デジモンアドベンチャー第54話感想

デジモンアドベンチャー第54話「新たな世界」感想

脚本:まさきひろ 演出:今村隆寛 作画監督:八島善孝 美術:飯島由樹子

前説は省かれ、エンジェウーモンの進化シーンで開幕。トリのウォーグレイモンとメタルガルルモンの進化シーンは同時進行なのだがこれがまたかっこいい!データだけの世界から戻って勢ぞろい「お前なんかの思い通りにはならないぞ!」。もう勝つ気しかないもんね。

丈とミミが触手を、タケルとヒカリがその援護、太一とヤマトが本体を攻撃、空と光子郎がその援護と、役割分担はばっちり。メタルガルルモンのコキュートスブレスとウォーグレイモンのガイアフォースが、とどめを刺す。しかしアポカリモンは、世界を巻き添えにしてくれる、とグランデス・ビックバンを放ち自滅する。さすが怨念の塊、散り際も醜くも哀しい。「終わらせない」「明日があるから」と、子どもたちのデジヴァイスから金の光線が伸び、立方体を形作り爆発を封じ込めて消えた。力を合わせて、やっと、やっと勝ったんだ。世界は救われた。

オーガモン・アンドロモン・エレキモンが来る。光子郎が珍しくも赤面して照れている。現実世界にいたデジモンは粒子となって消え(ここはEDのビル群と同じ背景)、朝日が昇る。家族も一安心。

タイトルコールとシルエットは8人と8体。モザイクのデータが埋められて一行のシルエットに。背景の青空と白い雲が、取り戻した平和を象徴している。

メカノリモンに乗ったゲンナイ・ケンタルモンもやってきた。予言の締めくくりは「最初に生き返ったのは島だった そして島が新しい空と海と陸をつくった」。ファイル島が見え、行くとはじまりの街が元に戻っていた!数えきれないほどのデジタマ(それだけ犠牲も大きかったということか)が天から降り注ぎ、デジモンワールドの新たなる天地創造は、始まっている。静かな安らぎと希望に満ちた光景。

アンドロモンが記念写真を撮ってくれると言う、ナイス提案。整列すると、シャッターを押した瞬間、真ん中にいたヒカリの抱いていたデジタマが孵る。命の再生が実感された。写真はみんなにプリントしてくれるのかな?オーガモンは股旅とばかりカッコつけて去っていく。時間がかかるかもしれないが、レオモンたちもきっと再生するだろう。

子どもたちは、初めてデジモンワールドで一夜を過ごした、懐かしい路面電車のある湖まで来る。空気を読めない丈先輩、笑。ゴマモンを抱きながら、ゴマモンにツッコまれるのが可笑しい。夏休みはまだある、デジモンワールドの時間に換算すると、丈先輩得意の暗算(この設定は初耳!)で一日を一分と考えて4万320日、ざっと110年だと。帰る前にもう一度冒険しに行くことで話がまとまる。いや、あんだけ苦労した冒険なのにまたって…それが小学生のバイタリティなの?が、ゲンナイさんてば「悪い話」をもったいつけて今頃言うなんて、ねえ。そのため、現実世界へのゲートである日食の陰になっている部分が閉じるまであと2時間しかない。アポカリモンのせいでデジモンワールドと現実世界の時間が同調した。もしデジタルワールドに残れば異物としてデータを消去される可能性があるという。悲しいかな別れの時が迫っていた。

笑顔と涙の別れの挨拶が一組づつ丁寧に描かれてうれしい。甘えん坊だったピヨモンはすっかりしっかり者になった。ピヨモンのおかげで空は自分が愛情に恵まれていたことに気付き、いつもみんなへの愛情を絶やさなかった。
丈「握手しよう」ゴマモン「ん?いいぜ」丈「あ」ゴマ「何?」丈「それ、やっぱり手だったんだ」ゴマモン「む」(笑、カワイイ)。生真面目で融通のきかない丈と自由でお気楽だが誰よりも丈を信頼しいい励まし方するゴマモン、でこぼこな名コンビだったな。自分の道を信じてブレることなく、仲間に心を砕き、ずいぶん成長した。自分は性格が丈先輩とそっくりなので、丈先輩の成長ぶりとゴマモンのパートナーぶりには何度も救われた。毎朝、「今日も人様と自分に誠実でありますように」と祈るのを日課にしている。ゴマ丈、大好きだ。
路面電車のワイパーの機械的な動きは、光子郎のパソコンおたくで不器用なところを象徴するようだ。常に冷静な作戦参謀。柔軟性のある理解者テントモンに助けられて、光子郎はパソコンの腕を生かしながら人付き合いを学んだ。いまだ他人行儀でも、いつしか。抱き合う時点でもう十分だ。
タケルは第13話で闇がもたらすものと希望を信じ続けることを知った。進化は遅いがエンジェモンもホーリーエンジェモンも大活躍だった。号泣するこのコンビ、きゃわゆいわ~!
一番心がさ迷ったヤマトだけど、第51話のガブモンとの対話が自分探しの答えをくれた。一人じゃないってガブモンが教えてくれ、もう友情に迷うことはない。2人の間に言葉はいらない。ああ、ヤマト、心配してたから、よかったよ。
似た者同士のアグモンがいて、太一は天性のリーダーシップと勇気に深みを加えさらに磨きがかかっただろう。
ヒカリはホイッスルを贈り「またね」と言う。予知能力もあり?その時、冒険が続くことをテイルモンはまだ知らない。
パルモンは、別れが辛くて隠れてしまう。時間切れで子どもたちは電車に乗り込み、テイルモンの笛を合図に出発した。路面電車は都営荒川線がモチーフだが、うちは荒川線が最寄りの交通機関なのでとても親しみを感じる。パルモンがやっと出てきてくれ、ミミは別れを告げることができた。ミミの帽子は宙に舞い、草原の踏切を飛んでゆく。流れるButter-Fly。残された帽子は、子どもらがデジモンワールドにいた一つの証。

歌と音楽集に未収録の曲が複数、最終話を彩ったことも私は忘れない。

「デジモンワールドへのゲートはきっとまた開かれる。デジモンたちのことを忘れていなければ、それを望んだとき、心の中に。いや。ひょっとすると…」ここでデジヴァイスの音!冒険は終わりではない。

選ばれし子どもによる世界救済譚。とうとう来てしまった終わり。何度か湧く涙。まるで自分もひと夏の冒険をした一員だったかのような感覚。自分にもきっとパートナーのデジモンがいていつか必ず会える気がした。ハイ、ひょっとしますとも!わたしゃ信じてやみません!ファンの中には「選ばれなかった」と自称する人がいますが、そんなの聞くと悲しくなっちゃう。必ずパートナーと出会えるよ。よい物語を、ありがとう。逝去や引退された声優さんやスタッフさんがいるのは惜しいが、ここでまた何度でも会えるから。

2025.8.4、 記

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