「もっとルイ君の声に耳を傾けてあげて下さい。だってルイ君はあなたのことが大好きだから」。気を取り直す母、わずかな救いの光。ただせめて母からは、駆け寄るだけでなくルイへの明確な謝罪の言葉が欲しかった。過去の母と20才のルイが話せたのは、皮肉にもウッコモンの時空をいじる能力のおかげであった。

●ウッコモン:モチーフはフィンランド神話で、天空・天気・農作物とその自然な事象を司る「ウッコ」であると思われる成長期。マリンエンジェモン・クティーラモンと同じく、クリオネが原型で、いずれも差別化済み。
初の自己紹介をすると「ウンコモン」と呼び違えられる。ここ、虐待のさ中の下ネタ、笑っていいところなのか微妙すぎ…。
「大いなるものとちょっとだけ繋がって」いる存在らしいから、ホメオスタシスが関わっていると考えられるのだが、この設定の真意たるや。
人の願いを叶える特別なデジモン。「ぼくが願ったんだ、いつも一緒で僕を守ってくれる友だちが欲しい。世界中の人々と友だちになりたいって」
「ぼくはルイのお友だちだから君のことはぼくが守るね。嫌なことや辛いことから全部守ってあげる」、180度変わっていった人生。(ただ、初めてのデジモンという存在が好奇の目で見られるエピソードもなく大和田一家そして周囲にウッコモンが受け入れられたのはおかしい。一般社会ではなくルイの生活圏に限ってウッコモンが裏で糸を引いてたからだというならわかる。)両親を「ルイにやさしくするよういろいろしてるんだよ」献身という名目の作為。その献身はルイの思惑を遥かに超えた異常な徹底ぶりだった「死んでも本望だ、って」。その作為に驚き怒るルイは、野球バットでデジヴァイスを破壊する。それで右目を怪我すると、ウッコモンは自分の右目をルイに提供するという徹底した献身。その献身と存在意義をルイに全面否定されると、その体形を保持できず泣きながら溶け流れ散り、デジタマになった末に消えてしまう。ルイが物騒にも「殺した」とはこのことだった。残されたのは右目とと壊れたデジヴァイスと瀕死か死亡かの両親という残酷な状況。その後親戚に引き取られ、今は一人暮らしだということは、両親やはり亡くなったのでしょう。寝たきりだった父の死はある意味ともかく、身体は普通だった母までも失って。
話しに来たルイ。それを知っていた、とウッコモン。初めて腹を割って話し合えて。ウッコモン「僕たちに必要だったのは」ルイ「もっとたくさんの」二人で「会話だった」。その上で最終的にビッグウッコモンは自ら死(と再生、再会)を希望した。それを受けての総攻撃、インぺのギガデスがとどめを刺した。そして世界各地の混乱は収まる。京「ミッション、コンプリート。」叫ぶでなく、しめやかに。

●ビッグウッコモン:古代DWの大破壊が起きた刹那に出現したとされる。大破壊で次々に消えていくデジモンの悲しみから、自らの生命を犠牲にしデジタマを召喚した姿と言われる。古代妖精型の究極体。必殺技は、無数の触手が広範囲に叩き潰しえぐり取る「ヴァイオレント・パニッシャー」。

●ルイ母:ルイがハンバーグが好物なのを把握しており、きちんとした盛り付けでやさしい声かけで提供もしてるので、少なくとも夫の病前は基本的には普通の良い母親だことが伺える。ルイも基本的には母を愛していたし家庭の状況を理解していた「苦しいのはわかります」。そこが、「いわゆる毒親と被害児」とは違う点。幼児のいるワーキングマザーなのにリビングが散らかっていなかったので、几帳面で潔癖症な性格と思われ、それが虐待に傾いた一因かもしれないと推測する。あと、ルイがデジヴァイスを「プレゼント、初めてもらった」と言っているから、4才前の3才の物心ついた頃には誕生日プレゼントをもらえていなかった、つまりはその頃すでに虐待は始まっていた、あるいはうるう年の29日でないからもらえなかったのか?どちらだろう。

●ルイ父:寝たきりで遷延性意識障害もありマスクタイプの人工呼吸機を付けての在宅療法。つまり自発呼吸はある(気管切開して呼吸機を繋ぐ必要がない)が呼吸機の力を借りないと延命できぬ病状。4歳の子の親だから年齢的に老化という要因はなく、若くしての神経内科系の病気や珍しい難病、もしくは事故などの頭部外傷後遺症、が推測される。医事的には不正確な描写ではあるが機械の管だらけのスパゲッティ症候群で、介護者が万一の我が子の粗相にピりつくのも無理はない。
夫婦してウッコモンに操られやさしい仲の良い両親を演じさせられていたという戦慄。ひとたびウッコモンの手を離れると、もう生体として機能していないようで、気の毒な被害者。ウッコモンの連れてきた近所の「友だち」も、ウッコモンの作為と思われる。

●世界の子どもたち:02世界編に出てきたキャラが引用されたのはうれしいこと。名前を忘れたが、ロシアの3人、フランスのカトリーヌだったか、香港のホイ三兄弟、オーストラリアのディンゴなど。しかしウォレスとグミモン・チョコモンまで出るとは、大サービス。

この作品で私が最も心外なのは、激しい身体的精神的虐待の描写があること。単発でなく複数の濃い色の内出血、厳しい言葉がけ、雪の夜(16時台の気温で8.2度)に部屋の外への放置、約束を守れなかった時の体罰の常態化。そしてさらに、ウッコモンとのやりとりでのルイの目の流血や異形の目の挿入、ウッコモンの溶解というグロテスクなシーンも衝撃が強い。それに加えうつろな目の両親。そして禍々しいビッグウッコモン。私はえづくほどに非常に気分が悪く、また傷ついた。デジモンコンテンツにこんな描写があってほしくない。スタッフやキャストが旧作ファンだけでなく「デジモン初心者(つまりはキッズ)にも見てもらえる、見てほしい作品」と言ってしまっているからには、この強い衝撃について私は、この作品はPG12映倫が適切と考える。「小学生の観覧には、親または保護者の助言・指導が必要」というものだ。小学生に限らず、大人でも傷ついたファンは少なくないのでは。R15(15歳未満は観覧禁止)でもいいくらいだと個人的に感じる。「ホラー作品として見ると相応に良い」という評も読んだけど、私はホラーは苦手なので受容しかねた。

自分は虐待サバイバーかつシングルマザーなので、母親とルイ両方の立場が分かる。ワンオペ育児に仕事に夫の介護、実質シングルマザーだった母親を責める気にはなれないが、やっていたことはひどいのも事実。虐待という事象がまだ社会に認識されていなかった時代だから起きた「不適切な関わり」。「虐待」という表記はある種の言い逃れで、厳密に法的に言えば殺人未遂・過失致傷・暴行・傷害・脅迫・名誉棄損など犯罪に当たる。家族全員のために第三者の援助を導入すべきだったと考えるが、母やルイ自身が支援を求める余裕すらなかった事、当時十分な支援体制が児相や行政などになかった事などは容易に想像できる。だがそもそもなことにデジモン作品の新シリーズで新たにあからさまな虐待を扱う必要性があったのかは大いに疑問に思う。(ただ、02の幼少期の賢ちゃんの描写は、兄からの虐待、両親からのやんわりした精神的虐待を扱っているという認識はある。)

ルイが「選ばれし…そんな風に言うんだ」選ばれし子どもが自分の他にも身近にいる事、パートナーデジモンを持つ子が「選ばれし子ども」と呼ばれていることを知らなかったのに、自身が「世界で初めてデジモンとパートナー関係を結んだ人間」であるという自覚・確信があった事はどうもすっきりしない。ディアボロモン戦をテレビで目撃し、それがウッコモンの仕業とわかったなら、その特別な子どもたちに会いに行くアクションを起こすと思うのだが。内気ながら東京タワーに登る行動力はある子なのだから。また、無印と02で、太一たち8人以前にも何世代か前に選ばれし子どもたちがいたことが言及されている。それはルイ一人ではなかったはず。ルイとウッコモンが最初というのは、新作を作る上での大人の事情による苦しい後付け設定だと私は感じる。デジヴァイスが消えるのも同様。ラスエボの「大人になるとパートナーが消える」と同じく、お涙頂戴の後付け設定がまたもや、という感じが正直なところだ。ラスエボで感動が再燃したという声をたくさん聞いたが、私は胸がつかえたままだ。

無印のアグモンたちは、ホメオスタシスの導きで幼年期の姿でパートナーたる人間の存在を知り待っていた。そして献身的に守ろうとした。そういう揺るぎない信頼関係の基礎があった。なのになぜ、「最初」のウッコモンはルイとの間に歪んだパートナーシップしか築けなったのか大いに疑問だ。ホメオスタシスが最初のケースとは言えそんな失敗を導くとは思えない。そんなの、大いなるものじゃない。

tri.もラスエボもザビギも、無印と02の続編の体で発表されているが、続編と言うには旧作との設定の整合性が見られず、私は納得がいかない。アドコロも無印をいじった迷作に終わっている。関Pは「デジモンというコンテンツは大樹で、いろいろな枝葉がある」という様な表現を使っているが、続編な内容ではないのだからいっそ公式が「パラレルな作品」と明言してくれれば、整合性がどうのと批判する必要はないのにと思う。しかし関Pはこうも言っている「あまり整合性にとらわれるのはよくないな」と心に留めていると。でないと本末転倒になりかねないと。おいおい;どちらが本末転倒か。わたくし02最終話の熱烈な信奉者としては、ザビギの創り手たる田口監督が「最終話ありきの作品は作らない」と明言した方針に絶望する。02最終話にきちんとつながる、「全ての人間にパートナーデジモンがいる未来」になるまでの続編作品を強く願う、できれば角銅氏をヘッドに据えて。ザビギはまるで全ての人にパートナーデジモンがいる未来を悪い事態として否定するかのような形で引用しており、これもすっきりしない。「決められた未来」を汚さないでほしい。ラスエボの結末が02最終話とつながらなかっただけでなく、ザビギがラスエボと02最終話を繋いでくれる続編ではという私の期待はまたも裏切られた。旧作のファンを当てにして旧作をいじった新作を送り出す迷走はもうやめてほしい。名作を、そっとしておいて!!テイマーズ02など見たい気もするが、そこはもう我慢。

「デジヴァイスが消えるのは、02最終話でデジヴァイスが出てこないことへ繋げた」というが、これも心外だ。デジヴァイスは子どもとデジモンの絆の象徴。02最終話の未来では人物が多く煩雑になるから描かれなかっただけと考える。そもそもデジモンというオリジナルアニメである無印は、ゲーム機の販促が目的の第一であったはず。それがファンにハマって、自分のデジヴァイスを持ちたいという心境を招いた。なのにデジヴァイスを消滅させるなど、作品の当初のコンセプトを見失った笑えるほど全くナンセンスな話だ。

ラスエボで無印の子どものパートナーデジモンが消えたが、それならアグガブと同じ戦歴のテイルモンとパタモンも消えてるはず。ザビギがラスエボの続編と言うなら。なのにザビギで二体が健在なのはおかしい。そして、ラスエボの02組の扱いは軽くてひどかったが、ザビギでは無印組はほとんど登場しない有様。冒頭のテレビ中継の光子郎と太一のみ。あとは光が丘での幼い太一(「どっかで見たようなカニ頭だなあ」、あれを形容するにそんな表現があったか、笑)とヒカリ。02組ですら主役ではなく、メインはルイとウッコモンの物語であった。02のお話がもっと見たかった。

tri.ではマーシフルモード、ラスエボでもアグガブの新しい進化が見られただけにファンの期待があったのに、本作では新しい進化は提示されなかった。私はバトル自体に興味はない派なのでそんなに関心はないのだが、まあ残念ではあった、苦笑。そう聞くと、インぺリアルドラモンの変則的な進化とか、シャッコウモンの究極体とか見たかったかも。戦う相手が悪役のボスキャラでないことも、戦闘の盛り上がりに欠けた一因ではなかったか。進化シーンはきれいでカッコよく、パイルドラモンの連射、キター!そしてインぺ。これぞ02!といった感じ。

不満を一通り述べたものの、ルイがウッコモンとの対話の必然性に迫られ、大輔たちが送り出し、二人が真摯に対話して、倒した後の再生に希望を託す、その結果デジタマが再生し動き出すラストというストーリーには一定の感動を覚えた(と表現するからには、少し冷めてはいる;)。パートナー同士の対話、コミュニケーションが大切というコンセプトは理解した。友だちとは、幸せとは何なのか考えさせられた。デジヴァイスの消滅は、新しい絆の始まり。ルイが仲間となっての雪合戦も物語のシメに相応しい良い演出だった。虐待されていた日の雪との対比、非言語的コミュニケーション、無邪気な遊びによる癒し。しかし若さゆえか、顔面に直撃とは激しいこと;
足かせが外れての第一歩云々と、02最終話への否定的コメントともとれるエピローグは必要だったのだろうか。何となく落ち着かない。

<大和田ルイ:緒方恵美さん>Breathe Arts代表の、声優・女優・歌手。音楽一家に育ったという。デジモン初出演の大御所。エヴァの碇シンジ、幽遊白書の蔵馬などが代表作。インボイス制度への意見表明など、業界での発言力もある恐れ多い方。
 4才なりたてから8才、9才、20才の大人まで演じ分けたその演技は見事と言うほかない。それすら彼女の演技全体のふり幅の一部に過ぎないと聞くから、大したものだ。

<ウッコモン:釘宮理恵さん>アイムエンタープライズ所属の声優、歌手。デビュー当初から声質を活かした、幼年から十代の少女役を主に演じる。釘宮病と呼ばれるコアなファンがおり、「ツンデレの女王」との異名を持つという。ハガレンのアルフォンス、銀魂の神楽、セイバーズのイクトなど演じている。
かわいらしくも、ルイへの献身を極めた狂気的なやさしさを演じてくれた。

ED:「Various Colors」 作詞:大道航 作曲・編曲:4D2Y
AiMさんが当初戸惑った通り、ルイのウッコモンに関する内容の歌詞である。明るく希望のある曲調ではあるが、私は上記のような本編の感想だからして、過酷だったりグロテスクだったりのエピソードが思い出されて、聴いてて悲しく苦しくなってしまう。
冷たく厳しい冬の雪の白と、カラフルな豊かな世界の対比。
あと、AiMさんが歌ったこと自体には満足しているが、緒方さん釘宮さんによる、ルイとウッコモンのキャラソンの発売はないということ確定なのは残念。ラスエボの付近で02組が新たなキャラソンを出したのは、ラスエボでの活躍のなさへの補完の意味と、ザビギへの布石であったようにも受け取れた。

制作:高木勝裕、吉村文雄 企画:森下孝三 原案:本郷あきよし 脚本:大和屋暁 キャラクターデザイン:中鶴勝祥 デジモンキャラクターデザイン:渡辺けんじ スーパーバイザー:関弘美 アニメ―ションキャラクターデザイン:立川聖治、熊谷哲矢 絵コンテ・演出:笹原嘉文、上田慎一郎 総作画監督:立川聖治、西村理恵 作画監督:稲留和美、西村理恵、つなきあき、赤堀重雄、西野理恵、関崎高明、立川聖治 色彩設計:合田沙織 美術設定:伊良波理沙 美術監督:清木亜夕 CGチーフディレクター:伊藤仁美 撮影監督:桑原真也 音響監督:飯田里樹 編集:坪根健太郎 音楽:富貴晴美 音楽プロデューサー:松井伸太郎、藤田雅章 音楽協力:有澤孝紀 エグゼクティブプロデューサー:篠原智士、鈴木篤志 シニアプロデューサー:井上貴博、柴田宏明 企画プロデュース:野口光一 アソシエイトプロデューサー:木下陽介 プロデューサー:下村英里 制作統括:山口總 アニメ―ションプロデューサー:漆山淳 制作担当:須之内亮 アニメーション制作:ゆめ太カンパニー 制作:東映アニメ―ション 副監督:笹原嘉文 監督:田口智久(敬意から、クレジットからたくさんの職種を挙げましたが、具体的にどんなお仕事で参加されてるのか、全部は分からずすみません) 

2023年10月27日公開

2025.3.2 記


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