デジモンアドベンチャー第8話感想

デジモンアドベンチャー第8話「闇の使者 デビモン!」感想

脚本:西園悟 演出:角銅博之 作画監督:出口としお 美術:清水哲弘

タイトルコールはデビモン。 ファイル島が絶海の孤島だと子どもたちが知ったのがデジタルワールドに来て5日目。絶望と疲労、そこに現れたデビモンの罠(切望している食事と風呂と寝床)にまんまとはまってしまう。汚い手だ。中ボス・デビモンの登場とともに黒い歯車の正体が明かされファイル島編の大きな転機となる回。「選ばれし子どもたち」という言葉は、ここで初めて出た。
シリアスな回でもあるのに、随所にユーモアも効いており(太一の地図、アグモンのおなら、テントモンの電気風呂発言等々)、盛りだくさんな回。特に皆が生き生きとしたごちそうのシーンとお風呂のシーンが心に残る。肉の塊、ローストチキン、ハム、ソーセージ、チーズ、サンドイッチ、ピラフ、パン、果物・・・おいしそうで見てて楽しい。風呂後や肌着姿の子どもたちの設定も個性があり興味深い。どのキャラのファンにとってもサービスシーン。設定資料集にあるように、女子のお胸がまだ平らなのも物語上案外大切だ。第二次性徴が現われてしまってからでは成立しない冒険と思う。太一・ヤマト・タケルはブリーフ派、光子郎・丈はトランクス派。白無垢ではないブリーフなんて、当時としてもなかなかにおしゃれさんです太一(というか裕子ママ)。2023年現在は男性の下着の選択肢はもっと広がりましたけども。女子の下着もらしくてカワイイ。夢が一瞬にして消え、ファイル島で最悪最強のデビモンに翻弄される子どもたち。

●太一:リーダー気質でまたも状況を俯瞰しようとの試みであろうファイル島の地図を描くが大不評、図工が不得意と判明。僻地で電源が取れないという設定で、まだ光子郎のあの図面は出てこない。風呂では頭ぼさぼさ、飛び込んで喜ぶ小5の無邪気さ。小5なので夜のトイレは一人で行けます。デビモンに「選ばれし子ども」と呼ばれる、一体どういう事?子どもたちの中で唯一、海の向こうにこの島以外の世界があると知らされ驚く。最後にレオモンを呼ぶ絶叫が印象的。

●丈:孤島と知って「どうすればいいんだー!」と絶叫したり、洋館(ナレーションでは「コテージ」と表現している。正しい意味は「山小屋または山小屋のような建物」。日本のコテージの特徴は①主に一戸建てを一件丸ごと貸切る宿泊施設のこと②貸し別荘に近い位置づけ③シャワーやトイレ、ベッド、冷暖房が備わる場合が多い)を見つけ、この期に及んでまだ「人間が住んでるに違いない」と言っているところは現実逃避だろうが、反面レオモンもオーガモンも助からないと判断して「ついてる」と喜んだり、洋館を寝場所に決めたり、誰より先にごちそうに食らいついたり、責任感のストレスからか開き直ったようなところも見せる。温泉地の卵の時とは大違い、持ち前の慎重さはどこへやら、場慣れしてきた感がある。だがデビモンの罠である天使の絵にまんまと騙されてしまう張本人;「こんな美味い料理、生まれて初めてだ」って言ってるけど、あれれ「未知へのアーマー進化」で時価の特上寿司食べてるよね城戸家・・・。食べ盛りの男児3人抱えて過去には団地住まい、昔は食卓が質素だったのかな??丈先輩の全裸《*^^*》・・・照。最年長だもの、前を隠したくもなるよね。この菊池さんの演技がまたほんとにはずかしそうで可笑しくて上手い!寝室では「(林間学校)‘みたい’じゃないよ、そもそも僕たちはサマーキャンプに来てたんだ」とまたも地雷を踏んでしまう地雷キャラ。こう見ていくと、この回ずいぶん出番があるのが丈先輩ファンとしてうれしい。

●ヤマト:常にタケルの心配をしており、また一行の状況を冷静に把握しようとしている。お年頃な丈に、容赦ない、笑。2023年現在、第二次性徴は幾つ頃からなんだろう。ウィキったら、4月生まれの早熟女児は小2前半、3月生まれの奥手男児は中1終わりとあった。放映当時よりは早まっているようだ。該当する学会ではもっと細かく病的な早熟・遅熟を定義している。

●タケル:天使の絵に見入り、パタモンに「天使って何?」と聞かれるのがエンジェモン登場を暗喩している。が、タケルの年の語彙力では説明が困難なのだろう。パタモンが最後までこの絵に見入っていたのも意味深。おそらくはピンと直感し魅かれるものがあったのであろう。

●ゴマモン:女風呂にしれっと入って大顰蹙、笑。声は女声だけども。デジモンに性別はないはずだけど男湯・女湯一応別れるんだね、固いことは言うまい。パルモンに放り出され、丈先輩と激突。ゴマ丈ファンにはおいしいシーン。

●レオモン:誇り高き正義の勇者である成熟期。武器の獅子王丸は、自身の意志を持つ妖刀だという。ムゲンマウンテンの黒い歯車を憂慮し動き出すが、デビモンに操られてしまい子どもたちの脅威に。デビモン・オーガモン・レオモン三者を敵に回したら子どもたちに勝ち目はない、とハラハラしちゃう。しかし、太一のデジヴァイスに触れ「邪悪消滅」元に戻った。数少ない味方であり、何のことかわからぬ太一に選ばれし子と告げ、太一をかばって逃がす「君たちはこの世界にもたらされた唯一の希望なのだ、生き延びてくれ!」。ええっそうなの?!!何やらこの先の冒険の深刻さを暗示している。めちゃシリアスじゃん;子どもたちが異世界に呼ばれた事情を知っているのはファイル島でレオモンとデビモンだけなのか?そして、ファイル島以外に広がる世界とは?つまりは冒険はまだ始まったばかり!

●オーガモン:野性的な悪ガキな成熟期だが、不思議とどこか憎めない。「デジモンハンター」であり、悪玉にしてレオモンの最大の好敵手。後に味方となるだけに、この回だけでも存在感が存分にあるキャラ。

●デビモン:ファイル島の支配を目論む親玉。塩沢さんはCD「デジモンアドベンチャー 好敵手(テキ)キャラソングファイル」の収録の後すぐ亡くなられたと聞いている。暗く静かで上品なお声が、デビモンにぴったりだった。デビル(悪魔)よろしく全身黒尽くめに角と牙と破れた翼、赤い目の恐ろしくもある種特段の風格ある成熟期。最初は自分の手を汚さず、オーガモンとレオモンを利用して自分は俯瞰の立場なのがまた憎らしい。残忍冷徹にして狡猾、技も悔しいが同じ成熟期のレオモンより一枚上手。ファイル島を黒い歯車で埋め尽くした上、さらなる世界征服を狙い、子どもたちを離散せしめる。

<平田広明さん>ひらたプロダクションジャパンを立ち上げ所属。洋画の吹き替え多数、アニメではワンピのサンジ役、最遊記の沙悟浄役が有名。無印でナレーション、レオモン、成人のゲンナイ、石田裕明を、テイマーズでもレオモンを、ゴスゲでシャウジンモンを演じた。私にしたらデジモンの良心たる位置づけで、tri.での黒ゲンナイを今も認められずにいる。

<オーガモン:江川央生(ひさお)さん>俳優、声優、ナレーターにして青二プロ所属。がっちりした男臭いキャラで知られる。無印ではオーガモン、ムゲンドラモンを、ゴスゲでメタルファントモン、スカルグレイモンを演じた。

<デビモン:塩沢兼人(しおざわかねと)さん>声優にして俳優、青二プロに所属。貴族的な声質で美形キャラで知られるが、悪役・三枚目も演じてきた。不慮の転落事故で脳挫傷のため2000年5月10日、46歳で急逝し同業者らに悼まれた。歌に苦手意識を持っていたそうだが、なかなかどうして敵キャラソングCDのデビモンはさすが。

次回予告:バラバラにされたファイル島と子どもたちのその後やいかに。太一とヤマトに襲いかかる氷系のデジモン!

(2023/11/29 記)

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