第53話「最後の暗黒デジモン」
脚本:吉村元希 演出:芝田浩樹 作監:海老沢幸男
ピエモンを倒した子供たちだが、ゲンナイから「本当の敵は存在そのものが世界をゆがませる生き物」というメールを受ける。
スパイラルマウンテンが崩壊し、子供たちは暗闇に落ちていく。ある時点で落ちるのが止まり、ゲンナイからメールが来る。ゲンナイは、この闇に終わりはないだろう、すべての悪の根源がまだ倒せていないからだ、ダイノ古代境の碑文によると、太古の昔火の壁の向こうから、存在だけで時空をゆがませる生き物は、デジモンたちでは倒せず、現実世界から来た選ばれし子供たちによって倒された(この時子供は5人、デジモンはアグモン・パタモン・ピヨモン・テントモン・ガブモンだったようだ)。大きな闇は再び現れるだろうことも書いてある。今太一たちがいる暗闇が真の敵ともいえるが、実体はどこかにあるはずだ、と。そこでメールは終わる。昔の選ばれし子供が倒せたなら、今度も何とかなるはずだ。
あちこちからうめき声が聞こえ、青い物体が現われる。不気味な青い物体は触手を出し、黒いマントを着た仮面の男が現われる。火の壁の向こうから来たアポカリモン(大塚周夫さん)だ。デジモンですらないかもしれないという。醜いと思うか、とアポカリモンは問う。
現実世界にいる家族にも、アポカリモンと子供たちが見える。
「黙れ! 仕方がない? その一言ですべてをすませる気か!
貴様は我々が生き残る資格のない者だと決めつけるのか?そう、我々はデジモンの進化の過程で消えていった種の、その悲しい、恨めしい無念の思いの蓄積だ!
選ばれし子供たちよ。そしてそのデジモンたちよ。我々はお前たちに出会えるのを楽しみにしていたのだ。
いいか。我々が冷たく悲しく、闇から闇へと葬られていくとき、その片方で、光の中で楽しく笑いながら時を過ごしていくお前たちがいる。なぜだ!我々が何をしたと言うのだ! なぜお前たちが笑い、我々が泣かなければならないのだ!
我々にだって涙もあれば、感情もあるのに・・・何の権利があって、我々の命はこの世界から葬りさられていかなければならない!
生きたかった! 生き残って友情を、正義を、愛を語り・・・この体を世界のために役立てたかったのだ。
我々は、この世界にとって必要がないと言うのか!? 無意味だというのか!
この世界は我々が支配する。我々の場所を確立するのだ・・邪魔する者にはすべて消えてもらうフフハハハハハ・・光あるところに呪いあれ」私はアポカリモンの話が大好きだ。光がある以上闇は必然で、彼らの悲しみ、恨みは当然だし、共感でき、本当に無念だったろうと思う。だが、小説版では「時間稼ぎのため、進化の過程で消えていったデジモンたちに恨み言を言わせているだけ」と片付けられていて、納得がいかない。我々の居場所を確立する、それが彼の戦う目的だ。
アポカリモンは、自己再生能力があるし、すべてのデジモンの技を使えるようだ。エンジェウーモンがアルティメットストリーム、リリモンがブラッディストリーム、ガルダモンがムゲンキャノンを受ける。デジモンは触手に捕まれ(デス・エボリューション)成長期に退化させられる。もう一度進化しようとすると、デスクロウで子供たちは紋章を引きちぎられ破壊されてしまう。アポカリモンは、進化できなかった絶望を思い知れという。これじゃ進化して戦えない。
「ナーミタデ-ハチターエーマーオ」(お前たちはデータみな)のアポカリモンの呪文で、子供たちはデータに分解され真っ白なデータの世界にいってしまう。希望を失いかけるが、デジモンとの出会い、数々の冒険を振り返ると、有意義な経験ばかり。冒険に始めからこうしたらいいなんてわからなかったけどあきらめないでみんなで協力してここまで来られた。パートナーや仲間と育んだ絆。一言一言が感慨深い。
丈「おかげで、受験勉強してるだけだったら気がつかないことをたくさん経験したよ」
ミミ「みんなと出会えて、あたし、強くなったと思う」
タケル「僕もね、パタモンに会ってから戦うことも大切なんだって、わかったような気がするよ」
ピヨモン「みんなもそんな空のこと、いつも大好きだったよ」
テントモン「光子郎はんがいてくれはったおかげで、いろいろ勉強できましたわ。」
ヤマト「何も言わなくていい。わかってるよ」
アグモン「僕と太一がいっしょにいたら、無敵だろ!」
テイルモン「ヒカリに出会うため、ヒカリを守るため、ずっとその日が来るのを待っていたのだから」
ヒカリ「もしも、テイルモンと出会わなかったら」
丈「デジモンワールドに来なかったら」
ミミ「みんなと一緒に、旅をしなかったら」
光子郎「僕たちは、いまの僕たちじゃなかった」
ヤマト「そうだ、いつだってデジモンがいてくれたから」
タケル「仲間がいてくれたから」
空「助け合う大切さを知ったから」
太一「俺たちは、自分らしくいられたんだ!」
家族や、世界中の人々が子供たちを見守る。
心の中の光を絶やさない!その時、子供たちの胸に光がともる、紋章とは彼らの心の特性そのものだったのだ。一人の紋章はみんなのために、みんなの紋章は一人のために。デジモンたちは進化し、子供たちはデータの世界からアポカリモンの前に戻ってくる。太一「お前の思い通りにはならないぞ」。みんな戦いの強い意志を目に秘めて。