デジモンアドベンチャー第6話「パルモン 怒りの進化!」感想
脚本:浦沢義雄 演出:今沢哲男 作画監督:八島善孝(原画も八島さん一人。東映アニメの中でもすごい人だと聞いたことがある) 美術:清水哲弘
美少女キャラのミミはキッズアニメなら本当はヒロインのはず。汚物系デジモンに好かれるというパラドックスはキャラの中で一番強烈なインパクトがある。確信犯的に、ギャグ系の浦沢さん(と言えば私はまず「忍たま乱太郎」が浮かぶ)にこの回を振ったらしい。
それが見事にハマっている。タイトルコールはパルモン。
じめじめした地下水道を、歌しりとりしながら進む一行。「♪遠いふるさと思い出す」「♪酸っぱいな~酸っぱいな~は成功のもとじゃないない」「♪いけない人~」「♪今は何も」とは、アドリブだろうか元ネタはあるのか。空は「洗濯したい」としんみり。太一は風呂でのんびり(風呂でもゴーグルは手放さない様子)、タケルはテレビゲーム、ヤマトは焼肉腹いっぱい(これ、ラスエボにつながります?)、丈は勉強、ミミは冷たいコーラが飲みたい、光子郎はネットでメール(人づきあいは苦手なのに、ネットを介する交流が活発なのは彼らしい)、と。普通の小学生が突然異世界に来たのだから、どれも無理はない切実な願いだ。
●ミミ:お父さんがカラオケしていたという演歌を披露する。設定によると父は「ロック系ミュージックのフリーのミキサー」だという、演歌は意外。ちなみに演歌と言えば、キャラソンを出しすぎてネタ切れなのかノリなのかテイマーズでヒロカズとケンタが演歌を歌っている。
ヌメモンに好かれ助けられ、捨て身のヌメモンに心動かされたりもするが、ナンパされるとハッキリお断りする割り切りの良さ。
思わずうれしい自販機のシーンで流れるのは名曲「ミミのテーマ」。一学年しか違わない空に「しょうがないわよ、まだ‘子ども’なんだもの」と言われる始末、このギャップ。
おもちゃ箱に閉じこめられたアグモンたちに、子どもたちを助けてと言われるが「私に言われても…」と頼りない。パルモンの進化前だし仕方ないか。
●パルモン:もんざえモンがどういうデジモンかある程度知っていたのは意外。「汚くて根性もないヌメモンたちがミミを必死に守ってる」その姿に発奮し、トゲモンに進化する。花ととげのあるサボテン型で、手にはボクシンググローブを付けている。ミミのパートナーなのにキャラデザの可愛らしさがあんまりなくなってしまい残念。実際、のちにミミに言われ本人もビジュアルに劣等感を抱くことになる。肉弾戦の末チクチクバンバンで、もんざえモンの背中のファスナーが開き黒い歯車が出された。
完全体相手に、成熟期が一体で大健闘。
●空:思春期の女子でなくとも、涙が出るほど洗濯したいよねえ。青空に白いシャツ、洗濯シーンは「空のテーマ」が流れる、音楽集の中でもとてもいい曲の一つ。
●丈:やりたいことは「勉強。宿題山ほどやりたい」と。これは私は丈らしくないと思う。丈が勉強するのは、光子郎のように自分が知りたいことを好きで突き詰めていくのではなく、あくまで親の期待に答えるため受験という手段を選んでいるだけであって、光子郎のような根っからの勉強好きとは違うと思う。もしこう答えるのだとしたら、宿題が好きなのではなくそれをやることで親を喜ばせ自分も安心するからだろう。そう思うのは、私自身が光子郎的な勉強好きで受験には無関心だったからだ。好きなことは年齢に見合わない本や専門書も読むが、一流校に入ることにはまったく関心も情報もなかったし、受験が終わっても知りたいことについての勉強はやめなかった。なので丈のこの発言には私は違和感を覚える。
●ヌメモン:成熟期。声は上田祐司・現うえだゆうじさん<ポマランチ所属、ポケモンのタケシ、おじゃる丸のキスケなどメインキャラを数々されている方>。「知性も教養もない(ゴマモン、教養なんて言葉知ってるんだ!)」「弱いけど汚い」「デジモン界の嫌われ者」と、デジモンたちにえらい言われよう。ピンクのう○ちは、中鶴さんの師匠・鳥山明さんの「Dr.スランプ」からの引用と思われる。弱いけど汚いし多いししつこいし確かに恐ろしい敵だ。弱いのに、ミミをピンチから救う。そこに下心は見えず純粋なように思う。
●もんざえモン:完全体。私の知る限り、ひらがな表記のデジモンは彼とワルもんざえモンだけだ。声は高橋広樹さん<マック・ミック所属、ワルもんざえモンと大輔の父も高橋さん。野太い声でインプモンとはだいぶ趣きが違う>。おもちゃを愛しおもちゃに愛される、まるで遊園地のようなカラフルなおもちゃの町の町長、パルモンは良いデジモンだというが。黒い歯車のせいで目が赤く(やっぱり黒い歯車は赤い目だよね)、成長期のデジモンたちの攻撃など受け付けない。青いラブリーアタックで子どもたちの感情を無くしておもちゃに遊ばれるようにしてしまう。おもちゃは飽きると壊されたり捨てられたり、それが許せなかったと言う(でも、人間がいない町で誰がおもちゃと遊んでくれるんだろう。デジモン?)。黒い歯車のせいで思い上がっていたのを正気に戻してくれたお礼に、ピンク色の本当のラブリーアタックでみんなをハッピーラブリーに。敵さえも幸せにするという不思議な技だ。
<前田愛さん>青二プロ所属、夫は同じく声優の置鮎龍太郎さん。声優は前田愛名義、歌手はAiM名義、作詞作曲はai名義で活躍。女優の前田愛さんと同姓同名。「Yes!プリキュア5」の水無月かれん・キュアアクア役が有名。無印で太刀川ミミ、ピョコモンを演じた。
<溝脇しほみさん>RME所属。山田きのこに改名。「金色のガッシュベル!!」のナオミ役が有名。無印でパルモンを演じた。山田さんとか竹内順子さんとか浦和めぐみさんのアルマジモンとか、私は独特なエグ味のある声質の声優さんが割と好き。
次回予告:年長者の責任を重く受け止めている丈。ムゲンマウンテンでのピンチに、ゴマモンが成熟期進化!
(2023/11/ 23 記 11/26更新)