デジモンアドベンチャー02第9話感想

デジモンアドベンチャー02第9話「イービルリング魔力の暴走」感想

脚本:吉村元希 演出:吉沢孝男 作画監督:信実節子 美術:清水哲弘

ある日曜日、サッカーの試合で賢に一矢報いた大輔。それが賢のプライドを深く傷つけた。

タイトルコールは大輔、シルエットはスカルグレイモン。背景はまがまがしい赤と黄色のまだら。

カイザーはあの天才少年・一条寺賢であった!これからは本気で戦わせてもらうと言い捨て、大輔たちの前から去った。そしてもう、現実席を捨て、DWの帝王としてのみ生きることを選んだ。

●賢:親も、世間の大人も子どもも、賢の天才少年の側面だけをもてはやし利用し、その実、賢を対等な人間として尊重してはくれなかった。その深い孤独と絶望。それで賢は彼らを人間以下の存在「虫けら」と罵倒し、世間で暮らすことを拒絶しDWで帝王としてデジモンたちを支配し虐げることを決意した。自宅さえも本音を言える居場所ではなく、屋上で「虫けらが!」と叫ぶ賢のとてつもない孤独と疎外感と苦悩。唯一賢をひとりの人格として認めてくれた大輔にも、存大さにかまけてプライドが傷つき仕返ししか思いつかなかったのは愚かで哀しい。

カイザーは、グレイモンを捕えイービルリングをはめる。成熟期(カイザー、成熟体って言ってますけど)から闇のデジヴァイスでコントロールすれば、完全体のメタルグレイモンを操れると考えたのだ。周囲への不信感や大輔に負けた傷が、狂気を倍加させていく。しかしグレイモンは、闇の力で、肉体は滅んでも戦いの執念のみで動く完全体・スカルグレイモンに進化してしまう。カイザーのしもべどころか、縄を引きちぎり暴走する、想定外。

●ワームモン:蹴られるとわかっていてカイザーの足にまとわりつく。これって暴力振るわれることに快感を覚えるドMでは笑。「これからはずっと一緒にいられるんだよね…うれしい」蹴られて泣くほど痛いのにこの発言、よほどの愛というか執着というか。足の動きがムカデみたいでちょっとキモ…

●賢の母:今日も賢の好物のハンバーグを提供。穏やかで優しいが、賢の行動に一喜一憂し、愛情というよりご機嫌取りに必死に見える。担任教師のお手上げという発言にただうろたえるばかりで、母としての肝が据わっていない。そんな親を軽蔑し、信頼できない賢。

●賢の父:天才という評判に浮ついて、インタビューの上っ面だけ見て、賢をほめる無神経さ。賢が部屋にこもると、担任教師を「無責任」だと責任を転嫁する。サッカーの試合以来、まる二日も部屋から出てこないのに、新聞を読みながらと余裕をかましてるのが憎たらしい。ただ、ドアをけ破る決断は父として妥当(ちなみにマンションは分譲?賃貸?ドアの修理はどうしたのだろう)。部屋にもベランダにも賢がいない。そしてパソコンの画面には

モウ コノセカイニヨウハナイ。  サヨウナラ   ムシケラドモヨ

というメッセージが残されていた。動揺する父、泣き出す母。大輔たちがマンションに着くと、賢が行方不明でパトカーが出る騒ぎになっていた。つまりは親として手を尽くすことよりも「行方不明事件」として警察を頼ったという情けなさ。賢が可哀想すぎる。

●インタビュアー:天才少年を散々持ち上げる発言をして、カメラがオフになった途端、賢を子ども扱い。賢は触れられた左肩を汚そうに振り払う。

●先生:CVは平田弘明さん。学校の評判のためだけに、賢をインタビューに呼んだ。そればかりか、悪びれずに娘(由利子という)の家庭教師を打診し賢の才能を利用しようとした。悲しいかな、指導者たる学校教師も賢にとっては味方ではなかった。不快感を隠して、礼儀正しくお断りし、娘へのサインだけ受ける。時刻は4時59分。大人なんて所詮自分勝手だと、賢は舌打ちする

●大輔:光子郎にデジモンカイザーが一乗寺賢だと報告する。現実世界に帰ってこないつもりなのか。いずれにせよ手強くなるだろう。時刻は4時59分、遅いけれどすぐ帰るよう光子郎が指示し、とにかくデジタルワールドの様子を見てこようと、子どもたちは出発する「一乗寺賢、どこだ!」と大輔(あくまでカイザーと呼ばないのが大変印象的)。

●光子郎:カイザーがこんな身近にいたことに驚く。賢と直接コンタクトを取ろうと提案する。大胆だが一番近道と思える作戦、さすが参謀。芯は善人であろうという賢の持つ人間性を信頼しての判断、伊達に年と経験を重ねた先輩ではないのがすばらしい。雑誌の写真から賢の自宅を秒で特定するパソコンの腕は見事。

アグモンのエリアが黒くなったことに気付いた光子郎は、伊織からのメールを受信する。 「太一さんのアグモンが、デジモンカイザーに囚われ、アグモンはスカルグレイモンに暗黒進化しました。急いで太一さんに連絡して下さい。お願いします。」 あのスカルグレイモンまで生み出して、カイザーは狂気の沙汰に見える「デ ジモンカイザーはデジタルワールドを崩壊させるつもりなのか?!」…何てこと、次ぐ言葉を失う光子郎。どうする太一!

●京:店から差し入れを持ってやってきた。チョコ、チーズ入りかまぼこ、ドリンクゼリー、アイス、デジモンたちは現実世界の味にすっかり魅了されている。ポロモンだけは、伊織の母のかんぴょう巻が恋しい、でも食べちゃうv(稲荷ずしを)、和食好き。京は、賢の載っている雑誌も持ってきた。「城南大学情報工学部の祥月教授と共に研究を重ねていく一乗寺賢君(小学五年生)」という記事だ。成績優秀、スポーツ万能、しかも美形の優しそうな少年があんなひどいことをするのか。にわかに信じがたい子どもたち。京なんかいまだにファンのようで、こういう子が本当に選ばれし子どもだと言っちゃってるし。雑誌の記事を書き起こしておきます。

「東京都港区にある、自宅の彼の部屋には、最新式のパソコンが設置されていて、とても小学生が使いこなすものには思えないものまで揃っている。 そのすべてを、彼は完璧に使いこなしている。その姿は、まさに神童としかいいようのない神々しさをはなっており、彼が天才の名にふさわしい少年であることがわかる。また、今回、彼の作成したパソコンソフトは、今後、これまでの基本ソフトに対して、大革命を起こす可能性があると祥月教授は考えており、業界各社も目がはなせない存在といえる。」

京の出動コール「デジタルゲートオープン!選ばれし子どもたち出動!」は今話が初めてか?

●タケル:「見た目と中身がいっしょとは限らないけどね」って、君が言うか(第19話)。スカルグレイモン登場に「逃げるんだ、まともに戦って勝てる相手じゃない」顔が引きつってます、無印第16話のトラウマ。

●スカルグレイモン:カイザーに従うはずもなく暴走し、フレイドラモンたちを退化させ、グラウンド・ゼロの閃光でダークタワーまで破壊してしまう。カイザーも手に負えないひどい展開。カイザーが止めようとして投入したダークティラノモン(成熟期)たちを襲った末に、退化した太一のアグモン(例によってヒカリが個体をそう認識)は、ヒカリの叫びもむなしく再びカイザーに捕われ連れ去られる。まだ悪事を諦めていないカイザー。子どもらは様子を見てすぐ帰るどころじゃなくなってしまった。

次回予告:カイザーは太一のアグモンをとらえ、イービルリングより強力なイービルスパイラルを開発。もはや太一の声が届かぬメタルグレイモンと、どう戦えば…。次回のサブタイトルは「敵はメタルグレイモン!」。

2025.10.14. 記

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